対話を重ねて実現した働き方改革と部活動改革

長時間労働が注目されて久しく「何も変わらない」と考える教員も少なくないはずだ。本稿は対話を重ねて実現した働き方・部活動改革の実践を紹介しつつ、管理職に必要な役割を明らかにしたい。

憧れと現実の狭間からの学び直し

長瀬 基延

長瀬 基延

愛知県公立学校 教頭/岐阜聖徳学園大学 教育学部 非常勤講師
独立行政法人教職員支援機構 フェロー
岐阜大学大学院教育学研究科 修了、教職修士(専門職)。専門は、学校経営、学校組織・学校文化、体育科教育、教科外教育など。中部電力(株)事務系社員、(公財)名古屋YMCAスポーツ指導員を経て、2022年より現職。平成30年度文部科学大臣優秀教職員表彰受賞。主な著書に『子どもの声で学校をつくる――問い、対話し、共に紡ぐ、学校改革はじめの一歩』(2025年7月刊行予定、教育開発研究所)。

民間企業や法人スポーツ団体での勤務を経て、憧れだった保健体育科の中学校教員になった私は、学校現場のあまりにも異なる「働き方の常識」に衝撃を受けました。定時出退勤・業務効率を重んじるホワイトな職場から一転、そこには、長時間労働や自己犠牲もいとわず、子どもたちと真剣に向き合う先生たちの姿がありました。朝早くから夜遅くまで、休む間も惜しんで教育に没頭するその姿は、壮絶でありながら誇らしく、圧倒されるほど情熱的でした。

その過酷な労働環境に戸惑い、もがきながらも、私は必死に馴染もうとしていました。月日が経つにつれて徐々に慣れ、初任1年の終わりには、すっかり教員特有の労働文化に染まっていました。その後は、とりわけ部活動指導に熱中し、主顧問としての16年間を無我夢中で走り続けました。

家族と過ごす時間もほとんど取れない日々に追われながら、心の奥底には常に拭いきれないモヤモヤがくすぶっていました。そんな中、2018年頃には「働き方改革関連法案」が世間で盛んに話題にのぼるようになります。私はその報道を横目に見ながら、どこか他人事のように感じていました。というのも、深夜まで続く膨大な業務や、休日のない労働環境に慣れきっていた私は、「働き方改革なんて夢物語にすぎない」「教員に関してはどうせ何も変わらない」——そんな諦めが心の大半を占めていたのです。

(※全文:5535文字 画像:あり)

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