特集2 情報活用能力を育む メディアリテラシー・データサイエンス教育

社会のデジタル化が進む現在、情報技術を自由自在に活用し、自らの人生や社会のために課題解決や探究ができる力を育むことが重要となっている。これからの時代を生きる上で不可欠となる、探究的な学びの基盤となる情報活用能力を育む学びを学校現場でどう充実できるのだろうか。

活用・適切な取扱い
特性の理解という3つの観点

現代社会において情報はあらゆる場面に溢れている。スマートフォン一つで世界中の情報に瞬時にアクセスでき、自身も世界に向けて情報を容易に発信できる時代となった。

一方で、フェイクニュースや誤情報も同じ速度で拡散可能となり、昨今は生成AIの進化も相まって、社会のデジタル化における負の側面は一層クローズアップされている。

また、生成AIをはじめとする技術革新が社会人に必要なスキルや働き方、産業構造などを大きく塗り替えようとしている中、これからの社会を生きる子どもたちには、AIなどデジタル技術を道具として使いこなし、新たな価値を生み出す力が求められていくはずだ。

次期学習指導要領の改訂に向けて中央教育審議会「教育課程企画特別部会」が2025年9月に公表した「論点整理」では「情報活用能力の抜本的向上」が検討項目の一つに挙げられている。「論点整理」では、小中高を通じた情報活用能力の育成体系が不明確であること、他国と比べ指導内容が不十分であること等の課題を踏まえれば、情報活用能力の抜本的向上に向けた内容面の充実の方向性は、(1)どのように情報技術の活用の実態を高めていくか(主に①活用)、(2)内容として不足している部分をどう充実するか(主に②適切な取扱い、③特性の理解)という観点で総合的に整理することが重要だとして具体的な課題を整理している(図表1)。そして、小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を付加しつつ、中学校は情報技術に関連する内容を強化した「情報・技術科(仮称)」を新設し、それらを踏まえた高等学校情報科の充実を図るといった方向性をイメージしている(図表2)。

図表1 情報活用能力の抜本的向上に係る主な課題

画像をクリックすると拡大します

図表2 情報活用能力の抜本的向上の方向性イメージ(教育課程の改善)

画像をクリックすると拡大します

山梨大学教育学部附属教育実践総合センター准教授の稲垣俊介氏には、情報活用能力を教科として専門的に学ぶ場である教科「情報」における授業実践について寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

各発達段階で必要となる
情報活用能力を育む学び

「論点整理」では情報活用能力の抜本的向上の中で、メディア・リテラシーにも言及している。図表1の主な課題では「適切な取扱い」の中で、「メディアリテラシーについて学校の取組差が大きい」と指摘する。メディア・リテラシーは、SNS等におけるメディア情報の真偽や正確さを問うことに注目が集まりがちだが、その根本には情報を批判的に考え、判断し、表現できる力の育成が求められているといえる。弘前大学教育学部准教授の森本洋介氏には、そもそもメディア・リテラシー教育とは何か、小学校や中学校での具体的な実践、これから日本でどのようにメディア・リテラシー教育を行うかなどについて寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

「論点整理」は情報活用能力を探究的な学びの基盤としている。「自らの人生や社会のために課題解決や探究ができる力がこれからの時代を生きる上で不可欠であることから、『①活用』を情報活用能力の中核的な構成要素」であり、「②適切な取扱い」「③特性の理解」を①を発揮するための構成要素と整理し、発達段階に即した学習活動を検討すべきとしている(図表3)。

図表3 探究的な学びの基盤となる情報活用能力の整理

画像をクリックすると拡大します

探究的な学びの基盤となる「情報活用能力」は、どう日常の授業に落とし込むべきだろうか。教師の授業づくりの多様性を保障する実践的な指標「情報活用能力ベーシック」のねらいと活用法について、放送大学 教養学部准教授の小林祐紀氏に寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

情報活用能力の育成は高校段階になると、数理・データサイエンス・AI教育での充実も重要となる。データサイエンスを軸に企業研修や教育支援を展開するRejouiは2025 年6月、「高校教育のためのAI・データサイエンス教材」をリリースした。地域や学校の実情に合わせて教材を設計し、教員の指導力向上まで支援するサービスだ。Rejouiの見並まり江氏に話を聞いた(➡こちらの記事)。

「論点整理」が示した「情報活用能力の抜本的向上」に関する具体的な検討課題は「情報・技術ワーキンググループ」で具体的な議論が進んでいる。今後の議論の行方も注視していきたい。