地域活性に必要な戦略的視点を学び魅力あるまちづくりへ

IT企業から地域プロジェクトマネージャーへの転身を決め、社会情報大学院大学の地域プロジェクトマネージャー養成課程の第1期生として学ぶ成田朱実氏。新天地での活動を前に、養成課程での学びや今後の活動への想いを聞いた。

地域活性化に欠かせない
地域プロジェクトマネージャー

成田 朱実

成田 朱実

千葉工業大学社会システム科学部プロジェクトマネジメント学科卒業後、情報通信系の外資系企業に勤務、プロジェクトマネジメントを担当。2022年3月から現職。

「地域プロジェクトマネージャー」とは、総務省が2021年度に創設した新制度。地域活性化には、産官学連携によるプロジェクトの推進が重要だが、地域の自治体がそうしたプロジェクトを行うには、行政と民間の違いを理解し、様々なステークホルダーをつないでいく「ブリッジ人材」が欠かせない。そこで、市町村がそうした人材を地域プロジェクトマネージャーとして任用する、新しい制度として創設された。

地域プロジェクトマネージャーの雇用には、総務省から自治体に650万円/人を上限に特別交付税措置を行っている。多くの自治体が活用を検討する一方で、適切な人材を探し出すのは難しい状況にある。

2021年10月、社会情報大学院大学が開講した「地域プロジェクトマネージャー養成課程」(第1期)では、地域プロジェクトマネージャーを目指す人材をはじめ、地方自治体に関する知識や地方創生・地域活性化の取組みを学びたい人材のほか、地域おこし協力隊OB・OG、地域と関係の深い専門家などを対象に、5か月(全40講・総受講時間60時間)のカリキュラムを提供している。また、オンラインのため場所に捉われず学ぶことができる。

同課程の特長は大きく4つある。1つ目が地方自治体の独特の仕組み、ルール、組織、慣習、思考、予算管理等がわかること。公務員経験のある教員や各自治体での指導実績のある教員、現役第一線の公務員による講義で、実践に役立つスキル、知識を身につけることができる。

2つ目が、公民共創プロジェクトの組成の仕方、運営、資金調達など成功への道筋がわかること。公民共創プロジェクトに、これまで400件以上携わり、自治体や企業に指導してきた教員から体系的に学ぶことができる。

3つ目が、志を同じくする仲間、人脈を得られること。講義に登壇する市長をはじめ、多様なゲスト講師から、様々な経験を積んできた他の受講生と切磋琢磨することで、業界や地域、職種を越えて人脈を形成することが可能となる。

4つ目は、地域活性に関する理論と実務の双方が習得できること。講師には、自治体の局長級から課長級職員や「博士号」を取得している職員もいる。また、実務中心、理論中心の教員がそれぞれいるため地方創生に関する理論と実務の双方を学ぶことができる。

こうした同課程で習得する知識やスキル、人脈は、地域プロジェクトマネージャーとしてだけでなく、自治体が募集する副業や自治体を巻き込んだ自主的な共創事業でも発揮することができる。

タイミングと縁が綺麗に一致
養成課程で知識や経験を補う

農地保全管理の一環として実現したクリムゾンクローバー。毎年5月下旬頃が見頃。

大学時代にプロジェクトマネジメントを専攻し、5Gのシステムなどを導入する外資系のIT企業でプロジェクトマネージャーとして仕事をしてきた成田朱実氏。キャリアの主旋律としては常にプロジェクトマネジメントがあった。

もともと自然に囲まれた環境が好きな成田氏は、地域の自然に触れるたび“移住したい”という想いを募らせてきたという。

「地域プロジェクトマネージャーの仕事を見つけたとき、“これだ”と腹落ちしたのです」

思い立ってから1か月足らずで、昨年9月末には福島県葛尾(かつらお)村の地域プロジェクトマネージャーに合格。10月に開講した社会情報大学院大学の「地域プロジェクトマネージャー養成課程」を見つけ、すぐに申し込んだという。

※葛尾村の場合、総務省の地域プロジェクトマネージャー制度ではなく、運用上は復興庁の福島再生加速化交付金(帰還・移住等環境整備)の移住・定住促進事業(49)を利用したもの。

「タイミングとご縁が綺麗に一致しました。通信業界で働いてきた私にとって、地方行政は未経験の現場です。養成課程で地方自治体との働き方や公民共創プロジェクトの進め方を学び、足りない知識や経験をできる限り補いたいと考えました」

具体的な方法論や事例
戦略的観点を学べたことが価値

「養成課程では、WEBの検索からは出てこない、具体的な方法論や事例を体系的に学ぶことができました。特に、ゲスト講師の授業で、震災地域での話を聞けたことは印象的でした」と成田氏は話す。

地域活性には、地域にお金を回すシステムをどう戦略的に作っていくかが重要なポイントとなる。

「産官学金労言の連携や事前の根回し、どう利害関係をまとめていくかなど、戦略的観点を学べたことは、大きな価値だと思います」

※産官学に「金融」「労働界」「マスコミ」を加えた造語

2022年3月から地域プロジェクトマネージャーとして着任する福島県葛尾村では、移住・定住支援を中心に活動することが決まっている。葛尾村の主な産業は農業と畜産業で、人口は1335人(2022年1月1日現在)。観光資源には、葛尾大尽屋敷跡、磨崖仏、高瀬川渓谷、五十人山などのほか、特産品では伝統食「凍み餅」で知られる。

成田氏は、移住する人が相談を受けられる窓口の設置や、大人が楽しめる場所づくりのデザイン、例えば休耕地などを活かしたコミュニティガーデンなど、様々な形で魅力あるまちづくりに繋がる取組みを考えている。

「私としては、次に続く方々が、なるべく仕事をしやすいよう、様々な形で情報を発信していければという想いがあります」

地域おこし協力隊の求人とあわせ、地域プロジェクトマネージャーの求人が増えていけば、地域移住の選択肢はまた1つ広がる。

「地域おこし協力隊以外に、地域活性における移住の選択肢が増えることで、民間企業や色々なバックグラウンドを持った人が様々な地域に入っていき、多様性を持つ地域ができていくと、日本が面白くなるかなと思っています」

【5月開講】地域プロジェクトマネージャー養成課程 第2期 受講者募集中

社会情報大学院大学 先端教育研究所では、5月に開講する「地域プロジェクトマネージャー養成課程」(第2期)の説明会を下記のとおり随時、オンラインで開催しております。
①地方自治体の地域プロジェクトマネージャーや副業人材を目指す方、②地方自治体に関する知識や地方創生・地域活性化の取組などについて学びたい方、③地域おこし協力隊OB・OG、地域と関係の深い専門家など、ご関心ありましたら、下記URLからお申込みください。
https://www.mics.ac.jp/lab/lpm/
<説明会日程>
3月3日(木)19時~20時
3月17日(木)19時~20時、
他随時開催。