特集2 いま必要なリテラシー教育 情報・ワークルール・金融・ゲーム
変化の激しい現代社会を生きる子どもたちにとって、多様なリテラシーを身につけることがこれまで以上に重要になっている。本特集では、「情報」「ワークルール」「金融」「ゲーム」の観点から、いま子どもたちに必要なリテラシー教育とその在り方などを検証した。
生成AI登場で重要性が増す
情報リテラシー・著作権リテラシー
情報技術の発達で、誰もが多くの情報を簡単に入手できるようになった。一方、情報発信も容易になり真偽不明の情報が氾濫するようになった。特に生成AIの登場で、情報の真偽を判断することは一層難しくなっている。こうした中で、情報を批判的に判断し、上手く活用するための情報リテラシー、メディアリテラシーの重要性が高まっている。総務省では青少年のインターネット・リテラシー向上のため、特にインターネット上の危険・脅威に対応するための能力とその現状等を可視化するため、これらの能力を数値化するテストを指標※1として開発。2012年度から毎年、高校1年生を対象にテスト(ILASテスト)とインターネット等の利用状況に関するアンケートを実施している。2024年度の調査結果概要(2025年6月公表)によると、全体の正答率は71.5%(前年度正答率:71.4%)でリスクの中分類(表1の1a~3bの分類)別の正答率では「不適切利用リスク(過大消費、ネット依存等)」に対応する問の正答率(79.2%)が最も高く、「不適正取引リスク(フィッシングやネット上の売買等)」に対応する問の正答率(63.1%)が最も低かった。表1の「違法情報リスク」の「リスクの具体例」にあるように、著作権や肖像権等の理解も重要な要素といえる。これからの情報・著作権リテラシー教育はどうあるべきか。大分県立芸術文化短期大学准教授の野田佳邦氏に寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
生きていく上で必要なお金に
関する知識や能力を身につける
日本財団が2024年3月に公表した「18歳意識調査」結果によると、義務教育で「もっと学んでおきたかったと思うこと」に関しては、男女の回答を合計した1位が、「生きていく上で必要なお金に関する知識や能力を身に着ける」(金融リテラシー)で、約2割を占めた。スマホ一つで決済から投資、資産運用までできる時代に、金融リテラシーを養う金融教育の必要性は高まっている。
2024年4月には、金融経済教育を受ける機会の拡大に向けて、金融経済教育推進機構(J-FLEC)が設立された。また、金融経済教育推進会議※2では、より効果的・効率的な金融教育の推進に向けて、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の項目別・年齢層別スタンダードとして、金融リテラシー・マップを公開している(表2)。学校現場で必要な金融教育とは何だろうか。効果的な金融教育の在り方やその難しさなど関西大学教授の本西泰三氏に話を聞いた(➡こちらの記事)。
これから必要なリテラシーは情報・金融だけではない。昨今、相次ぐ労働法の改正で働く人の権利を守る仕組みの整備が進んでいる。一方で、経営者・労働者双方の知識不足といった課題がある。弁護士で北海学園大学教授の淺野高宏氏に現状の課題と「ワークルール教育」の意義を聞いた(➡こちらの記事)。
また、リテラシー教育を専門とする横浜国立大学准教授の石田喜美氏には、学校でリテラシー教育を実践する上での視点や、現在研究中のゲームリテラシーなどについて話を聞いた(➡こちらの記事)。生成AIを活用したプログラミングなど、テクノロジーの発達等で、様々なことができる時代になった。そうした中で、子どもたちに必要なリテラシーとは何なのか。本特集では専門家への取材・寄稿を通じて、リテラシー教育の在り方を展望した。より良いリテラシー教育の一助となれば幸いだ。
※1「青少年がインターネットを安全に安心して活用するためのリテラシー指標」=ILAS(Internet Literacy Assessment indicator for Students)
※2 関係省庁(金融庁、消費者庁、文部科学省)、有識者、金融関係団体、金融広報中央委員会をメンバーとして、2013年6月に金融広報中央委員会(事務局:日本銀行情報サービス局内)の中に設置。

