人、組織、活動、しくみによる多様な統合的アプローチ -導入編-

複雑化する現代社会では、従来の縦割り的な問題解決では限界がある。多様な主体をつなぎ、新たな価値を生み出す「つなぎ役」の機能が重要性を増している。本連載では、統合的問題解決と価値共創に向けた「つなぎ役」の重要性とその魅力について、政策・実践・理論の観点から考察する。

佐藤 真久

佐藤 真久

東京都市大学大学院・環境情報学研究科 研究教授/学長補佐
筑波大学卒業、同大学院修士課程環境科学研究科修了。英国国立サルフォード大学にてPh.D.取得(2002年)。地球環境戦略研究機関(IGES)戦略研究プロジェクト研究員、ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)の国際教育協力シニア・プログラムスペシャリストを経て現職。現在、UNESCO ESD-Net 2030 フォーカルポイント、UNESCO Chair(責任ある生活とライフスタイル)国際理事会理事、人事院研修講師(サステナビリティ)、SEAMEO-JAPAN ESDアワード国際審査委員会委員、SDSN-JAPAN委員、地域循環共生圏有識者会議委員などを務める。協働ガバナンス、社会的学習、中間支援機能などの地域マネジメント、組織論、学習・教育論の連関に関する研究と実践を進めている。

“鬼退治の限界”、筆者は書籍(佐藤・広石、2018)1のなかで、変化に富み、複雑性の高い社会状況(VUCA社会:変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の高い社会)においては、これまでの線形的問題解決では、もはや通用しない点を強調している。このような状況においては、さまざまな物事をつなげ、意味づけ、捉え直し、変容を生み出す「つなぎ役」が重要であるとし、その機能を有する人、組織、活動、しくみが重要であると述べている。

これらの「つなぎ役」については、イノベーション普及学や組織の社会心理学、協働ガバナンスや協働イノベーションなどの分野で60年以上、さまざまな場や文脈においてその重要性が指摘なされてきた。

これまでも、チェンジ・エージェント、ハブ組織、支援組織(中間支援組織、サポート組織、連携支援組織)、境界連結者、連携支援組織(協働支援組織、ネットワーク組織)、コーディネーターなどの言葉とともに、その役割が注目され、様々な取組や研究がなされている。

その一方で、実社会においては、個々の専門性に基づく個別問題解決、組織の設置指針や自己責任論に基づく縦割り的対応、効率主義と短期的視野による対処療法としての“鬼退治”の取組が多いことは否めない。

本連載の趣旨

本連載では、VUCA社会(前述)において、「つなぎ役」が重要であるとし、その機能を有する人、組織、活動、しくみに焦点を当てている。そして、社会の状況が大きく変化していく中で、問題を解決するとはどういうことなのか、新しい価値をどう創りだしていくのか、どのような取組がなされているのか、どのようなアプローチやしくみが求められているのか、これらの問いに対し、政策、実践、理論といった様々な角度から深めることとする。

(※全文:1826文字 画像:あり)

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