事業構想サミット2026 組織・地域・個人を進化させる「実践」への転換
2026年、日本経済は重大な転換点を迎えている。市場制度改革やテクノロジーの進化に伴い、企業には「実験」のフェーズを終え、「実効性のある実践」への完全移行が求められている。この潮流を捉え、学校法人先端教育機構は1月28日・29日の2日間、「事業構想サミット2026」を開催した。事業構想大学院大学(東京・青山)を拠点にオンライン配信も行うハイブリッド形式で実施され、500名を超える経営層・実務家が参加。会場は、未来の事業を模索するリーダーたちの熱気に包まれた。


AI・データによる
価値創出の再設計
初日の幕開けは、AIを単なる効率化ツールから「経営のエンジン」へと昇華させる議論から始まった。経済産業省の三木一樹氏(AI 産業戦略室)は、経済産業省のAI 政策の全体像について説明を提示。続くセッションでは、ブレインパッドの関口朋宏氏やレバテックの泉澤匡寛氏らが登壇し、データサイエンスを意思決定の中核に据える「データ駆動型経営」や、組織的な停滞を打破する「AX(AIトランスフォーメーション)浸透の5ステップ」を解説した。技術を「形式」で終わらせず、事業構想から逆算した「価値」として実装する具体論が展開された。
左から
(AI)
経済産業省 商務情報政策局
情報産業課AI産業戦略室
三木 一樹
経済産業省のAI政策と今後の展望
(AI)
ブレインパッド 代表取締役社長 CEO
関口 朋宏
AI時代の経営とデータサイエンス:
日本はどう生き抜くか
(AI)
レバテック執行役社長
泉澤 匡寛
なぜ日本企業のAXは進まないのか?
AI活用を浸透させる5つのステップ
(AI 人的資本経営)
事業構想大学院大学 特任教授
関 孝則
AI時代の経営と実践を世界の状況とともに考える/
イノベーションの再現性をめざす人的資本経営
イノベーションを牽引する
人的資本経営
午後は、人的資本情報の開示義務化から3 年を経た現在地の確認と、その先にある「投資対効果(ROI)」の証明へと議論が深まった。経済産業省の林美穂氏が制度設計の意図を語り、慶應義塾大学の保田隆明教授はコーポレートファイナンスの視点から人材投資と企業価値の連動を分析。さらに、リンクアンドモチベーションの坂下英樹社長は、事業戦略と組織戦略を同期させる実践知を披露した。「人が育つ組織こそが、イノベーションを再現できる」という結論は、多くの経営層の共感を呼び、人的資本への投資が財務価値に直結するメカニズムが明らかにされた。
左から
(人的資本経営)
経済産業省 経済産業政策局産業人材課 課長補佐
林 美穂
日本の「人的資本経営」の現在地とこれから
(人的資本経営)
リンクアンドモチベーション
代表取締役社長
坂下 英樹
事業戦略と組織戦略をいかに結び付け
成果につなげるか
(人的資本経営)
慶應義塾大学 総合政策学部 教授
保田 隆明
人的資本経営の本質を理解し、
事業実績に繋げる
危機管理投資を
成長戦略へ転換する
2日目の午前は、マクロの潮流を企業の生存戦略へと翻訳する白熱した議論が展開された。社会構想大学院大学の松江英夫教授は、ポスト・グローバリゼーション時代において日本企業が目指すべきは「戦略的不可欠性」の構築であると提言。一方、先崎彰容教授は思想史の観点から、経済を動かす「非経済的価値(アイデンティティ)」の正体を解剖。両氏のクロストークでは、平時と有事を分けない「フェーズフリー」な思考こそが、社会の不安を成長機会に変える鍵であるとの結論に至った。続くF5 ネットワークスジャパン SE本部の田邊淳一氏からは、危機管理の要諦ともいえるサイバーセキュリティをテーマに、AI 時代におけるセキュリティ戦略を解説。
守りを固めることで攻めに転じる「レジリエンス(復旧力)から成長への投資」というパラダイムシフトが提言された。
左から
