坂村健氏が語る AIを基盤に学びの深化、生成AI時代の大学を問う
生成AIが急速に進化する中、大学はAIとどう向き合い、どう活かすべきか。東洋大学は2025年、AI管理運用基盤「AI-MOP」を全学展開した。設計に携わった東洋大学 情報連携学学術実業連携機構(INIAD cHUB)機構長の坂村健氏に、生成AI時代の大学のあり方を聞いた。
AI管理運用基盤を全学に展開
坂村 健
東洋大学 情報連携学学術実業
連携機構(INIAD cHUB)機構長
東京大学 名誉教授
1951年東京生まれ。1984年からオープンなコンピュータアーキテクチャ「TRON」を構築。モバイル端末、家電製品、車のエンジン制御、宇宙機の制御など世界中で多く使われている。IEEEライフ・フェロー、ゴールデンコアメンバー。2006年 日本学士院賞、2015年には、ITU(国際電気通信連合)150周年賞(ITU 150 Awards)を受賞。情報通信のイノベーション、促進、発展を通じて、世界中の人々の生活向上に多大な功績のあった世界の6人の中の一人として選ばれる。2003年 紫綬褒章、2024年 瑞宝中綬章を受章。『IoTとは何か』『DXとは何か』(角川新書)など著書多数。新著は角川書店刊『AIとは何か 言語からフィジカルへ、人間と〈逆〉進化する知能』。
洋大学は2025年、AI管理運用プラットホーム「AI-MOP」を全学展開した。AI-MOPの特徴は、特定ベンダーが提供する単一のAIに依存しないことだ。
現在、巨額の研究開発資金を有する一部の巨大IT企業が、AI開発を主導している。しかも、AIはいずれも進化の途上にあり、「その中からどれを選ぶのかは非常に難しい問題です」と坂村健氏は語る。だからこそ、一社のAIに依存せず、複数のAIを状況に応じて使い分けられる基盤を大学自身が持つことに大きな意味があるという。
東洋大学は、AI活用を段階的に進めてきた。坂村氏自らが設計・開設し学部長を務めていた情報連携学部(INIAD)では、2023年4月から全学生がGPT-4を利用できるAI-MOPを導入した。一方、全学的には、教育での活用は各学部の裁量に委ねつつ、大学運営ではまず職員の利用を推進した。2024年11月には教職員向け研修を実施し、2025年1月からは教務システムなどへのAI活用のためにAI-MOPの全学展開を行った。
この取り組みの背景には、AIを単なる便利な道具ではなく、これからの社会を支える基盤として捉える考えがある。今後は、複数のAIがそれぞれの役割を担いながら相互に連携し、社会を支えるようになる。そうした将来像を見据えて開発されたのがAI-MOPだ。
坂村氏は、組織トップの大局観と迅速な意思決定が重要だと強調する。東洋大学で職員へのAI導入が進んだ背景にも、当時の理事長による迅速な決断があったという。
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