色覚の多様性を理解し、教育に色のユニバーサルデザインを[AD]

色彩検定に、2018年から「UC級」が新設された。UCとは色のユニバーサルデザインで、色覚の多様性に配慮した、誰もが見やすい色使いのこと。色を区別しにくい人は日本人男性の5%ほどいると言われ、教員をはじめ公共性の高いものの制作に携わる人は正しい理解が必要だ。

認知の広がる
色のユニバーサルデザイン

⼭中 喜代

⼭中 喜代

公益社団法⼈⾊彩検定協会 理事⻑

人の色の見え方には個人差があることはあまり知られていないのだが、特定の色の組み合わせが区別しにくい人は、日本では男性の20人に1人、女性の500人に1人、全国で300万人以上存在するといわれている。カラフルに色分けされた路線図や電源のON/OFFを示すランプなどが、ほとんど同じような色に見えてしまうという日常生活における不便さに加えて、気象情報や避難経路など瞬時に理解すべき重要な情報が不適切な色使いにより伝わりにくくなる場合がある。

「色覚の特性は後天的にも変わります。日本は65歳以上の人口が3割近い高齢社会で、これからますます高齢化が進むことが予想され、眼の機能の老化による色の見え方の変化を、誰もが実感する社会になります」と、色彩検定協会の山中喜代理事長は語る。UC級の創設にあたり専門的な内容や公式テキストの執筆については、色彩に関する専門機関である日本色彩研究所に協力を仰いだ。

従来の色彩検定(1~ 3級)が基礎的な知識やデザインなど、色の“感性的役割”に重きを置いているのに対し、UC級では“機能的役割”を重視。情報を的確に伝えるために色を使うシーンを想定し、配慮すべきポイントを網羅した内容となっている。

5回目の実施となった2021年夏期試験では約2500人が受検し、増加傾向にある。

「もともと色彩検定の受検者は、デザインやファッション関係、理容・美容などの仕事を志望する学生さんが多かったのですが、第5回のUC級を団体受検された学校36校の内訳を見ると、工業高校やIT系専門学校も取り組んで頂いているなという印象です。個人受検では福祉関係や教員の方達も受検されています。これからは、どんな業界・職種でも色のユニバーサルデザインと無関係ではいられないとも思いますし、とくに教育関係、官公庁、webデザイナー、広報、インフラ関係など、色覚の多様性に配慮すべき仕事に就いている人たちや、将来そのような職を目指す学生さんには、ぜひ知っておいていただきたい知識ですね」(山中氏)

色覚多様性を理解し、
誰一人取り残さない教育を

名取 和幸

名取 和幸

⼀般財団法⼈⽇本⾊彩研究所常務理事

教育現場におけるユニバーサルデザインへの配慮は、SDGsの「誰一人取り残さない」という姿勢にもつながり、17の目標の一つである「質の高い教育をみんなに」にも直結する。どんなに優秀な教員が豊富な知識を子どもたちに伝えようと思っても、情報のアウトプットの方法を間違えてしまうと、うまくいかないことがあるからだ。たとえば、文部科学省が2003年に策定した「色覚に関する指導資料」の中には、「黒板上に赤・緑・青・茶色などの暗い色のチョークを使用することを避けるようにする」とある。

「低学年になるほど自分が他人と違う見え方をしていることに気づかない子が多いですから、先生が『人の顔を緑色に塗るなんて、ふざけている』とか、『教員の言っていることを理解していない』などと子どもたちを誤解してしまわないためにも、UCについて学んで欲しいと思います」と、色彩研究所の名取和幸氏は語る。

かつて必須であった学校における色覚検査は、検査によるストレスなどを配慮し、2002年から行われなくなった。ところが、パイロットや運転士など一部の職業には色覚制限があり、進路を決める時になって初めて自分の色覚特性を知り、夢をあきらめなければならないケースが増えた。そこで、子どもたちが適切な年齢で自身の色覚タイプに気づくことができるように、2016年からは希望者への色覚検査が復活した。

「子どもたちの心情にも寄り添いながら、今後の日常生活へのアドバイスや進路指導を行うためにも、教員は色覚の多様性についてもっと理解を深めて、適切な配慮や対応を身につけて頂きたいと思います。男子なら20人に1人ということは、クラスに一人くらいの割合に当たり、けっして珍しい存在ではありません」(名取氏)

重要性の増す
誰もが見やすい色使い

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最近はインターネットを活用した学習なども広まっており、専門家ではない個人が発信した情報を教材に使う頻度が高まってきた。悪意なく、発信者個人が「キレイだから」「インパクトがあるから」と選んだ配色が、特定の子どもたちにとっては見えにくいデザインになっているケースも生じやすい。

「自由に表現できるというウェブの特性が、印象をコントロールするという意味ではプラスに働いていても、情報を伝えるという意味ではマイナスに働いてしまうケースもあるということです。ICTが急速に進んでいる教育現場でのデジタル教材はもちろん、自治体のウェブサイトのように公共性の高いものの制作や運用に携わる方にとっても、UCの知識は必須になってくるでしょう」(名取氏)

色彩検定UC級は、1~3級とは難易度の相関がなく、初めて色彩検定に取り組む人でもチャレンジしやすい内容になっているという。

「単に身に付けておくべき知識・教養として一般書籍にまとめるのではなく、資格制度にしたことに意味があると思っています。試験としてUCを世に問うことで、この課題についてより多くの方に注目していただけるという点がその一つです。私たちの目標は、誰もが色覚の多様性や色のユニバーサルデザインについて正しい知識を身につけている社会の実現です」(山中氏)

教育の現場で、色覚の多様性を理解する教員が増えることは、“気持ちのユニバーサル化”につながり、当事者である子どもの心理状態にも良い影響を与えるだろう。色覚の違いを自覚しながら、「間違っている」「なぜわからないの?」といった言葉で傷つけられる子どもを一人でも減らすために、色彩検定UC級を学ぶことは有効なステップになるはずだ。

【お問い合わせ】

公益社団法人 色彩検定協会株式会社
TEL:06-6150-5055
Mail:ads@aft.or.jp
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