GIGAスクール構想第2期に向けて端末の共同調達をどう実現するか

GIGAスクール構想により、1人1台端末の学習環境が整備された。既に一部自治体では、端末の更新が必要になってきており、文科省は更新費用などの予算措置をしたなか、共同調達に注目が集まっている。当時、奈良県の共同調達のキーパーソンの一人だった谷正友氏に話を伺った。

GIGAスクール構想第2期
国策として進む端末の更新

谷 正友

谷 正友

一般社団法人 教育ICT政策支援機構 代表理事
1999年4月より大手Sierを経て、2012年4月より奈良市役所、奈良市教育委員会事務局。2022年に奈良市役所を退職し、同年一般社団法人教育ICT 政策支援機構を設立、代表理事に就任。文部科学省学校DX戦略アドバイザー、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の改訂に係る検討会委員、奈良県域学校教育DX推進連携協議会戦略コア会議外部有識者、富山県富山市教育DX政策監、香川県教育委員会 GIGAスクール構想推進アドバイザーなど。

23年11月に閣議決定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」は「国策であるGIGAスクール構想の第2期を見据え、地方公共団体への徹底的な伴走支援を継続しつつ、日常的な端末活用を行っている地方公共団体の故障率も踏まえた予備機を含む1人1台端末の計画的な更新を行う」ことが盛り込まれた。

この方針を受け、文部科学省では令和5年度補正予算において「GI GAスクール構想の推進~1人1台端末の着実な更新~」(2661億円)で予算措置をしたほか、第1期で顕在化した自治体間格差の解消に向けて「GIGAスクール運営支援センター整備事業」(35億円)等の取組みを進めている。

また、閣議決定は端末更新において「地方公共団体における効率的な執行等を図る観点から、各都道府県に基金を設置し、5年間同等の条件で支援を継続するとともに、(略)都道府県を中心とした統一・共同調達の仕組を検討する」とした。

24年4月に公表された「GIGAスクール構想の実現 学習者用コンピュータの調達等ガイドライン」では、第2期を見据えた端末の整備・更新について、端末の整備・更新を行う地方公共団体が基金からの補助を受けるために検討しなければならない事項や、共同調達をはじめとした実施しなければならない手続を概括的に解説している。

そうした中、第1期から共同調達を実現した自治体がある。奈良県は、県や市町村の教育長、行政、有識者などを集めた「奈良県域 GIGA スクール構想推進協議会」を設置し、予算や具体的な実現方法などの議論を重ねたのち、20年7月に県内約40の自治体で共同調達を行った。

当時、奈良市教育委員会に所属し、共同調達を実現したキーパーソンの一人で、現在は一般社団法人教育ICT政策支援機構の代表理事を務める谷正友氏は「第1期も共同調達は推奨されていたものの、実際に実現できた自治体が少なかったことから、第2期において、原則として共同調達が求められている点は、非常に注目すべき点だといえます」と話す。

ランニングコスト低減だけでない
共同調達実現のメリットとは?

共同調達のメリットは何だろうか。ガイドラインは、その目的として「端末調達に係る市町村の事務負担の軽減や、スケールメリットによる端末・サービス等の調達・ランニングコストの低減、共同調達を通じた端末利活用等に係るノウハウの共有による業務改善など」を挙げている。また、教員が市町村を越えて異動した場合、使用端末のOSが同一であれば、教育活動や校務もスムーズに継続できるといったことも期待できる。

これらに加えて谷氏は「都道府県域の自治体が集まって『こんな教育ができたらいいね』と、目指すべき学びの姿や、その実現に必要なICT基盤の在り方などを共有できると、ものすごく大きな力になります。ガイドラインも、都道府県域の自治体が議論して調達してくださいと書いているわけです。共同調達を機会に、大きなまとまりを作って、みんなでこの形で頑張っていこうと同じ方向を向ける。これが共同調達の最大のメリットです」と強調する。

ガイドラインは端末の共同調達を円滑に進めることを目的に都道府県域全ての自治体が参加する「共同調達会議」の設置を求めている。そして共同調達を円滑に進めるだけでなく「都道府県レベルでの端末の利活用の活性化に向けた大方針・グランドデザインの検討・策定や、域内外における先進的な取組の共有、校務分野における業務改善に向けた取組の共有、諸般の課題解決に向けた情報交換などを通じた、ICTによる域内の学校教育の改善・底上げを目的とすることが望ましい」としている。

共同調達に向けた
自治体間の合意形成の進め方

教育ICT政策支援機構では、自治体・教育委員会・学校向けの支援として、GIGAスクール構想の第2期に向けた端末の拡充の計画、予算化、事業化の支援や、関連するアクセス制御、ゼロトラストに対応したネットワークの増強、調達に向けたコンサルティング等を行うほか、企業等向けにも第2期に対応したコンサルティング等を行っている。自治体からは奈良県の共同調達をどう実現したのかという相談が増えているという。

「特に、県域の自治体とどうやって合意形成ができたのかという相談をたくさんいただいています。私がまずお伝えしていることは、どんな端末が良いのかという合意形成を目指す前に、どんな教育を目指したいのか、みんなで大切にしたいことは何かといったことについて、合意形成をすることをお勧めしています」

奈良県では「住んでいる地域、学校の規模、家庭の環境、に関係なく学校に通うすべての子どもたちに最新の(最高ではなく)質の高い(高価なではなく)学習環境(人&物)を整える」こと、3つの大切なことに「子どもが自分で学べるようにする」「学びのデータを自分だけにとどめずシェアする」「特別なことはしないあたりまえのことをあたりまえにする」を掲げ、6つのコンセプト(図表)といった合意形成を進めていた。

また、共同調達だけでなく第2期に向けて教育現場には様々な課題がある。谷氏は第2期に向けて、GIGAスクール運営支援センターや文科省の学校DX戦略アドバイザーといった専門人材への相談・委嘱などアウトソーシングに頼ることも大事だと話す。実際に谷氏も富山県富山市の教育DX政策監など複数の自治体から委嘱を受けている。

「子どものために、先生がより自由に仕事ができる、そんな学校づくりを後押しするのが教育委員会の役割です。共同調達で端末を変わる自治体があれば、ハレーションも起きるでしょう。そうした時に、現場の声をヒアリングして、コストや使い勝手と色んな観点から、いくつかの案を提案して、『この現場の声を重視したいからこの案を採用したいのです』と丁寧な説明を心がけていれば、合意形成も進むと思います。教育ICT政策支援機構では、自治体と企業等の橋渡しも重要なミッションなので、官民問わず、お気軽にお声ががけいただければ嬉しいです」