通信制高校・サポート校の拡大と社会的意義・課題
通信制高校の拡大を背景に、サポート校の役割も一層多様化している。制度上の位置づけと実態との間に生じる「揺らぎ」を踏まえ、その現状と課題を整理する。
通信制高校の増加と
通信教育連携協力施設の拡がり
内田 康弘
愛知学院大学 教養部 准教授
博士(教育学)。専門は教育社会学。近年の主な論文に,「通信制高校の現状と大学進学をめぐる諸課題」『名古屋高等教育研究』第26号(2026年), 主な著書に,内田康弘「第4章 通信教育連携協力施設の動向」手島純[編]『通信制高校のすべて2.0』彩流社(2025年), がある。
1990年代以降、全日制高校や定時制高校の学校数・生徒数が減少傾向を示すなか、通信制高校は、私立校を中心として増加傾向が続いている。文部科学省「学校基本調査」によれば、学校数は333校(うち私立251校)、生徒数は約30.5万人(うち私立24.3万人)であり、いずれも7割以上を私立校が占める(2025年度)。私立校を中心に、通信制高校へのニーズが高まっている一因には、「広域通信制高校+通信教育連携協力施設」という特有の就学スタイルの存在が考えられる。
広域通信制高校とは、本校(実施校)の所在する都道府県と、その他2つ以上の都道府県から生徒を募集する形態の通信制高校である。2025年度は全国に約130校あり、その大半を私立校が占める。学校ごとに入学可能な地域(教育区域)の異なる場合が多く、なかには全国47都道府県や海外を対象とする学校もある。
一方、通信教育連携協力施設とは、広域通信制高校(本校)が行う通信教育について、連携協力を行う施設のことである。「学校基本調査」によれば、全国に3,730施設ある(2025年度)。これらの施設は、生徒が点在する全国各地に展開され、広域通信制高校との適切な役割分担および連携協力のもと、単位認定にかかわる面接指導や試験、または、レポートの作成補助やメンタルケアなどの学習等支援が適宜実施されている。
富士通総研が2024年に実施した調査※1によれば、通信制高校生徒の入学動機は、不登校やいじめの経験、精神的な疾患などにより対人関係に困難を抱えている「対人関係困難」が最も多い。次いで、不登校による学習の遅れや学習面での特別な支援が必要な「学習困難」があり、併せて全体の7割を超える。
通信制高校で単位を取得する際は、自宅等での自学自習に基づいてレポート課題を提出することに加え(添削指導)、学校ごとに決められた日数のスクーリング(面接指導)とテスト(試験)を受ける必要がある。そのため、生徒には必ずしも通信教育連携協力施設の利用が求められるわけではないものの、日常的な学習ペースの維持や心身の健康相談、学び直しや進路相談など、一人ひとりのニーズに応じて、その利用の有無や頻度などが個別に選択されている。
サポート校の法的位置づけと
学習等支援施設としての役割・展開
2021年、高等学校通信教育規程の一部改正に伴い、それまでサテライト施設と呼ばれていた施設は、「通信教育連携協力施設」として、法令上に明記された。そしてそれらは、通信制高校の単位認定にかかわる面接指導や試験などを行うことのできる「面接指導等実施施設」(分校、協力校、技能教育施設、他の学校等の施設)と、それらを実施することのできない「学習等支援施設」(サポート施設)に法的に区分され、その類型や役割の違いも明示化された。
サポート校とは、この「学習等支援施設」の通称である。運営母体は、大手予備校や学習塾、NPO法人など、民間の教育機関が多い。その役割は、主に広域通信制高校に在籍する生徒に対して、在学期間内でのスムーズな卒業資格の取得や卒業後の進路形成に向けた、学習・生活面での支援を行うこととされる。
ただし、サポート校そのものは法律に定められた学校ではなく、あくまで法令上は学習等支援施設である。したがって、通信制高校(本校)や面接指導等実施施設とは異なり、面接指導や試験など、通信制高校の単位認定にかかわる教育活動を実施することはできない。それゆえ、サポート校を利用して高校卒業資格の取得を目指す場合、前提として、各施設と連携協力を行う通信制高校に入学することが不可欠となる。その際、通信制高校とサポート校の学費がそれぞれ必要で、現状、後者は高等学校等就学支援金の対象とならない。
なお、サポート校と通信制高校との対応関係は、必ずしも一対一に限定されているわけではない。一つの通信制高校に異なる複数のサポート校の生徒が在籍する場合や、反対に、異なる複数の通信制高校の生徒が一つのサポート校に在籍する場合もある。もっとも、いずれの場合も、学校教育法施行規則に基づき、「学習等支援施設」としてその名称や住所、定員などが、各通信制高校の学則に明記されていることが必要となる。
文部科学省が2026年に公開した「通信制高等学校情報発信サイト」のデータによれば、2025年5月1日時点において、サポート校の施設数は2,286施設、在籍生徒数は約4.8万人となっている(いずれも日本国内のみ)。なかでも、施設数は直近30年間で顕著に増加しており、現在では、全ての都道府県に設置されている。加えて、政令指定都市を含む「都市部」だけでなく、それらを含まない「地方部」への展開も徐々に進みつつある(図を参照)。
多様な学びの可能性と
制度と実態の境界線をめぐる課題
サポート校では、提携する通信制高校の卒業要件を満たすための学習だけでなく、独自のカリキュラムや教育プログラムを実施する施設も少なくない。たとえば、小中学校の学び直しや大学受験対策など学力保障にかかわる講座や、ヘアメイクやeスポーツ、ドローン操作など生徒の興味関心に合わせた講座が実施されることもある。加えて、起業家教育やSNSマーケティング、動画編集、資格取得など、将来のキャリアデザインに向けた講座を実施する施設もある。
さらに、年間行事として、遠足や修学旅行、文化祭などが実施されるほか、日常生活面では、部活動や生徒会活動、制服などが設けられることもある。法令上の学校ではなく、あくまで民間の教育施設であるものの、生徒にとってサポート校は、日々の「登校」を伴いながら、日常的な「学校」生活を送る場でもある。
このように、通信制高校とサポート校をめぐっては、法令上で定められた制度的な役割と、生徒から期待される実質的な役割との境界線が必ずしも明確ではなく、その「揺らぎ」が長年にわたり課題となってきた。たとえば、2025年に報じられたサポート校への通学定期券の適用をめぐる問題も、こうした「揺らぎ」がその背景にあったものと考えられる※2。
今後は社会全体で、両者の役割区分に対する適切な理解を深めることが重要である。また、両者の間では、多様な学びの保障に向け、適切な連携協力体制の構築と維持が必要である。国や地方自治体には、それらを適切に整備するための、実効性のある制度設計が求められる。
※1 株式会社富士通総研(2024)「高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究:定時制・通信制の課程を置く高等学校について(調査報告書)」13-14頁
※2 一連の背景を詳細に理解したい場合は内田康弘(2025)「サポート校と通学定期券「問題」へのまなざし:持続的かつ包括的な議論の継続に向けた一考察」『日本通信教育学会 研究論集』(令和6年度)88-102頁を参照いただきたい。
