神奈川県 20%の投資余力を生み出す
人口は減っても、業務量は変わらない。売上を上げられない行政が、それでも住民への対応を保ち、変化に応じるための原資はどこから生まれるのか。神奈川県のデジタル政策を6年間統括してきた江口清貴氏の答えは、一貫して「余力」をつくることであった。
人海戦術のきかない条件から
江口 清貴
神奈川県 CIO 兼 CDO
オンラインゲーム企業CFOとして、業界団体によるガイドライン整備や不正対策を主導。LINEヤフーでは社会課題解決型の取り組みを牽引し、SNSを活用した相談支援やAIによる防災の仕組み構築を推進。神奈川県CIO兼CDOとしても、行政DXや新型コロナ対策、防災情報連携、広域避難者データベースの整備など、デジタル技術を基盤とした官民学連携による政策提言と社会実装を通じ、社会課題の解決に取り組んでいる。全国SNSカウンセリング協議会理事長、Yahoo!基金理事などを務める。2025年、一般社団法人耐災害デジタルコーディネーションセンターを設立し代表理事に就任。東北大学特任教授(客員)、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構(ROIS)参与、防災庁設置準備アドバイザーも務め、行政・民間・研究の立場から、防災DX、自治体DX、官民データ連携、災害時の情報共有基盤の構築・活用を推進している。
神奈川県の人口は約920万人で、東京都に次ぐ全国2位である。ところが人口10万人当たりの医師数・病院数ともには全国下位にとどまる。保健師も、行政職員も、人口の規模に比べれば極めて少ない。2020年、新型コロナウイルスの感染が広がったとき、その差は数字となって現れた。感染者は人口に比例して増えるが、対処する側の人手は増えない。
「(人口当たりの職員数が少ないわけですから)他の自治体と同じようには、人海戦術ができません」。神奈川県の情報統括責任者(CIO)兼データ統括責任者(CDO)を務める江口清貴氏は、当時の県庁が置かれた条件をそう振り返る。少ない人数で大勢の住民の生活を支えるには、デジタルを使う以外に手がなかった。黒岩祐治知事の側にも同じ見立てがあった、と江口氏は言う。
デジタルを活かすには、何よりデータが要る。人が読むだけなら紙のほうが優れている、と江口氏は認める。書式は自由で、余白に書き足すこともできる。だが紙の情報は、そのままではパソコンに取り込めない。機械に分かる形で処理するには、デジタルデータにしておく必要がある。県庁の仕事をデジタルへ寄せていく理由は、突き詰めれば住民への対応を止めないためである。
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