「労働市場の未来推計2035」が発表 日本の労働力不足が深刻化
パーソル総合研究所と中央大学は今年10月、共同研究として取り組んできた「労働市場の未来推計2035」の結果を発表した。2035年にかけて、1日あたり1775万時間(384万人相当)の労働力が不足すると指摘しており、解決への取組みが求められている。
労働力不足を「人手」ではなく
「時間」で捉える
2018年に発表した「労働市場の未来推計2030」から約6年が経過し、労働市場には女性やシニア、外国人など多様な就業者が増加している。また、コロナ禍を経て、リモートワークや副業・兼業といった多様な働き方が浸透するなど、労働市場は大きく変化しつつある。
こうした状況を踏まえ、より実態に即した労働力需給を把握するため、パーソル総合研究所と中央大学が今年10月に発表した「労働市場の未来推計2035」では、労働力不足を「人手」ではなく「時間」で捉え、対象を「日本人」だけでなく「外国人」も含めることで、より精度の高い推計を目指したという。
「労働市場の未来推計2035」の主なトピックは下記のとおり。
・2035年、日本では1日あたり1775万時間の労働力不足が見込まれる。これは、働き手384万人分の労働力不足に換算され、2023年よりも1.85倍深刻になる。
・就業者数(労働供給)は、2023年時点の6747万人に対して、2030年は6959万人、2035年には7122万人と増加していく見込み。内訳をみると、60歳未満の就業者は減少傾向であり、60歳以上の就業者は増加傾向。
・性年代別にみた2035年の労働力率(労働参加率)は、2023年時点から全体的に上昇していく見込み。女性の労働力率の上昇幅が大きく、特に女性60代は20ポイント以上、上昇する見込み。
・外国人就業者数(労働供給)は、2023年時点の205万人に対して、2030年に305万人、2035年には377万人と増加していく見込み。
・就業者1人あたりの年間労働時間は、2023年の1850時間に対して、2030年に1776時間、2035年には1687時間と減少していく見込み。
・産業別でみると、最も労働力が不足するのは「サービス業」で532万時間不足/日となり、次いで「卸売・小売業」が354万時間/日、「医療・福祉」が226万時間/日の労働力不足。
・職業別でみると、最も労働力が不足するのは「事務従事者」で365万時間不足/日となり、次いで「専門的・技術的職業従事者」が302万時間/日、「サービス職業従事者」が266万時間/日、「販売従事者」が245万時間/日の労働力不足。
「労働市場の未来推計2035」プロジェクトでは今後に向けた提言として、1日あたり1775万時間の労働力不足が見込まれることに対し、「この問題を解決するための主な方向性は、『①労働力の増加』と『②生産性の向上』の2点である。具体的には、①シニア就業者やパートタイム就業者、副業希望の就業者など、多様なショートワーカーの『働きたい』に基づく労働市場の整備、②人的資本投資や新たなテクノロジーを活用した労働生産性の向上が必要。労働力不足が生じるメカニズムをおさえた上で、それぞれの型に合った施策が検討されるべき」としている。