科学的根拠に基づくいじめ対策が健全な発達をもたらす

昨年10月、文部科学省より公表された「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、いじめ認知件数が61万件を超え過去最多となっている。子どもの発達科学研究所所長の和久田学氏に、科学の観点からいじめの原因と防止策について聞いた。

経験則や勘に頼るのではなく
学校環境を安定化させる観点を

和久田 学

和久田 学

公益社団法人子どもの発達科学研究所 所長・主席研究員
静岡大学教育学部卒業。特別支援学校教諭として20年以上現場で勤め、その後科学的根拠のある支援方法や、発達障害、問題行動に関する研究をするために連合大学院で学び、小児発達学の博士学位を取得。2012年より現職、子どもの問題行動(いじめや不登校・暴力行為)の予防・介入支援に関するプログラム・支援者トレーニング・教材の開発に取り組む。大阪大学大学院招聘教員、一般社団法人子どもいじめ防止学会理事、著書に『学校を変える いじめの科学』(日本評論社)など。

子どもの発達科学研究所は、大阪大学・浜松医科大学・金沢大学の三大学連携(当時)の子どもの発達研究センター設立の流れの中で立ち上げられた。発達障害・不登校・メンタルヘルス・自殺などを調査し、教育現場の問題を科学的に解決するためにデータを収集、研究を進めている。

例えば、「学校風土いじめ調査」では、子どもたちに学校生活の実態調査を行い、「いじめ」や不登校などとも因果関係のある「学校や学級の風土」を把握。調査で明らかになった諸課題に対して、そのデータを基に学校現場で利用できる支援プログラムの開発や、エビデンスに基づく学校・学級経営の支援といった活動を行っている。

昨年、いじめ認知件数は文部科学省の調査結果で過去最多を記録した。特に重大事態は700件を超え、前回調査から37%増という深刻な状況にある。この状況に同研究所の所長を…

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