学生・職員起点で進める大学DX先進事例 関西大×香川大

日本の「失われた30年」の要因の一つとされるDXの遅れ。大学においてもこの遅れを取り戻し、新たな時代に対応した教育体制を築くことが重要だ。DX実践の先進例として注目される関西大学と香川大学のDXの現状や課題を事業構想研究所教授の小野淳哉氏が聞いた。

大学DX、第一の関門は
大学自ら要件定義を行うこと

藤田 高夫

藤田 高夫

関西大学 副学長

八重樫 理人

八重樫 理人

香川大学創造工学部創造工学科 情報システム・セキュリティコース 教授(併)香川大学 情報メディアセンター センター長

ファシリテーター・小野 淳哉

ファシリテーター・小野 淳哉

事業構想大学院大学 事業構想研究所 副所長・教授

「大学のDXの遅れに関する最大の問題点は、大学があまり遅れを自覚していなかったところにあるのではないでしょうか」。関西大学副学長の藤田高夫氏は、こう指摘する。 「大学を運営、執行する立場の人たちも、DXの取り組みを後回しにしてきたと思います。しかし、コロナ禍で対応を余儀なくされ、デジタル技術を活用した大学教育の変革やDXの可能性をようやく真剣に考えるようになったと感じます」(藤田氏)

DXを推進するためにはITシステムの導入など外部ベンダーとの協力が不可欠だが、経済産業省の『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』は、ユーザー企業とベンダー企業の関係について「要件を確定するのはユーザー企業だと認識すべき」と指摘している。

この点について、香川大学創造工学部教授で同大学情報メディアセンター長も務める八重樫理人氏は「大学に置き換えれば、大学はユーザー企業です。ユーザー企業の大学自身が、必要だと思うシステムや機能を定義する要件定義が本当におこなえるかどうかは疑問」と語る。一般的にシステムの要件を定義したシステム要件は、業務を定義した業務要件に基づいて定義される。また業務要件は、事業やビジネスを定義した事業要件に基づいて定義される。事業要件は経営層によって定義され、事業要件は事業部門が定義する。システム要件は事業要件基づいて定義される。「DXにおいてトップの役割が重要との指摘があるのはシステム要件のベースとなるものが業務要件だったり、事業要件だったりするからです。事業要件や業務要件があいまいだと、…

(※全文:2068文字 画像:あり)

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