人的資本経営で問われる 「戦略パートナー」としての人事機能

人的資本経営への関心が高まる一方で、人事部門の「戦略パートナー」としての役割が問い直されている。戦略的人的資源管理の観点から、人事部門に求められる役割や機能、人的資本を組織能力に変換するメカニズムの解明について、東洋大学・西村孝史教授に話を聞いた。

人的資本経営ブームへの懸念、
実務と学術の往還が求められる

西村 孝史

西村 孝史

東洋大学 経営学部 経営学科 教授
2001年4月、株式会社日立製作所に入社。2005年、同社を退職後、一橋大学大学院商学研究科博士後期課程に進学。博士(商学、一橋大学)。 徳島大学、東京理科大学、東京都立大学勤務を経て、2025年4月より現職。2021年4月から2022年3月の間、University of Readingに併設されているHenley Business Schoolにvisiting scholarとして滞在。主な著書に『職場のソーシャル・キャピタル―人的資源管理が創り出す個と組織の関係性』(中央経済社、2024年、第24回 日本労務学会学術賞)や『1からの人的資源管理』(共著、碩学舎、2022年)。専門は人的資源管理論。

── 日本における戦略的人的資源管理の潮流について、どのように見ていますか。

戦略的人的資源管理(SHRM)は人事管理をコストセンターではなく、企業価値を生み出すプロフィットセンターとして「戦略パートナー」に位置づける考え方です。2020年に公表された『人材版伊藤レポート』によって、人材戦略と経営戦略を連動させることで企業価値を高めることが求められるようになりました。実は、SHRM研究では、人的資本経営で言われているようなトピックスが約30年以上前から指摘されてきましたが、「戦略パートナー」を自認している人事部門は増えてきたとは言え、まだ少ないのが現状だと思います。

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