カーボンニュートラル・DXをテーマに産学連携のマッチングの場を提供

大学支援フォーラムPEAKSでは2021年度、3回シリーズで『PEAKS産学連携パートナーシップ構築セミナー』を開催。2021年12月20日に開催した第3回は、『カーボンニュートラル』『DX』をテーマに、産学それぞれのプレゼンテーションを通じ、産学連携のマッチングの場を提供した。

内閣府の大学支援フォーラムPEAKSは、新たな価値創造を志向した産学連携のきっかけを提供するため「PEAKS産学連携パートナーシップ構築セミナー」を全3回で開催。2021年12月20日に開催した第3回では、産学のプレゼンテーションを通じ、産学連携のマッチングの場を提供した。冒頭、ファシリテーターを務めた九州大学副学長・主幹教授の佐々木一成氏は「大学は様々なチャレンジをできる場であり、イノベーションのハブになりえる場です。地域で大学を核に経済成長を起こしていくためのきっかけとするべく、産学ともにお互いの技術、研究成果を発信していただければ」と話した。

カーボンニュートラル編

佐々木 一成

佐々木 一成
九州大学 副学長・主幹教授、水素エネルギー国際研究センター長

続いて「カーボンニュートラル」(以下「CN」)をテーマに、プレゼンテーションが行われた。以下、発表の要約を紹介する。()内は発表者。

技術導入型で大学との連携を
アステナホールディングスは「3つのサステナビリティ戦略」実現の一歩として2021年6月に石川県珠洲市に本社機能の一部を移転、少子高齢化と過疎化が進む地域でSDGs達成を目標とした新事業で地方創生の実現に挑む。社会課題解決の手法の一つとして想定する〈技術導入型〉について、大学等との連携を深めていく。(岩城 慶太郎:アステナホールディングス代表取締役社長CEO)

地域とCNを組み合わせた連携を
ウフルは企業のDX支援のほか、自治体と連携した「J-クレジット創出・活用」に挑む。CO2排出削減量、まちづくり、AIモデル構築に関する知見は少なく、大学との連携を模索。地域とCNを組み合わせた部分で、大学と共同で挑戦できるテーマを模索していきたいという。(原山 青士:ウフル経営企画室事業推進担当)

UFBを使った環境保全型農業
カクイチはウルトラファインバブル(UFB)を使ったアクアソリューション事業を紹介。1マイクロメーター未満の泡であるUFBを活用し、化学肥料を極力減らした完全保全型農業の支援を目指す。こうした独自技術を活用し大学との組織間連携等を進めながら農業分野のCNの取組みを進めていく。(奥山 祐一:カクイチ アクアソリューション事業部)

高等教育機関との共創―CN編
グローバルに多くの大学との連携を進めるシスコ。CNでは、英国、シンガポールなどで共創プロジェクトを実施。広く対外的な発信が可能であること、シスコの最新テクノロジー(5G・マルチクラウド・サイバーセキュリティ等)を利用し実証可能であること等を条件に、日本の高等教育機関との連携を進める。(田村 信吾:シスコシステムズ公共事業 事業推進本部本部長)

CCUSソリューション開発の連携を
GHG排出量削減目標として2050年度に①Scope1,2は実質ゼロ、②バリューチェーン全体で排出量<削減貢献量を掲げる東洋紡。達成のカギはCCUS等のCNの取組み。CCUS分野はVOC濃縮装置、バイオ生産技術等に強みを持つ一方、CO2回収装置(吸着材等)やCO2転換技術(バイオ転換等)は不足領域。同社はCCUSソリューションの開発に取組む連携先を募集。(谷口 信志:東洋紡イノベーション戦略部みらい戦略グループ)

バイオ水素等の生産技術
東京農業大学では、嫌気性細菌を活用し、バイオ水素とバイオ短鎖脂肪酸の生産を維持できるシステム「乳酸駆動型嫌気発酵」を開発。今後、実社会消費量を生産するための生産工程のスケールアップと評価、バイオ短鎖脂肪酸の精製システム開発を予定しており、共同研究相手を探している。(大西 章博:東京農業大学応用生物科学部醸造科学科)

教育研究プラットフォームを構築
同志社大学は2021年6月、「同志社大学カーボンリサイクル教育研究プラットフォーム」を構築。同学と産学官の組織連携による迅速な研究実施と社会実装の実現を目指す。また同大学発のCO2分解技術を要素技術とし「カーボン・エネルギーリサイクルバンク」「カーボンエネルギー総合取引サービス」を提案。こうした共同研究開発にプラットフォームを活用していく。(後藤 琢也:同志社大学 学長補佐・理工学部教授)

脱炭素社会創造プロジェクト
東海国立大学機構は「東海地域の好循環モデル」を公表。地域創生の中核拠点として地域の構造変革を目指す。また「カーボンニュートラル推進室」を設置。「脱炭素社会創造プロジェクト」と銘打ち、幅広い組織との連携を模索している。特に、東海の様々な地域特性を活かした幅広い研究課題に関心のある対外組織との連携を期待している。(佐宗 章弘:東海国立大学機構名古屋大学機構長補佐・副総長(産学官連携担当))

DX編

後半は「DX」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

高等教育機関との共創―DX編
シスコは、学内のデジタル化、外部との共創活動、DX人材の育成で高等教育機関のデジタル化をサポート。大学との共創プロジェクトでは、スマートキャンパスの事例として、早稲田大学が進める「デジタルキャンパス構想」の実現への支援を行っている。同社は今後、こうした連携を日本の高等教育機関で展開していく。(田村 信吾:シスコシステムズ公共事業 事業推進本部本部長)

産学連携によるデータ活用教育
ヤフーは、ヤフーのビッグデータを簡易に可視化できる「DS.INSIGHT」というサービスを提供。2021年7月には、教育機関で教育素材や研究に利用できるライセンス「DS.INSIGHT for Academy」を提供開始。データ活用のコンピテンシー習得手段として活用でき、既に大学での導入事例もある。(大屋 誠:ヤフー データソリューション事業本部パブリックエンゲージメント部部長)

デジタルで「場」を取り戻す
関西学院大学の江原氏は、現今のDXプロジェクトは中間組織の不足等により、部分最適を超えたコミュニケーションが難しいとし、実務や社会実装の経験があり、国際経験が豊富で、組織や専門分野を超えた越境的な研究者(大学人)が必要ではないかと指摘。こうした人材を通して、デジタル化の強化+〈場〉としての学校の活性化が進められるのではないかと述べた。(江原 昭博:関西学院大学教育学部)

学際共創研究の推進を
「ICT行動変容研究ユニット」を立ち上げた九州大学。行動変容に関わる様々な研究領域の研究者が協力する体制ができており、組織対組織の連携が可能に。現在、中長期で連携できる企業、教員だけでなく学生に価値を見出し、共創の場を提供してくれる企業とのマッチングを望んでいる。(荒川 豊:九州大学・大学院システム情報科学研究院・教授)

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