地元愛でグローバルブランドを育む「南部美人」の酒造り職人育成法

醤油醸造で培った技術を活かし、1902年から酒造りを始めた南部美人。現在、IT 企業と AI を活用した技術継承に取り組み、杜氏がクリエイティブな仕事に注力できる環境を整えることで、世界から評価される酒造りを目指している。蔵元の久慈浩介氏に人材育成を軸とした未来戦略を聞いた。

「季節労働者×専門分業」を、「正社員×シャッフル」へ転換

久慈 浩介

久慈 浩介

株式会社南部美人 代表取締役社長、五代目蔵元
1972年岩手県生まれ。東京農業大学醸造学科卒業後、「南部美人」の総代理卸での研修を経て家業に入る。製造部長として手掛けた大吟醸が全国新酒鑑評会で金賞を獲得したのを皮切りに、「INTERNATIONAL Wine CHALLENGE 2017」の SAKE 部門で世界一に輝くなど、国内外のコンクールで高い評価を得ている。2013年より現職。

冬の農閑期の出稼ぎ仕事として発展した杜氏制度は、就農人口の減少とともに20、30年前からじりじりと衰退し、技術者の不足が酒造業界全体に暗い影を落とし始めている。

「経営者自らが『オーナー杜氏』となって付加価値を高めることに成功した十四代(山形県)のような例もありますが、仕方なく体に鞭打って杜氏を兼任している経営者が少なくないと思います。小さな蔵なら家族とアルバイトだけでなんとか回していけるでしょうが、大きなところは蔵人と呼ばれる手足となって動く職人がいないと成り立ちません。職人仕事は一人前になるのに時間がかかるため、定年退職後のセカンドキャリアとして考えることは…

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