人口減少時代の地域づくりを問い直す 「量と規模」から「質と流れ」への転換

人口減少時代において、持続可能な地域づくりをいかに実現するか。約20年にわたり秋田県五城目町などで研究し、「通域的な学び」の構築に取り組む国際教養大学・工藤尚悟准教授は、本当の地方創生のためには、「量と規模」ではなく「質と流れ」への転換が必要になると説く。

人口減少が問い直す
「持続可能性」の意味

工藤 尚悟

工藤 尚悟

国際教養大学 国際教養学部 グローバル・スタディズ領域 准教授
東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了(博士・サステイナビリティ学)。南アフリカ・プレトリア大学アジア研究センター客員研究員。専門は、人口減少時代の持続可能なまちづくり、南アフリカの農村起業家・地域研究。秋田と南アフリカの農村地域を行き来しながら、異なる風土にある主体の邂逅から生まれる“通域的な学び(Translocal Learning)”というコミュニティ開発の方法論の構築に取り組む。秋田県出身で、現在は同県五城目町をフィールドに地域社会のサステイナビリティを研究している。著書に『〈わたし〉からはじめる地方論』(英治出版)。

──工藤先生は「地域×サステイナビリティ」の研究に取り組まれています。

私は大学院生だった10年以上前から、持続可能な地域づくりの研究を続けてきました。従来のサステイナビリティ研究では、世界人口の増加と環境負荷の拡大を前提に議論されてきました。しかし日本では、すでに2008年に人口のピークを迎え、縮小社会に入っています。人口が減っていく社会では、これまでとは根本的に異なるアプローチが必要になります。

私の研究の出発点は「縮小していく社会の中で、地域は何をどのように持続させるのか」という問いでした。人口減少時代における「豊かさ」とは何か。この問いは、単なる学術的関心ではなく、私の出身地である秋田県の現実から生まれたものです。

秋田県は全国で最も人口減少と高齢化が進んでいます。私は秋田県由利本荘市の山間部から研究を始め、…

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