右脳と左脳を刺激する「アート・アンド・ロジック」
国内外の様々な美術教育を研究して開発した「アート・アンド・ロジック」はデッサンを通して右脳と左脳を刺激する独自のプログラム。現代社会に必要な、自ら問いを立てて解決するスキルが磨かれるという。
輪郭を描くか、陰影を描くか

林 愛子
株式会社サイエンスデザイン代表取締役
東京理科大学理学部卒、事業構想大学院大学修了(事業構想修士)。科学技術ジャーナリストとしてモビリティや製造業に関係する情報発信のほか、大学や企業のコミュニケーション媒体の企画・制作を手掛ける。
「ご自身の手を、鉛筆を使って紙に描いてください」と言われたら、どう描くだろうか。多くの人は手の輪郭を描くのではないだろうか。漫画やアニメを見て育ってきた私たちにとって、描くという行為は輪郭を線で捉え、筆致を残すものなのだ。モチーフ(対象)を描く際の、鉛筆と消しゴムの関係性や役割は、鉛筆は輪郭を描くものであり、消しゴムは間違えた部分を消すこと、直すものということになる。日本画や浮世絵も、輪郭をはっきりと描くのが特徴だ。
それに対し、西洋絵画の基本的な技法であるデッサンは光と陰を重ねて描いていく。その根拠は真っ暗闇では何も見えないからだ。ヒトがモノを見ているということは、モノに挿す光と影を認知、認識しているということに他ならない。よって、デッサンは消しゴムを光で描き、鉛筆で影を描いていく。これを重層的に描いていくので、デッサンは立体的に見えるのである。
輪郭を描くか、陰影を描くか。表現手法に良し悪しはない。ただ、認知・認識には大きな違いがある。日本人は無意識のうちに前者の輪郭を捉えて線で表現する描き方を描くことだと思っているため、陰影を描くデッサンに挑戦したときに、今までと違った脳の部分が刺激されたように感じ、新たな知覚の扉を開くことができるのだ。
2015年スタートの「アート・アンド・ロジック」は、紙と鉛筆を使ったデッサンを体験の中核に置くプログラム。講師を務めるのは東京藝術大学卒のアーティストやデザイナーだ。絵を描くのは何十年ぶりという人でも、講師から観察や表現のコツを教わりながら、自分の感覚を研ぎ澄ませて描くうちに、みるみる絵が上達、進化していく。2日目にわたるプログラムの最後に描く自画像は、参加者自身がびっくりするほどの出来栄えで、子供のころに味わった絵を描く楽しさや喜びを思い出させてくれる。
(※全文:2242文字 画像:あり)
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