RESAS de 地域探究 データサイエンス教育と探究学習の新しい形

人口動態や産業構造、人の流れなど官民ビッグデータを集約し可視化する地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」の、教育現場での活用が広がっている。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局では、RESAS を活用する学校現場をサポートするべく、RESAS 副教材として高等学校等向けに8種の授業モデルを公開し、あわせて2月21日、「RESAS de 地域探究シンポジウム」をオンラインで開催した。

「RESAS de 地域探究」ホームページでは、RESAS を学校で活用するための各種情報が掲載されている。(https://tanq.resas-portal.go.jp/)

「RESAS de 地域探究」ホームページでは、RESAS を学校で活用するための各種情報が掲載されている。(https://tanq.resas-portal.go.jp/)

第1部に登壇したライフイズテック取締役の讃井康智氏は、現代は「もはやデジタルネイティブではない」と打ち出した。2010年はスマホネイティブ、2020年はクラウドネイティブ、そして2030年には AI ネイティブも誕生すると話す。GIGA スクール構想は、インターネットに常時接続された「クラウド・バイ・デフォルト」が示されている。

こうした環境を整えた上で、子どもたちの可能性を大人がどう引き出していくかがカギとなる。SDGs の認知度は高くても、自身が社会を変えられると考える若者の少ない日本。

「RESAS を活用し、半径50cmの身近な課題解決で成功体験を得ることが、社会課題を解決できる人への第一歩に繋がります」と讃井氏。「このシンポジウムを通して、データサイエンス教育の必要性を社会的イシューにしていきたいと思っています」と語った。

2017年の学習指導要領の改訂に携わった文部科学省 科学技術・学術総括官の合田哲雄氏は、「教育は一面では人々に希望を与えますが、一方で格差の固定化をもたらすことも否定できません」とした上で、新学習指導要領では「読解力・対話力・協働力」の3つを重要視していると解説した。対話や協働に必要なのは論理と事実で、RESAS は事実の束、海と言える。

「RESAS を活用し、自分の足で立ち、自分の頭で考える学びを通して、社会的な自律と民主政の基盤を作っていくような学びの意義を、考えていく必要があると思います」と話した。

第2部では、大正大学地域創生学部の浦崎太郎教授が講演。高校と地域が連携することで人づくりと地域づくりを一体的に進めてきた実践から、RESAS の有効性について話した。地域プロジェクトは、仮説を立て実行し、修正していくことで成り立つが、高校生の地域プロジェクトの場合、特に仮説を立てる時の前提条件の曖昧さが目立つという。

「思いつきの提案ではなく、妥当性のある提案をしていくための仮説の吟味、情報収集、分析などに、RESAS を活用する必要性・必然性が高い。これができれば、学校の教科として、地域の課題に取り組み、地方創生にも貢献できると考えています」。

シンポジウムには、広島県教育委員会教育長の平川理恵氏や、全国の副教材作成教員らも参加し、RESAS の教育活用や地域探究について議論を交わした。また、コロナ禍で学校活動が制限されるなか、生徒自身が自分で探究学習のできる教材「地方のチェンジ・メイカー育成プログラム」を使った、学びを止めないプロジェクト「自宅 de 地域探究」についても、事例が紹介された。