「素材」と循環
近世職人尽絵詞(鍬形蕙斎筆、江戸時代・19世紀、東京国立博物館蔵)「大工」
江戸の町に生きた百種あまりの職人を、絵師・鍬形蕙斎が一巻に描いた肉筆絵巻。松平定信の発案により、大田南畝や山東京伝ら戯作の名手が詞を添えている。ここに掲げた「大工」の場面では、釿(ちょうな)で丸太を削り、台鉋で板を仕上げ、鑿を槌で打ち、下げ振りで垂直を確かめる姿が生き生きと描かれる。彼らは木の性質や部位ごとの硬さを読み、それに応じて道具を使い分けた。物を完成品としてではなく素材として知り尽くす──その眼差しこそ、直して使い切り、暮らしを結果として循環させた時代を支える土台だった。
出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム
(https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-83)
「修理する権利」を定めたEUの指令が、二〇二六年七月末、加盟各国で順次施行される。直せるはずの物が捨てられ続ける現実を、法律で押し戻そうという動きだ。EU市場に製品を売る日本企業にも、対応はやがて及ぶ。一方の国内は、修理より分別・再生(リサイクル)へ関心が偏り、修繕を制度として後押しする力は弱い。
この「直す」をめぐる現代の問いを、本連載を監修する古川柳蔵氏(東京都市大学教授)が長年積み重ねてきた戦前の暮らしの聞き取りに重ねてみる。すると、問いそのものが静かに組み替わっていく。
(※全文:2232文字 画像:あり)
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