経営理念浸透への近道はその阻害要因の除去

ミッション、ビジョン、パーパス…。経営理念を指す様々なカタカナ語が流行しては廃れていくが、肝心なのは、ブームに踊らされずにその本質、特に浸透の促進要因と阻害要因を見極めることだ。

「カタカナ概念」に惑わされるな

田中 雅子

田中 雅子

帝塚山大学経済経営学部教授、同大学経済経営研究所所長
同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。専門は組織行動論(経営理念の浸透)。主な著書に、『ミッションマネジメントの理論と実践――経営理念の実現に向けて』(2006年)、『経営理念浸透のメカニズム――10年間の調査から見えた「わかちあい」の本質と実践』(2016年、いずれも中央経済社)など。論文「堀場製作所三代目の経営理念浸透プロセスの分析――『正統的周辺参加』理論アプローチ」(『経営哲学』18(2)、pp. 19-36)で、2022年度経営哲学学会学会賞受賞。日本マネジメント学会関西部会会長。

2020年頃から企業のパーパスが話題になり始め、その後しばらく盛り上がりを見せた。しかし、筆者はブームで終わるだろうと拙論文で主張した。それは、パーパスの概念が曖昧だからである。パーパスの登場以前は、ミッション、ビジョンが流行していた。その当時、ミッションは「組織の存在意義」とされていたが、パーパスも「存在意義」だという。そしてミッションはもはや、パーパスの下位概念として捉えられている。

このように、ブームに乗った欧米由来のカタカナ概念は極めて曖昧であり、わずかな時間の経過や論者によって、定義や位置づけが簡単に変わってしまう危うさがある。今後、どのようなカタカナ概念が登場するのだろうか。そのたびに踊らされ、見直しを図っているうちに、経営理念はもはや経営理念でなくなってしまう。

(※全文:2858文字 画像:あり)

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