教育情報化の中核を担う人材の育成:教育長がみた「教育CIO養成課程」

社会構想大学院大学は、今年2月に新たな短期プログラム「教育CIO養成課程」を開講し、3月末に第1期修了生を輩出。「教育情報化の伴走者」としての教育CIOを養成する同課程の学びは、教育行政の現場にどのような形で貢献できるのか。第1期修了生で北海道木古内町 教育長の藤澤義博氏に聞いた。

社会構想大学院大学は、オンラインで全国から受講可能な「教育CIO養成課程」を開講し、2025年5月からは第2期のプログラムを開始した。GIGAスクール構想の目的、すなわち「情報技術を用いて子どもたちの学びをより深く・より豊かにすること」を達成するためには、教育現場における情報技術の適切な活用を支え、推進できる専門人材、すなわち「教育CIO」が不可欠であるが、現状こうした人材が全国で十分に確保されているとは言いがたい。

第1期修了生で北海道木古内町の教育長を務める藤澤義博氏は、前述の状況について「ICTやデジタル技術を活用すれば都市と地方の教育格差が埋められるはずだったのに、現実はその逆になってしまった」と指摘する。

民間企業出身で2022年に教育長に就任した藤澤氏は、地方の教育情報化が抱える大きな課題として、各自治体において教育情報化に関する方向性(ビジョン)が明確化されておらず、担当者・実務レベルでの対応に留まっていること、またその原因として、教育情報化をめぐる政策動向や学校現場の実情を的確に理解する人材が、とりわけ地方の教育委員会に不足していることの2点を挙げる。

こうした現状を打破するため「専門的な知識と技術を身につけた人が各自治体に配置されるような制度が必要」と考える藤澤氏は、その専門性の判断において「教育CIO養成課程を受講したこと」が目安となる可能性があるという。実際に木古内町では、「着任後に同課程を受講すること」を条件としてすでに職員を採用し、その職員と共に令和8年度に向けた教育ICT推進計画の立案に取り組むことを計画している。

この点について藤澤氏は、意思決定者たる教育長と、実務の中核を担う職員の双方が教育CIOに求められる知識と技術を体系的に修得することの重要性を指摘する。トップと担当者が教育情報化の理想と現実、さらにはそれらを支える知見を共有することは、効果的で実効性のある政策形成のためには必要不可欠といえる。

では、こうした課題意識や地域の実情に教育CIO養成課程はどのように貢献できるのか。藤澤氏は次のように述べる。

「すべての教育長が本課程を受講してほしいと思うくらい、教育行政にとって必要な内容が盛り込まれていました。生成系AIをはじめ最新技術が次々と登場するなかで、教育長には多面的な視点が求められます。学校現場の実態や法制度など、多様なテーマについて地域の実情を踏まえながら広い視野で学ぶことは非常に重要です。いま教育行政に関わっている方、これから関わろうと考えている方にはとくに本課程の受講をお勧めします」(藤澤氏)

本課程は今後も、8月下旬開始の第3期をはじめ、定期的な開講を予定している。詳細は本学のHPをご参照いただきたい。