部活動改革の課題を越える つくば市で始まった新たな挑戦

チェーロスポーツグループ(保育園・学童・クラブ)を運営する株式会社エンボス企画は今年9月、つくば市で部活動改革事業をスタートした。エンボス企画では部活動の地域移行に伴う課題と、求められる取組みについて、どのように見ているのか。代表の小山勇気氏に話を聞いた。

部活動改革の現場に間近で接し、
課題と解決法を学ぶ

小山 勇気

小山 勇気

株式会社エンボス企画 代表取締役
筑波大学体育専門学群卒業。筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。筑波大学蹴球部で4年間選手としてプレーする傍ら、体操コーチング論研究室にて大学院までの計4年間学ぶ。また、学生コーチとして6年間、小中高の児童・学生に指導、後にNPO法人つくばフットボールクラブにて、5年間指導者として、幼児〜社会人トップチーム(なでしこリーグ)全てのカテゴリーを歴任。2020年7月、株式会社エンボス企画を設立。

茨城県つくば市では、谷田部東中学校が2018年から平日の部活の一部を外部に委託するなど、全国でもいち早く部活動改革が取り組まれてきた。そのつくば市において、2022年後期に新たな部活動改革事業がスタートする。

今年9月以降、つくば市の公立小中一貫校「みどりの学園義務教育学校」は部活動を地域スポーツクラブに移管。2020年設立の筑波大学発ベンチャー、エンボス企画が平日1回と土日1回の週2回、サッカーや野球、陸上、バレーボール、バスケットボール、テニス、剣道、卓球、さらには吹奏楽部や美術部、科学部などについて、部活度の運営を担う。保護者が負担する会費は月3850円だ。

エンボス企画の代表、小山勇気氏は幼少期に体操、小中高ではサッカーに熱中。筑波大学に進学後もプロサッカー選手を目指すとともに、大学ではスポーツを通した幼児教育の実現のために体操コーチング論を研究した。大学院修了後は女子サッカーの指導者となり、NPO法人つくばフットボールクラブ(つくばFC)において、なでしこリーグ3部に所属するクラブの監督を務めて2部に昇格させる実績を残した。

前述の谷田部東中学校の部活動改革において、つくばFCは事務局の機能を担っていた。小山氏は直接の担当ではなかったものの、谷田部東中学校での部活動改革を間近で見てきた経験があり、それがエンボス企画の事業にもつながっている。

「部活動改革に際して、どのような課題が起きるのかを目の当たりにし、それを解決する仕組みを提供することが私たちの事業の根幹になっています」

部活動の地域移行の実現に向けて、外部の指導者をどのように確保するのか、またその財源をどうするのか、人的・資金的なリソースは大きな課題となる。さらに小山氏によると、改革の現場の近くにいたからこそ見えてきた課題として、事務作業の煩雑さがあるという。

「従来であればプリント1枚の配布で済んでいたものが、外部の人が携わるとなると、そう簡単にはいかなくなります。当日の変更を伝えるのも大変ですし、部活動を欠席した生徒が学校も欠席したのか、それとも登校はしたけれども部活には参加せず帰宅したのかなど、状況把握や情報共有にも苦労することになります」

さらに、会費の徴収などに際しても手間が発生する。

「万が一、金額が合わないとなれば、出欠の管理ミスや連絡ミス、保護者や生徒の勘違いなど、どこに原因があるのかを突き止めるのは容易ではありません。そもそも膨大な事務作業を誰が担うのか、外部指導者がそこまでやらなければいけないのか、課題は山積です」

人や資金の課題を解決、
ICTで事務作業を効率化

エンボス企画はチェーロスポーツグループとして、スポーツに特化した認可外保育園やアフタースクール(学童)、多種目・多世代の総合型スポーツクラブを運営している。

エンボス企画はチェーロスポーツグループを運営し、つくば市においてスポーツに特化した認可外保育園やアフタースクール(学童)、多種目・多世代の総合型スポーツクラブを展開している。そうした実績のうえに、部活動改革事業に進出した。

小山氏がこれまでのキャリアで培ってきた人的ネットワークにより、質の高い指導者を集められる。

「地域に有力なスポーツ団体があったとしても、単一種目のクラブだったりすると、部活動の委託先としては役割が限られますし、同競技の他のスポーツ団体との兼ね合いを調整する必要が出てきます。一方、私たちは多岐にわたる競技のメンバーを揃えていますし、保育園・学童・クラブで地域に根差したスポーツ事業を展開しているため、他のスポーツ団体からも理解を得やすい立ち位置にいます。また、トップクラスの外部指導者の協力も得られる予定です」

普段、学校外でスポーツの指導を行い、収入を得ているコーチやインストラクターに対して、部活動に協力してもらうには相応の資金が必要になる。そうした資金の確保に向けて、柔軟にスピーディに関係各所に働きかけていけるのは、ベンチャー企業ならではの強みだという。

「エンボス企画の部活動改革事業は、私たちが人も資金も集めるので、行政側にとっては負担が少ないモデルです」

事務作業については、筑波大学発ベンチャーであるリーバー社が提供するスマートフォンアプリ「LEBER」と連携し、ICT を活用して徹底的に効率化していく。LEBERは、感染症拡大を防ぐ健康観察ツールとしてつくば市内の市立小中学校で採用され、毎日の健康観察と出欠席の管理ツールとして活用されており、そのシステムを部活動事業にも応用する。

「保護者への連絡や管理はオンラインで完結し、また、学校の先生方との情報共有もしやすくなっています。会費の支払いは最初にクレジットカード情報を登録するだけなので、保護者の方々にとっても使いやすい仕組みです」

みどりの学園義務教育学校の部活動改革の開始に先立ち、エンボス企画は7月に保護者向け説明会を開催した。そこでは会費の金額などよりも、指導の質などに関する質問が多かったという。

「みどりの地区は急激に人口が増えており、教育への関心が高いご家族がたくさん住んでいます。また、私たちは保育園・学童・クラブで地域とつながってきた実績があり、それが保護者への理解にもつながっていると感じます」

みどりの学園義務教育学校は2018年に開校した新しい学校であり、eラーニングアワードで文部科学大臣賞を受賞するなど、ICT先進校として知られる。新しい取組みを柔軟に受け入れる土壌があり、エンボス企画は同校で部活動改革事業のモデルを確立していく考えだ。

「競技力の向上や保護者の満足度など、目に見える数字でも結果を残していきたい。また、収益面でも持続性のある運営構造を実現したいと考えています」

子どもたちが生涯にわたってスポーツに親しむ原動力となるように、スポーツの楽しさを伝え、部活動への多様なニーズに応える。エンボス企画はみどりの学園義務教育学校をモデル校として、今後、全国へと部活動改革事業を広げていく計画だ。