文部科学省「土曜学習応援団」 クリエイティブ発想法で養う「未来を描く力」

文部科学省の「土曜学習応援団」の一環として、事業構想大学院大学の岩田正一教授が名古屋経済大学市邨高等学校にて「クリエイティブ発想法」の出前授業を実施した。生徒たちは、ワークショップも通じて、社会や自分自身の可能性を広げるための思考法を体験した。

岩田正一教授が名古屋経済大学市邨高等学校にて、「クリエイティブ発想法」の授業を実施した。

探究学習で育む
創造的思考力

企業や大学等が小中高の学校に多様な教育プログラムを提供する、文部科学省の「土曜学習応援団」。その活動の一環として、事業構想大学院大学は2025年6月16日、名古屋経済大学市邨高等学校ブライトコース1年生(全7クラス・約250名)を対象に、クリエイティブ発想法の授業を実施した。

土曜学習応援団は、子どもたちの豊かな教育環境の実現に向けて、多様な経験や技能を持つ民間企業・団体・大学等の協力を得ながら、特色ある教育プログラムを展開する文部科学省の取り組みである。地域と学校が連携・協働した教育活動を推進し、子どもたちに実社会での経験を踏まえた学習機会を提供することを目的としている。

文部科学省の「土曜学習応援団」ホームページにて、企業・団体・大学等のプログラムを紹介。

今回の授業は、同校の探究学習の一環として位置づけられ、現代社会で求められる創造的思考力の育成を目的とした。講師を担当した岩田正一教授は事業構想大学院大学で長年にわたり、クリエイティブ発想法を通じた創造的思考法の実践と教育に携わってきた専門家である。これまでにも多数の教育機関で授業を担当した経験を持つ。今回は未来に向かう高校生に対し、将来への夢と希望を抱きながら柔軟な発想力を身につけてもらうことを主眼とした教育実践が展開された。

授業は100分間で実施され、前半では、「クリエイティブ発想法って何?」と題し、クリエイティブ発想法の考え方と実践事例が説明された。

「クリエイティブ発想を行う上で大切なポイントは、『自由な発想を大切にする』『多様な視点を取り入れる』『失敗を恐れない』など、柔軟に考え、積極的にアイデアを試していくこと。柔軟な脳みそをつくり、自分の未来に夢をもつことが大切であり、みなさんもぜひ夢をみて妄想をしてほしい」と岩田教授は話した。

次に、事例を用いて、事業構想サイクルをわかりやすく説明。その中でも、「発・着・想」での気づきの重要性を伝えた。

「何に(事業テーマ)、どう(事業コンセプト)取り組むかを常に考え、社会の何に課題があるかを考えていくことが『クリエイティブ発想法』の基本となります」

続いて、55年前の大阪万博を振り返り、「55年前の人は何を夢みたのか」を紹介。動く歩道、ワイヤレスフォン、テレビ電話、リニアモーターカー、電気自動車など、現代では日常となっている商品やサービスが挙げられた。さらに、55年前のドラえもん、75年前の鉄腕アトムで描かれた未来も提示。50年以上先の未来をどう描き、社会としてその構想をどのように実現していったか、ストーリーを想像する時間となった。

また、身近なキャラクター、商品がどのように発想されたか、企業ブランディング、商品ブランディングがどのような着想から生まれたか、写真や映像を含めて紹介。愛知県のハンコ会社のCMは、ハンコの既存のイメージを払拭する内容であり、生徒からは「CMがハンコの硬い印象を変えたことに驚いた」「映像の表現の仕方によって、見た人の感情の動きが大きく変わるとわかった」とコメントがあった。

「私は、◯◯◯◯○。」から
自分の可能性を広げる

後半のワークショップでは、「私は、◯◯◯◯○。」という課題が出され、生徒一人ひとりが自身で考え、発表を行った。このワークは、自己理解を深めながら創造的な表現力を養うことを目的として、探究学習における主体的・対話的で深い学びの実現を図った。

後半のワークでは、「私は、◯◯◯◯○。」をテーマに考え、発表した。

ワークを行い、「最初はみな同じようなことしか考えていなかったが、一つのことからたくさんのことを連想して、それを言葉にする方法に気づくことができた」と、生徒は自身の気づきを話した。クリエイティブ発想法で重要とされる柔軟性を持った考え方を、ワークを通して体験することができた。

さらに、岩田教授から「私は、◯◯◯◯○。」で、さらに多様な発想の例も紹介。「たとえば、『私は、大人予備軍。』『私は、ゲーム王。』『私は、幸せ配達人。』と伝えたら、どんな人だと想像されるでしょうか。何を、どう伝えるのか。脳みそを柔軟に使い、脳を刺激すると、これまで考えなかった発想が連想され、伝える言葉も変わってきます」と解説を加えた。

ワークでは一部の生徒が発表し、聞いている生徒も多様な発想に驚きと発見が得られた様子だった。

夢を妄想して創造すること

授業を通して、生徒からは、「発想力をはたらかせるために、普段から柔らかく思考を使っていきたいと思った」「夢を妄想して創造することが大事だとわかった」「クリエイティブ発想は、今までの自分を破壊するような考えで、今までの自分とは違った自分に出会えるきっかけになるかもしれない」と、未来が明るくなる感想があがった。

担当の小瀧太一教諭からは「まさに今回の高校1年生の探究学習の入り口にふさわしい授業でした。生徒たちは今回の気づきからヒントを得て、柔らかい思考で考えることで学習を広げていくと思います。生徒自身が自信を持てたことも嬉しいです」と話す。

文部科学省「土曜学習応援団」の取り組みを通じて、大学の専門的知見と学校教育が連携することで、次世代を担う若者たちの創造的思考力の育成に寄与する契機となった。