香川大学における出張精算処理業務の改善[AD]

香川大学は、業務システムの内製開発など、DX推進に向けた様々な取り組みを行っている。出張精算処理業務においても業務課題を分析し、改善に向けた取り組みを開始している。本講演では、出張精算処理業務の改善をどのような考え方で進めているのか、今後の方向性など発表した。

DXラボがDX推進のエンジンに
大学での内製開発などを推進

香川大学情報部情報企画課と情報システム課を兼務する末廣紀史氏は、学内業務のDX推進に取り組んでいる。香川大学はキャンパスが4つに分散しており、同様の業務を行う職員が各地に配置されている。このため各キャンパス・部門でローカルルールが作られ、業務が複雑化する原因になっていた。そこで2021年、オンラインの世界で一つのキャンパスになることを目指す「香川大学デジタルONE戦略」を策定した。

この戦略を推進するエンジンになったのが教職学協働のDXラボだ。DXラボでは「業務UX調査」「業務改善アイデアソン」「業務システム内製開発」「業務データ分析」「システム開発/データ分析ハンズオン」の5つの取り組みを行なってきた。

ハンズオンに関して末廣氏は「『本学でもやってほしい』『企業でも活用できる』などのお声もいただき、のべ29回、954人以上の学内者、他大学、企業の方々がハンズオンを受講しました」と話す。学内のハンズオン受講者を中心にDX推進の機運が高まり、香川大学は非情報系事務部門の職員を「デジタルONEアンバサダー」に任命した。「デジタルONEアンバサダー」は2022~23年の間に179のシステム内製開発している。

同大学では内製開発が推進されており、プログラミングをほとんどせずに迅速にシステム開発できるローコード・ノーコードツールを活用している。実際に「通勤届申請システム」や「落し物管理システム」が開発・運用され、他大学にも導入されているという。

情報システムを用いた業務改善は
3つのステップで考える

香川大学の出張精算処理業務は、出張者・部局事務・本部経理課の3者が関わる。部局事務が出張者からの申請に基づき旅行命令伺を作成、部局承認者が決裁、出張後に必要書類をそろえると本部の経理課が旅費決裁、会計処理をする。申請データの質を高め、部局ごとの運用の差異を解消する必要があり、「出張申請システム」を内製することにした。

香川大学では、仮説検証型アジャイル開発で、最小限の機能を有するMVPを、ローコード・ノーコードツールを用いて迅速に内製開発できる体制を整えている。そこで、まず出張申請処理業務に関わるステークホルダーの体験を可視化・分析し、バージョン1を開発した。出張者が必要事項を入力すると、部局の事務担当者に申請が通知、案件ごとにTeamsのスレッドが自動生成される。用務資料・領収書を保存するフォルダも同時に作られ、出張者と事務担当者間のコミュニケーションコストを削減した。

「情報システムを用いた業務改善のプロセスは段階的に捉える必要があります。規則・規定の見直しを通じて業務プロセスを見直し、ステークホルダーと合意形成をするステップ1、ローコード・ノーコードツールでシステムの内製開発を用いて検証するステップ2、外部の専門的なクラウドツールを検討・実装するステップ3があると考えています(図表)。現在、ステップ1と2のサイクルを回しています。ただし、すべてを内製開発するつもりはありません。各メーカーが提供するパッケージシステムやRPAを組み合わせ、全体を俯瞰した設計が重要です。このため、業務を整理しモジュール化することが大切です。SAP Concurは、決裁システム・旅行サービスと連携しているので、経費入力の部分で効果を発揮してくれると期待しています」(末廣氏)

図表 DXの段階

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続いて同大学の財務部経理課係長である上田光恵氏が登壇。上田氏は2023年1月から2024年3月までの間、情報システム課を兼務していた。情報システム課は基幹業務システムの開発・運用などを扱うが、要件定義・開発費用抑制のため、全学的な運用の統合と、部門横断の協創が求められた。そのため、基幹業務を所掌する各課から職員が編入したという。

上田氏は、最初から完璧を求めず検証しながら開発することが重要だと話す。現状は、ステップ1・2のフェーズだが、ステップ3に向けて、初期段階からコンカーや富士ソフトに参画してもらい情報提供を受けている。内製開発により、担当者間でシステムの要件定義が議論されると、仕事内容・工数の見直しが行われ、業務標準化が起きる。香川大学の取り組みでは、旅行の定義や旅行命令の意味など規則まで踏み込んで議論が交わされた。

「本学の場合、近距離でも旅行命令書を作成しますが、例えばある私立大学では、80キロ未満の出張は簡易な精算・報告を行う方法を採用しています。一方で、事前申請をしないことにより出張が業務中であったと認定されない恐れもあります。このようにどういったシステムを利用するかの前に議論すべきポイントがあると考えるようになりました」

上田氏は「国立大学として採用すべきルールは何か、国立大学特有の事情や形骸化している要件はないかなど、課題認識の手がかりを収集し議論を続けていきます」と話した。

※Minimum Viable Product

旅費精算業務の4つの負荷に対し
DXを通じた4つのレスで解決する

続いてコンカー ソリューションコンサルタントの井田悠太氏から、ステップ3のポイントが示された。同社は、経費精算を最も付加価値のない仕事と位置づけ、その業務を撤廃すべくサービスを展開してきた。

「旅費精算業務には、現金利用・入力・紙管理・承認と4つの負荷が存在します。出張手配ポータルサイトや法人カードを活用することで、キャッシュレス・入力レスが実現できます。キャッシュレスの実績データは、Concur Expenseに自動連携されるため、日付・金額・支払い先等、改ざん不可能な実績データが連携され、ガバナンス強化と生産性向上の両立が可能になります。この他、ペーパーレス・承認レスも含めて、旅費精算DX実現の支援をしています」

最後に富士ソフトの中村裕氏が登壇し、SAP Concur製品のパートナー会社として、2012年から導入支援活動をしてきた実績を紹介した。同社は140社以上の民間企業を支援してきた実績があり、直近では大学・自治体などのパブリック領域における支援も開始している。

中村氏は「今後も大学の業務変革プロセス検証を支援してまいります。弊社は多種多様なソリューションに精通しています。研究費管理におけるシステム導入判断のための業務プロセス変革検証へのご相談も承ります。各大学の状況に応じたサービスを提供し、課題解決に伴走していきたいと思います。2025年4月より旅費法の改正が施行されますが、事前に対処すれば、スムーズなスタートをきれるでしょう」と締めくくった。

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富士ソフト株式会社
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