特集2 オンライン国際交流・英語力・探究学習 グローバル社会を生きる学び

資本や労働力、技術や文化などが国境を越えるグローバル社会では、新たな産業の創出が期待できる一方で、既存産業の衰退も起こりうる。日本が持続的な成長をする上でもグローバル社会で活躍できる人材の育成は喫緊の課題だ。そのために、いま必要な学びは何かを検証する。(編集部)

オンラインで世界各国をつなぐ
国際交流プログラムでの学び

次代を担う子ども達がグローバル社会で生きていくには、どういった力を身につけていくことが必要だろうか。文部科学省「学生の海外留学に関する調査2021」によると、「学生が留学を通じて得たこと」として「対人コミュニケーション能力」や「何事にも挑戦するチャレンジ精神」などを挙げている(図表1)。こうした力はグローバル社会を生きる上でも必要な力といえる。

図表1 留学経験を通じて社会人として期待されるスキルが獲得できる

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一方、オンラインによる国際交流を通じて、こうした力を育むことも可能だろう。政府の教育未来創造会議が2023年4月に公表した第二次提言は2033年までの目標の一つに「教育の国際化」を掲げ、中学・高校段階におけるオンライン等を利用した国際交流を行っている学校の割合を20%から100%とする数値目標を示していた。

With The Worldは2018年の設立以来、学校・教育機関向けにオンライン国際交流プログラムを展開。現在は世界67カ国546校と日本の200校をつなぎ、年間約2万人の生徒に学びの機会を提供している(➡こちらの記事)。

同社の探究型のオンライン国際交流プログラムは、単なる語学体験にとどまらず、同世代同士のつながりを起点とした協働学習を特徴とし、学校行事や地域活動と連動させたテーラーメイド型の年間プログラムとして構成。また、画面越しの出会いを、リアルな交流へと発展させる海外研修プログラムも用意している。

急速に回復しつつある海外留学
世界に通用する英語力を身につける

先の第二次提言では、教育の国際化のほか、2033年までの目標として、日本人学生の派遣を50万人(コロナ前22.2万人)、外国人留学生の受入れ・定着に40万人(コロナ前31.8万人)を掲げていた。

日本学生支援機構(JASSO)が2025年4月に公表した「日本人学生留学状況調査」、「外国人留学生在籍状況調査」によると、2023年度に海外へ留学した日本人学生は8万9,179人。前年度(5万8,162人)から53.3%と大幅に増加。コロナ前の水準(2018年=11万5,146人)までは戻っていないものの、急速に回復しつつある。一方、日本に留学している外国人学生は、2024年5月1日現在で33万6,708人。前年度(27万9,274人)から20.6%増加し、コロナ前の水準(2018年=29万8,980人)を超えて過去最多となった。海外留学、外国人留学生の受入れが進む中、世界標準の英語力を育むことがより重要となる。一方、主に大学・大学院レベルのアカデミックな場面で必要とされる英語運用能力を測定する試験「TOEFL iBT」の平均スコア(2022年)によると、日本は71点と、韓国(86点)や中国(90点)と比べて大きく差をつけられている。「世界に通用する英語力」をどう身につけたらよいのか。“逆算×自学”という学びのしくみを提案するLOOPAL代表取締役の田原佑介氏に寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

政府のグローバル人材育成の推進
いま必要なグローカル人材の育成

日本が成長し世界を牽引する存在となるためには、世界と渡り合えるグローバル人材の育成が急務だとして、政府も2025年度予算で「グローバル人材育成の推進」に716億円を計上、各種施策を展開している(図表2)。2015年の創業時から「グローカル(グローバル+ローカル)リーダーの発射台」をミッションに、多様性あふれる仲間との圧倒的な原体験の共創を通じてグローカルリーダーを育成するための新しい学びを提供するラーニングデザイン・ファームとして事業を展開してきたタクトピア。同社のラーニングデザインの具体例について代表取締役の長井悠氏に話を聞いた(➡こちらの記事)。

図表2 グローバル人材育成の推進(2025年度予算額:716億円)

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また、次世代を担う中高生に対する探究学習プログラムを支援する教育系ベンチャーであるミエタでは、探究学習プログラムを企画・運営する「MIETANプログラム」と、探究活動を生徒のキャリアや進路、さらには学校の教育課程と結び付ける支援を行う「MIETANコーディネーター」を展開している(➡こちらの記事)。

本特集は「グローバル社会を生きる学び」をテーマとした。次世代を担う子ども達にどんな学びが必要なのかを探る一助となれば幸いだ。

「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ<J-MIRAI>」(第二次提言)