学ぶ楽しさを再発見、人は生涯成長し続ける学ぶ主体

社会情報大学院大学は8月8日、『リカレント教育フェア』を開催。リカレント教育の最前線にある同学の学びの紹介や、同学で学ぶ学生の言葉を通じ、リカレント教育の意義を再考した。在学生座談会では2021年4月に開設された実務教育研究科の第1期生が集い、院生生活等を語り合った。

立原 寿亮さん(左上)、伴野 崇生准教授(右上)、佐藤 文子さん(左下)、安藤 勉さん(右下)

三者三様
学び直しのきっかけ

社会情報大学院大学は2021年8月8日、「リカレント教育フェア」をオンラインで開催。同フェアではリカレント教育の最前線にある同学の学びの紹介や、学生の言葉を通じ、リカレント教育の意義を再考した。

在学生座談会では2021年4月に開設された実務教育研究科の第1期生である立原寿亮さん、佐藤文子さん、安藤勉さんの3名が集い、大学院生生活等を語り合った。ファシリテーターは、社会情報大学院大学 実務教育研究科准教授 伴野崇生氏が務めた。

――今回は1期生の皆さんに、本研究科に期待すること、自らが実装を志す教育の展望、実際の大学院生生活などについて、語り合っていただきます。まず、自己紹介をお願いします。

安藤:私は民間企業に在籍し25年ほどになります。組織内で人権担当をしており、人権研修や相談など、これまでは肌感や経験に頼る部分が大きかったのですが、きちんとした議論を踏まえて見直してみたいと思い、この大学院の門をたたきました。

立原:私立学校の教員になって丸8年になります。これからの学校をどうしたらいいのかという大きな問題にぶち当たり、学び直しの機会を積極的に得ていきたいと考え、入学しました。

佐藤:私は熊本の医療法人に20年ほど勤務し、人事教育担当・採用担当として10年弱。人材育成、社内研修の計画・立案などもしています。研究科に入ったのは、学び直しをして自身のスキルアップをはかりたいと思ったのがきっかけですね。

――三者三様の背景と実務経験をお持ちですが、実際に入学してみての感想はいかがですか?

安藤:組織の中で、長年同じメンバーと仕事をしてきたので、果たして自分の意見がどう受け取られるのか、最初は非常に心配でした。しかし、ここは学びの場ですので、肯定ファースト。決して否定はされないけれども、同じ目線の同級生が様々な角度からコメントをくれるので、非常に参考になりますし、仕事のリフレッシュにもなっています。

立原:対面はもちろんオンラインのみでも卒業できることもあって、年代も職種も場所も異なる人たちから集まってくる色々なカルチャーが、授業を通して良いミックスになっていると感じます。

佐藤:私の場合、熊本からの参加は、オールオンラインが可能でなければ無理だったかと思います。ありがたい機会だと思い、飛びつくように第1期に応募しました。オンラインですが、立原さんとは同じ基礎ゼミを受講しており、院生同士、横の繋がりも築きながら、オンラインのメリットを十分に享受できるシステムかなと思います。授業内容も非常に啓発的で、脳が活性化するのを自覚するような楽しい時間を過ごしています。

学び方を学び直す
360度の視点で自身の研究を見る

――皆さんが、具体的にどのような研究をしているのか、お聞かせください。

安藤:私は企業の人権担当なので、研究テーマもそれに沿ったものになっています。リカレント教育にも結び付きますが、私が社内や一部のクライアントに提供している人権研修をもう少し広く社会に根付かせるには、という発想で、社会制度や教育制度に組み込むにはどうしたらいいかを研究しています。

過去に私は、社会情報大学院大学の他のプログラムに在籍して一部単位を取得しており、今回の研究科では入学時から2年次相当の扱いとして、論文を書く最中です。現在、四苦八苦しながら取り組んでいます。大学を卒業以来、30年ぶりに学びの場に戻ってきて、周りのサポートを受けながら、学び方を学び直している側面もあるかと感じます。

立原:私は、「これからの中等教育の教員に求められる資質・能力とは」というテーマの研究計画書で入学を出願しました。1人1台情報端末が配られるなど、学校現場はいま、明らかに変革の時期を迎えています。そうした中、教科学力以外の必要な力を学校でどう身に付けたのか。いかにエビデンスを用いて可視化していくかを、ポートフォリオを切り口に考えていきたいと思っています。

ポートフォリオというのは、体育祭、文化祭、定期テストなどを通して何を学んだか、振り返りも含め、文字や動画、写真などで学習の履歴をデータとして残す「学びのアルバム」のようなもので、少しずつ研究を進めています。

佐藤:私のいる医療業界は離職が大きな問題となっています。人事担当として、離職にはコミュニケーション能力が大きく関係しているのではという感覚がありました。ここ5年ほど、コミュニケーション教育に力を入れてきましたが、離職とコミュニケーション能力に本当に関係があるのかといったことを研究したいと思っています。

ゼミで幾度か発表する中で、先生や院生の皆さんから様々な意見をいただき、視点が広がったと同時にハードルも上がりました。360度の視点で自分の研究を見る必要があることに気づき、現在、暗中模索ながら、コミュニケーション研修や学習、キャリア形成を軸にした研究を進めていきたいと考えています。

リカレント教育の良さ
モヤモヤ感を言語化する場所

――大学院での学び直しもリカレント教育の一環ですが、リカレント教育についてどう思われますか。

安藤:1つの組織に長くいると、いろんな制約がつきまとうこともありますが、それを一旦外し、フラットな立場で自分のやっていること、やりたいことを見つめ直したり、他の人と会話できるというのが、リカレント教育の良さかと思います。

入学前は人権って、大学院で学ぶものなのかなという思いもありましたが、実際に来てみて、さまざまな形で学ぶ機会があると気づきました。

立原:自分の今の仕事に言語化できないモヤモヤ感を感じている人は、リカレント教育が合っているかと思います。“そのモヤモヤを言語化できる2年間をこの大学院で過ごしませんか”というメッセージが、この実務教育研究科にはあるかなと感じます。

佐藤:私自身、大学の学びは何十年も前の話で、最初はついていけるかどうか不安でした。ただ、そうした不安を1つずつ乗り越える中で、知的探究の楽しみが生まれてきました。学ぶって楽しいというのが、この歳でもあるのだということに気づいたのです。

もちろん“定年となった私が、これだけの投資を自分にして回収できるだろうか”という思いもありました。しかし、半年学んでみて、費用対効果ではないというのが実感です。普通なら出会うこともなかった様々な分野、エリア、年代の方と交流が広がり、議論ができるのはとても有意義です。忙しいですが、非常に充実した毎日を送っています。

――まさに人間は生涯成長し続ける〈学ぶ主体〉ということですね。皆さん、本日はありがとうございました。