共に学ぶ機会を創出し、地域住民同士の連帯を実現 社会教育士の役割と課題

近年、少子高齢化に伴う地域課題の深刻化や、気候変動の影響による自然災害の激甚化などを受け、地域コミュニティの重要性が高まっている。町おこしや防災、相互扶助のためには、地域住民の繋がりが欠かせない。そのような中、地域コミュニティを育むとして注目を浴びているのが「社会教育」である。

社会教育とは、学校と家庭以外のあらゆる場で行われる教育を言う。例えば公民館や図書館、青少年施設で提供される教育である。これらに典型的なように、社会教育は地域住民を対象とした教育活動であり、人々は共に学ぶことで、絆を深めることができる。実際、昨年6月に閣議決定された第4期教育振興基本計画は、社会教育について、人々が協力し合える関係を作り出し、地域コミュニティの形成に重要な役割を果たすものとしている。

社会教育を担う専門職には「社会教育主事」がある。都道府県および市町村の教育委員会事務局に置かれ、行政の立場から、地域の学習ニーズの把握やそれにもとづく教育計画の立案などを行う職である。

社会教育主事となるためには「社会教育主事任用資格」を取得する必要がある。この資格は、文科大臣の委嘱を受けた教育機関にて「社会教育主事講習」(以下「講習」)を、もしくは大学にて「社会教育主事養成課程」(以下「養成課程」)を修了することで付与される。

その受講者は現状、社会教育主事となるよう指示された地方公共団体職員らが多くを占めている。しかし近年、CSRの風潮の中で企業が、またSDGsの流れの中でNPOらが市民向けに教育活動を行うなど、社会教育の提供主体は、従来の行政から多様化しつつある。

講習や養成課程は、そのような民間における社会教育の従事者、さらには学校教育の従事者にとっても非常に有益な内容となっている。それに、社会教育の専門的な知見を備えた人材が増えることは、何より社会全体にとって有益である。

そこで国は2018年、講習・養成課程の魅力を高め、受講者を増やすべく関係規則を改正。修了者に2020年度から「社会教育士」の称号が与えられるようにした。

社会教育主事が行政の立場から福祉、防災、まちづくりなど地域コミュニティに関わる分野と社会教育を俯瞰しつつ繋ぐ「地域全体の学びのオーガナイザー」であるならば、社会教育士は民間において、社会教育の知見にもとづき自身の業務や活動に学びの要素を加え、人々を支援する「各分野の専門性を様々な場に活かす学びのオーガナイザー」であると、文科省は整理している。

「社会教育士」の称号は昨年度だけで2,521人に与えられ、累計7,047人に及んだ。しかしまだ十分とは言えない。中教審は6月、「社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方について(最終まとめ)」を発表し、その中で「社会教育人材をハブにした人づくり、つながりづくり、地域づくりを図っていくためには […] 社会教育人材の質的な向上・量的な拡大を図ることが極めて重要である」と述べている。今後、この2つに向けてどのような取組みが行われるのか、注視していく必要がある。