地域活性を担う人材を 産官学パートナーシップで推進するために

国立大学法人岡山大学と学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学は、SDGs をはじめ、持続可能な社会に向けた取り組みを行う岡山地域の実績や展望をもとに、WEB セミナー「SDGs とポストコロナ」を開催。岡山県外や海外からの参加もあり、賑わいを見せた。

本年7月に策定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」では、雇用維持と事業の継続、経済活動の回復を図るとともに、DX を推進しつつ、東京圏への一極集中、人口減少・少子高齢化等の大きな課題への取り組み強化が掲げられている。

そこで「高度な知の創成と的確な知の継承」を建学の理念に、学都構想を実現すべく地域の知の拠点として、大学と地域の協働を推進する岡山大学(岡山県岡山市)と、全国で産官学の架け橋となり地域活性に取り組む事業構想大学院大学(東京都港区)が、ポストコロナの持続可能な地域・人材育成を考察することを目的に掲げ、本セミナーを開催した。

第一部では、地域活性に向けた人材育成についての取り組みや展望を話し、第二部では、これから地域活性を担う人材の育成をテーマに、パネルディスカッションを行った。

岡山地域活性のための、教育機関の役割と展望

槇野博史

岡山大学・槇野博史学長

教育機関の役割として「共育・共創」を掲げた

第1部は、岡山大学の槇野博史学長による「岡山地域活性のための教育機関の役割と展望」と題した講演で始まった。

岡山大学では、槇野学長が掲げた2030ビジョンの下、SDGs 大学経営を教育機関において先進的に進めている。地域の望ましい未来に向けて、その地域独自の歴史・文化・自然環境などの地域資源に根差し、様々な地域課題に取り組む重要性を説いている。SDGs が、「今あるもの」と「あるべき姿」の「架け橋」としての役割を果たすとしている。

具現化に向けた取り組みとして、産学共創加速のためのオープン・イノベーション機構の設置や、来年4月に設置される新生「工学部」を中心とした工学系教育改革について言及。コロナ禍における試練を克服し、「共育・共創を通じた地域循環共生圏」の達成を目指すとした。

田中里沙

事業構想大学院大学・田中里沙学長

イノベーション人材育成の重要性を説く

ついで、事業構想大学院大学の田中里沙学長は「地域活性のための事業構想」をテーマに講演した。複雑で不透明な社会を生きるために求められる人材として、「理想とする構想を考え、実行に向けて構想計画を実現できる人材」をあげた。そのために必要なプロセスとして、経営資源の発見・発掘、その磨き上げの上で新たな価値を生み出す、という点に言及した。企業においても、地域においても同様のことであり、「地域資源を磨き直す」の具体的な事例として、佐世保の九十九島大学や、同大学院と農林水産省の連携事業である「ランナーズ・ヴィレッジ™」を挙げながら、地域資源を基盤に新たな価値を創り出すことの必要性と可能性について説明した。

岡山地域の産業界の状況と、産学連携の実践・期待

松田久

岡山商工会議所 松田久会頭

「人材確保に重要なのは失敗を許容できる環境」

第3講演は、岡山商工会議所会頭の松田久氏による「ポストコロナと人材の育成」。新しい日常への対応でテレワークの普及などが語られるが、東京(67%)・大阪(52%)の都市部に比べて、岡山は20%と、テレワーク導入率が低い現状を指摘した。また、マネジメント力などを備えた人材が都市部に集中している事実を共有した上で、今後の地域企業の強化は人材の育成・確保にあるとした。その点において、教育機関との連携に可能性があり、地域のフィールドワークや地域資源を活かした新製品開発・ブランド化を産学連携で行っていくこと等への期待を示した。

野上保之

岡山大学大学院 自然科学研究科
野上保之教授
「地域課題をいかに楽しめるか」

第4講演は、岡山大学大学院自然科学研究科の野上保之教授が登壇し、具体的な取り組みとして、岡山県寄付講座「おかやま IoT・AI・セキュリティ講座」を例に説明。学生が既存の技術の組み合わせで、必要なシステムを短期間で構築し、活用している現状を伝えつつ、技術研究のみならず、経営・現場にどう活用できるかという視点の重要性を説いた。

また、岡山県寄付講座では、定員を遥かに超える応募があったことから、企業における IoT・AI を安全に活用するニーズの高さが伺え、今後の産学連携の発展に期待を寄せた。

地域活性を担う人材を、育成するには

那須保友

岡山大学 理事(研究担当)
那須保友副学長
パネルファシリテータを務めた

川山竜二

社会情報大学院大学 川山竜二教授
実務家教員の重要性を解説

横井篤文

岡山大学 特命(海外戦略)担当
横井篤文副学長が総合司会を務めた

続く第2部では、第1部での講演者4名に加え、社会情報大学院大学の川山竜二教授を加えた5人によるパネルディスカッションを実施。岡山大学の那須保友副学長がファシリテーターを務め、「地域活性を担う人材育成に向けて、地域活性を担う人材を育成するには」をテーマにさまざまな議論が飛び交った。

はじめに教育機関の役割について、連携の中での実践的な教育・研究の提供に関する議論が展開された。

「問題・課題ならびに、その解決の地産地消が必要で、その中で地域の教育機関と産業界が共創で進めていける(野上氏)」と自身の担当する講座の経験を含め論じると、産業界からの期待として松田氏からは、「社会人になってからも教育をし続けることが必要で、教育機関と産業界が個別ではなく、連携し合うことが大切」と、継続的な教育の重要性を展開した。

続いて、有能な人材を集めていくための議論においては、「失敗を許容できる社会(松田氏)」「寛容性の高さ(川山氏)」「地域課題を楽しむ(野上氏)」といったように、挑戦しやすい場づくりについての意見が続いた。

オンライン上の受講者は岡山県内にとどまらず、県外、海外からも参加があり、地域の未来・活性化に向けて熱心な意見が寄せられた。

開催概要 日程:10月7日 会場:岡山大学