地域における教育情報化の伴走者:「教育CIO養成課程」のめざす人材育成

社会構想大学院大学は、2025年2月に新たな短期プログラム「教育CIO養成課程」を開講した。NEXT GIGAを迎える国内の情報教育はどこに向かい、その旗振り役となる人材に求められる能力はいかなるものなのか。連載初回は、同課程が設置された社会的背景やカリキュラムの概要について解説する。

現代の教育現場は、急速なデジタル技術の進展とそれに伴う教育環境の変化への対応が求められている。GIGAスクール構想の推進により、全国の学校で「1人1台端末」が整備されるなど、情報通信技術(ICT)の活用が教育における重要な柱となって久しい。しかし、しばしば指摘されるように、ICT環境の整備は目的ではなく手段であり、その本質は子どもたちの学びをより深く・より豊かにすることにある。

この目的を達成するためには、教育現場における情報技術の適切な活用を支え、推進する専門的な知識と実践力を持った人材が不可欠といえる。こうした役割を期待される専門人材が「教育CIO」である。

CIO(Chief Information Officer)は「最高情報責任者」、すなわち組織の情報システムやIT戦略のトップに位置する役職を指す。教育CIOもまた、各地域の教育情報化において中心的な役割を担う専門人材といえる。

そうだとすると、教育CIOは単なる技術支援者ではなく、「各地域の教育ビジョンや教育目標を深く理解しつつ、教育行政・学校経営・教員研修・学習支援といった広範な領域の専門知識を活用しながら、教育現場の実情を的確に把握し、次世代の学びを構築するための戦略立案と実行を担う伴走者」と整理できるだろう。

教育CIOの重要性が徐々に認識され、社会的ニーズがますます高まっているにも関わらず、実際のところこれまで国内ではそうした職責を担うことのできる人材が限られていた。そうだとすると、教育CIOに求められる知識と技術を体系的に修得できる教育課程が整備されることは、これまで少数の専門家に蓄積されてきた知識(教育CIOとしての実践知)を普及·伝達可能なものに転換することを意味し、このことは、教育情報化の価値を全国に波及しながら子どもたちの学びを支える人材を全国各地に輩出することにも繋がる。

そこで社会構想大学院大学では2025年2月に、オンラインで全国から受講可能な「教育CIO養成課程」第1期を開講した。同課程は全国の教育委員会や学校教諭、さらには民間企業など、多様な立場から教育情報化に取り組む皆様に関心をお持ちいただき、早期に定員に達した(第2期は2025年5月開講予定で、受講説明会を実施中)。受講者は、教育情報化や情報教育のトップランナーが担当する全12回・24コマの授業のなかで、①ICT教育環境の調査能力、②教育ビジョンの浸透と組織運営の実践力、③学校訪問や授業視察を通じた評価・助言の方法をはじめとする実践的スキルの修得に取り組んでいる。

本連載では、同課程の授業の様子を随時紹介するほか、実際に教育CIOとして活躍する修了生の紹介や、そうした人材を任用する教育委員会等へのインタビューを通じて、教育CIOへの期待と認知の向上に貢献していきたい。