(成長戦略・危機管理投資)
社会構想大学院大学 教授
先崎 彰容
戦後史に見る、現政策の見方
(成長戦略・危機管理投資)
社会構想大学院大学 教授 /
事業構想大学院大学 客員教授
松江 英夫
成長戦略を企業に活かす視点
(成長戦略・危機管理投資)
F5ネットワークスジャパン
SE 本部 ソリューションエンジニア
田邊 淳一
F5ソリューションで備えるAI特有の脅威に
対する最新セキュリティ戦略
探究学習による
次世代人材育成と社会接続
サミットの締めくくりは、産業界の持続可能性を支える「教育」への投資だ。経済産業省の柳橋幸裕企画官や、GIGAスクール構想に携わった中川哲教授が、学校を社会の「生きたラボ」とする構想を提示。その後、田中鉄工、ロッテ・東急、NTT東日本の3 社からは、SDGsやまちづくり、ウェルビーイングを題材にした授業実践が報告された。教育支援はCSR(社会貢献)の枠を超え、将来の高度人材確保と地域共創を実現するための「戦略的先行投資」であるという新たな合意形成がなされた。
左から
(探求学習)
社会構想大学院大学 教授
中川 哲
学校の社会接続の在り方
(探求学習)
経済産業省 商務・サービスグループ
サービス政策課 教育産業室 企画官
柳橋 幸裕
「未来の教室」と産業界ー教育現場
の連携推進に向けて
(探求学習)
田中鉄工 代表取締役 CEO
村田 満和
次世代の脱炭素×教育をデザイン
~子どもの学びが地域のサステナビリティを加速し、未来をつくる~
左から
(探求学習)
東急 フューチャー・デザイン・ラボ
探究学習支援プロジェクトリーダー
亀田 一誠
異色のタッグ! 東急×ロッテの「マチカシ」探究授業
(探求学習)
ロッテ 経営戦略部 事業開発課 主査
金澤 直樹
異色のタッグ! 東急×ロッテの「マチカシ」探究授業
(探求学習)
NTT東日本 ビジネス開発本部
営業戦略推進部
インキュベーショングループ 担当部長
佐野 雅啓
探究を社会の力に。産官学で描く
次世代教育の展望


リアル会場だからこそ
生まれた「共創」
本サミットの最大の価値は、講義で得られる知識以上に、その場に集う「人」にあったと言える。
リアル会場では、各セッション終了後にネットワーキングタイムが設けられた。そこでは、登壇した官僚や経営者に対し、参加者が自社の課題を直接ぶつけ、熱心にアドバイスを求める姿が見られた。また、参加企業同士が名刺交換から即座に協業の可能性を話し合うなど、偶発的かつ本質的な「共創」の芽が数多く生まれたことは、オンライン参加だけでは得られない体験であった。
次なる実践に向けて
2日間の議論を通じ、参加者は「自社の課題」を「社会の潮流」と接続させ、次の一手を構想するための多くのヒントを持ち帰ったことだろう。
事業構想大学院大学では、こうした「知の還流」と「人的ネットワーク」の場を今後も提供していく。本サミットで得られた知見を自社に実装するために、次回はぜひ、パートナー企業としての協賛や、構想計画を具体化するための大学院活用を検討いただきたい。共に社会を変革する「実践者」の参画を待っている。
A:サミット講演後は、ネットワーキングタイムで、講演者・受講者同士の意見交換が積極的に行われた。 B:終日参加の受講者は、軽食のケータリングとともに、受講・意見交換を行った。 C:それぞれの講演は、本学教員のファシリテートにより、構想への落としこみを示唆。 D:ロッテと東急のコラボレーションによる探究学習紹介ブース。 E:ロッテと東急のコラボレーションブース前では、多くの質問が寄せられた。 F:本学の院生、修了生、職員に、構想や構想研究に関する質問も多く出た。 G:探究学習の講演では、実際に授業を受けた高校生も発表。 H:1月の冷え込む中、早朝から多くの受講者が、本学会場(青山)へ足を運んだ。 I:新刊「事業構想原論」および月刊誌(事業構想・先端教育)も注目を集めた。