特集2 地域を支える大学の創造 連携教職課程・文理融合・社会共創基盤
2040年の18歳人口は74万人と予測され、少子化は想定を上回る速さで進んでいる。専門職や現場人材の不足や大都市圏への人材流出が懸念される中、大学には地域社会を支える人材の育成が求められている。本特集では文科省の政策や大学等の取材から、大学の在り方を展望する。
2040年を見据えた
高等教育を取り巻く課題
2018年度に生まれた子どもは浪人・留年・休学もせずに進級・進学すると、2040年度に大学を卒業することになる。少子化が進む中で、中央教育審議会が2018年11月に取りまとめた「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」では、2040年の18歳人口は88万人に減少し、大学進学者数は約51万人と予測していた。しかし、現在では18歳人口は74万人、大学進学者数は46万と予測されており、さらに少子化が加速していることが分かる※1。
2025年2月、中教審が取りまとめた「我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~(答申)」は高等教育政策の目的を①「質」の向上、②「規模」の適正化、③「アクセス」確保の3つに整理し、「急速な少子化等を踏まえた高等教育全体の『規模』の適正化を図りつつ、それによって失われるおそれのある『アクセス』確保策を講じるとともに、『規模』の縮小をカバーし、知の総和を向上するために教育研究の『質』を高める」ことを掲げた。
2040年を見据えた高等教育を取り巻く課題として、産業構造と人材需給の変化による理工・デジタル系人材や現場人材の不足、育成人材のミスマッチが挙げられる。
経済産業省の資料※2によれば、2040年の需要数/供給数の需給ミスマッチに関して、事務職が437万人が供給過多の予測に対して、専門職は181万人、AI・ロボット等利活用人材は339万人、現場人材は260万人が不足すると予測している。
また、学歴別では、高卒(普通科)が32万人、大卒・院卒文系の76万人が供給過多の予測に対して、高卒(工業科)は91万人、高専卒は15万人、大卒・院卒理系は124万人の不足を予測している。
もう一つ懸念されるのが急激な18歳人口減少と大都市圏への流出に伴って、地域で医療・福祉、産業、インフラの維持などに不可欠な人材が不足することだ。2040年時点では都市部(1都3県)で193万人が余剰と予測される一方、それ以外の地方は194万人の不足が予測されている。
こうした状況を背景に、文部科学省は2027(令和9)年度概算要求で「地域社会を支える「持続可能な地域高等教育システム」再構築事業」(161億円)を計上、「実効性ある地域構想推進プラットフォームの構築・拡充」と「人口減少期における規模の適正化と持続可能な高等教育システムの再構築」の2事業を盛り込んだ。地域構想推進プラットフォームの構築・拡充や大学等連携推進法人への初の支援などを予定している。同事業について、文部科学省高等教育局大学振興課長の石橋晶氏に話を聞いた(➡こちらの記事)。
地域ニーズに応える
新たな連携基盤の構築
先の文科省事業にある「地域構想推進プラットフォーム」「大学等連携推進法人」。前者に関しては2040年における各地域の社会や産業のあるべき姿を見据え、高等教育機関の長、地方公共団体の長、地域産業界の代表者をはじめ、地域の産学官が様々なレベルで緊密に連携し、各地域の人材需要や産業界等のニーズを共有しながら、高校改革と連動した高等教育改革をはじめ、地域ニーズを踏まえた人材育成方策を協議・実行するための連携基盤を構築することを目的として、2026年度に「地域構想推進プラットフォーム」構築等推進事業を展開している。同年5月、各機関に対して公募を行った結果、37件の申請があり、20件の事業が選定された(図参照)。
同事業に採択された「やまがた社会共創プラットフォーム(やまぷら)」ではリカレント教育プログラム群「やまがた共創塾」や、中高生や保護者らに県内で学べる内容や卒業生の活躍を紹介し、地域で学び、働く将来像を考える機会を提供する「やまがた進学大交流フェスタ」など展開している。
山形大学理事・副学長で「やまぷら」戦略会議委員長を兼務する會田淳士氏に取り組みと今後の展望を聞いた(➡こちらの記事)。
後者の「大学等連携推進法人」は大学の設置者等を社員とし、連携に係る協議調整や連携事業を一元的に実施するなどの業務を行う一般社団法人に対して文部科学大臣が認定する制度だ。現在、12法人が認定されている。認定を受けると、FD(教員研修)・SD(職員研修)の共同実施、物品・ソフトウェアの共同調達など運営の効率化、連携開設科目の開設、連携開設科目を活用した教職課程の共同設置等の教学上の特例措置を設けることが可能となる。
一般社団法人四国地域大学ネットワーク機構は2021年3月、四国の5国立大学である徳島大学・鳴門教育大学・香川大学・愛媛大学・高知大学が設立した。2022年3月には文部科学大臣から、「大学等連携推進法人」の認定を受けた。
同機構の連携教職課程は2023年度にスタート。現在は5大学が美術(中・高一種)・家庭(中・高一種)・情報(高校一種)の3教科・46科目を連携して開設している。 四国地域大学ネットワーク機構代表理事で鳴門教育大学学長の佐古秀一氏に話を聞いた(➡こちらの記事)。
分断構造からの転換へ
文理横断の学部再編等を推進
文科省では、日本固有の文系・理系という分断構造からの転換を目指している。「大学・高専機能強化支援事業」(成長分野転換基金)では「大規模文理横断転換枠」として、文理横断の学部再編等を行う公私立の大学の学部・学科(理工農の学位分野)を対象に、「新設理系学部の教員人件費」「土地取得費」など必要な経費について40億円程度の支援枠を新設している。
文科省の資料※1によると、首都圏・大都市圏に所在する、長い伝統を有し選抜性の高い私立大学11大学が理系転換・文理分断からの脱却を具体的に構想し、基金活用の意向を表明している。
2023年4月に公立大学として新たにスタートした旭川市立大学は2026年4月に地域創造学部を開設。大きな特長がデータサイエンスと文理融合教育、PBL型教育を重視している点だ。地域創造学部長・教授の須田孝徳氏に、カリキュラムの特色と地域活性化への展望を聞いた(➡こちらの記事)。
本特集では「地域を支える大学の創造」をテーマに、地域社会を支える持続可能な大学の在り方を、どの様に創造すべきか。その観点から、文部科学省の政策や分散協働型の広域連携、社会共創基盤の構築、文理融合などに焦点を当て、今後を展望した。地域社会における大学の在り方を模索する自治体・産業界・教育機関などの一助となれば幸いだ。
※1 文部科学省「2040年を見据えた高等教育改革の方向性について〜大学等の機能強化と量的規模適正化〜」(2026年10月7日更新)
※2 経済産業省産業構造審議会経済産業政策新機軸部会「2040年の就業構造推計(改訂版)について」(2026年3月5日)
