中教審、少子化時代の高等教育の望ましいあり方について答申

中央教育審議会は2月21日、答申「我が国の『知の総和』向上の未来像――高等教育システムの再構築」を発表した。少子化に対応し、学術の衰退や教育機会の地域格差を招くことなく高等教育の規模縮小を図っていくための方策を提言している。

少子化に合わせ、弊害を回避しつつ
高等教育の規模を縮小するには

大学進学率の伸長に伴い、今でこそ微増している大学進学者数は、しかし近い将来、少子化と人口減少の進行により大幅な減少に転じると予想されている。

国立社会保障・人口問題研究所の推計(2023年7月発表、2024年11月更新)によると、2021年に60.9万人であった大学進学者数(外国人留学生は除く)は、2035年には57.0万人、2040年には44.0万人にまで減少するという。

それに伴い、定員充足率(現在の入学定員が維持された場合)も、外国人留学生が増加すると仮定しても、2021年に100.6%であったのが、2035年には93.4%、2040年には72.8%にまで低下するという。

このため現在、個々の機関の再編・統合や縮小、撤退を通じた、高等教育全体の規模適正化が求められている。

しかし単純な規模縮小では、学術の衰退や教育機会の地域格差を招くおそれがある。そうした弊害を引き起こすことなく、高等教育の規模最適化を図るにはどうしたらよいのだろうか。

2023年9月、盛山正仁・文部科学大臣(当時)は中央教育審議会に、同様の趣旨の諮問を行った。2018年11月の中教審答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」において示されたビジョンを踏まえつつ、その先のあり方を提示することを求めた。

それを受け中教審は、大学分科会(分科会長:永田恭介・筑波大学学長)および分科会内に設置された「高等教育の在り方に関する特別部会」(委員:永田恭介、吉岡知哉・独立行政法人日本学生支援機構理事長)を中心に議論を実施。それにもとづき2月21日、答申「我が国の『知の総和』向上の未来像――高等教育システムの再構築」を発表した。

答申は、高等教育の役割は「人の数×人の能力」が決定する「知の総和」の向上にあるとした上で、少子化の中で高等教育がその役割を引き続き果たしていくためには、何が必要であるのか提言している。

答申によるとそれは、個々の高等教育機関における教育研究の「質」を高めつつ、高等教育全体の「規模」を縮小することであるという。その際、地方において高等教育への「アクセス」が困難とならないよう、配慮することも重要であるとしている。

質の向上については、「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」において打ち出された「学修者本位の教育」のさらなる推進や新たな質保証システムの構築を通じて、また規模縮小については、設置認可審査の厳格化や再編・統合の推進、縮小・撤退への支援を通じて、そしてアクセスの確保については、遠隔・オンライン教育の推進などを通じて実現するのが望ましいとしている。

答申は4章立てで、全64ページ。文部科学省ホームページから読むことができる。