『ミス・パリ・グループ代表 下村朱美の『美しく生きる』』

『ミス・パリ・グループ代表 下村朱美の『美しく生きる』』

『ミス・パリ・グループ代表
下村朱美の『美しく生きる』』

村田 博文 著/184頁/1700円+税/財界研究所

女性用エステティックサロン「ミス・パリ」や日本初の男性用エステティックサロン「ダンディハウス」などを展開している美容の総合商社ミス・パリ・グループ。「経営の基本は人」との考えからプロフェッショナルの人材育成に尽力し、2023年4月には日本初となる美と健康の専門職大学「ビューティー&ウェルネス専門職大学」を開学。「美と健康を学問に昇華させることで、人々の豊かな人生に貢献していきたい」。そう語る同グループ代表の下村朱美氏の経営者人生を描いたのが本書だ。

下村氏は1982年、25歳でエステティックサロン「シェイプアップハウス(現在のミス・パリ」1号店を大阪に出店。現在は東京・銀座に本社を構え、北海道から福岡まで日本全国に多数の店舗を展開。ミス・パリ・グループを日本を代表するエステ集団に育て上げた。海外でも上海や台湾に出店し、今後も世界市場の開拓に意欲的だ。

そうした躍進を支えてきたのは、創業以来のお客様第一主義であり、何より「お客様の美と健康のために自分たちは何をなすべきか」を考え抜く人材育成だった。創業当時の美容業界では、「お客様は神様。自分たちは、しもべのように言われることを一生懸命にやるだけという考え方でした」と振り返る。本来はプロとして、一人ひとりのお客様に合わせたアドバイスをすべきだと考えていたが、「アドバイスなんてとんでもない」という風潮だったのだ。

当時のエステティック業界には、まともな教育もなかった。欧米に出かけて現地で高級なエステティックサロンを体験した富裕層のご婦人たちが、化粧品・美容関連メーカー主催のごく短期間の研修を受けただけで開業に及ぶケースも多く、皮膚の構造や肌の働きをきっちり学んでいる人などほとんどいなかった。美容の世界に飛び込んで間もなく、まだ業界の「常識」に染まっていない下村氏だからこそ、「理論が分かって、理論に基づいた技術でお客様に接するようなサロンをつくらないと」と考えるようになった。今でこそ珍しくない発想に思えるが、当時の美容業界にあっては極めて画期的だったに違いない。専門職大学で取れる学士号は「ビューティ&ウェルネス学士(専門職)」。英語名では「Bachelor of Science in Beauty & Wellness」となる。「美」と「健康」を科学(Science)で説明するという建学の精神の表れだ。

今なお勢いを増す下村氏の経営者人生を描いた本書には、「経営の基本は人」というビジネスの要諦が詰まっている。業界・業種を問わず、多くの読者の参考になるだろう。

新刊一覧

●学校教育一般

ChatGPTと共に育む学びと心
―AI時代に求められる教師の資質・能力―
鈴木 秀樹、安藤 昇、安井 政樹 著/184頁/2000円+税/東洋館出版社

●高等教育

大学FD入門
教育改善に取り組む人の必携ガイド
中井 俊樹、西野 毅朗 編著、佐藤 浩章、竹中 喜一、上月 翔太 著/218頁/2500円+税/ナカニシヤ出版

●幼児教育

学力は「ごめんなさい」にあらわれる
岸 圭介 著/208頁/860円+税/筑摩書房

子どもを否定しない習慣
林 健太郎 著/256頁/1600円+税/フォレスト出版

子どものやる気を引き出す
「ほめる」よりすごい方法39

沼田 晶弘 著、Masaki イラスト/192頁/1500円+税/高橋書店

個性を輝かせる子育て、つぶす子育て
辻 秀一 著/266頁/1700円+税/フォレスト出版

●特別支援教育

特別支援教育の視点でつくる
「個別最適な学び」と「協働的な学び」

新井 英靖 編著、茨城大学教育学部附属
特別支援学校 著/160頁/2000円+税/明治図書出版

発達が気になる子の教え方
THE BEST

渡辺 道治 著/200頁/1900円+税/東洋館出版社

発達障害「不可解な行動」には
理由がある

岩波明 著/200頁/990円+税/SBクリエイティブ

天才肌な発達凸凹っ子の育て方
せっかくの才能を引き出すための新発想アドバイス
南雲 玲生 著、後藤 健治 監修/192頁/1600円+税/誠文堂新光社

●人材育成・マネジメント

中高年リスキリング
これからも必要とされる働き方を手にいれる
後藤 宗明 著/272頁/900円+税/朝日新聞出版

仕組み化がすべて
岩田 圭弘 著/304頁/1600円+税/SBクリエイティブ

メンターになる人、老害になる人。
前田 康二郎 著/288頁/1580円+税/クロスメディア・パブリッシング

「ハラスメント」の解剖図鑑
宮本 剛志 著/160頁/1600円+税/誠文堂新光社

部下に惚れろ!
〜小さな会社の経営者こそ、経営書を捨てていい〜
小林 大地 著/176頁/1500円+税/みらいパブリッシング

●その他

子どもの隠れた力を引き出す
最高の受験戦略
中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法
成田 奈緒子 著/240頁/870円+税/朝日新聞出版

夢も金もない高校生が知ると得する
進路ガイド

石渡 嶺司 著/352頁/1450円+税/講談社

AIに潰されない
「頭のいい子」の育て方

富永 雄輔 著/200頁/920円+税/幻冬舎

高校野球と人権
中村 計、松坂 典洋 著/216頁/1900円+税/KADOKAWA

注目の一冊

『自己調整方略 主体的な学びを実現する46の手立て』

『自己調整方略 主体的な学びを実現する46の手立て』
木村 明憲 著/176頁/2060円+税/明治図書出版

自己調整学習とは、学習者である子どもたちが、自らの行動、動機づけ、およびメタ認知に関与(調整)する学び方だ。前著『自己調整学習』を踏まえ、本書では「子どもが自ら学習を調整するための学び方」をより実践的に深めた。

「見通す」「実行する」「振り返る」という3段階のフェーズごとに計46もの手立てを紹介。レギュレイトフォーム(学習計画表)案を含め、子どもたちの習熟度に応じ、実現可能な自己調整学習の具体をスモールステップで提案している。