教育情報化の伴走者を養成する教育課程:「教育CIO養成課程」への評価
社会構想大学院大学は、2025年2月に新たな短期プログラム「教育CIO養成課程」を開講し、3月末に第1期修了生を輩出した。「教育情報化の伴走者」としての教育CIOを養成する同課程にはどのような属性の受講者が集まり、同課程はどのような評価を受けたのか。今回は実際の修了生の声を紹介する。
GIGAスクール構想の目的、すなわち「情報技術を用いて子どもたちの学びをより深く・より豊かにすること」を達成するためには、教育現場における情報技術の適切な活用を支え、推進できる専門人材としての「教育CIO」が不可欠であり、社会構想大学院大学ではこうした人材を養成するため、オンラインで全国から受講可能な「教育CIO養成課程」を2025年2月に開講し、3月末には第1期修了生を輩出した(第2期は2025年5月20日から8月5日まで開講)。今回は、修了生が本課程における学びをどのように評価しているか紹介する。
第1期には40名の定員に対して、教育委員会・学校・その他教育系団体等から22名、教育支援業や情報通信業をはじめとする民間企業から20名、ほか2名の計44名が参加し、認知的に多様な空間が実現された。このうち20〜30代が11名・40代が13名・50代以上が20名と、年齢層においても多様性がみられた。
毎回の授業にはディスカッションやワークショップといった双方向の内容が含まれており、こうした空間を通じて他者の意見に触れることは、教育CIOとして多様な主体とコミュニケーションを図るうえで重要な視点を提供するものである。
グループワークを通じて耳にした様々な意見を自分ごと化できたこと、あるいは、現場でのコミュニケーション技法や課題の発見方法をアップデートできたことを本課程の成果と捉える修了生が多くみられたことは、こうした方針が奏功したものと考えられる。
また、すべての授業をオンラインで受講でき、かつ授業のアーカイブ視聴とそれによる修了が可能であったことは、多忙な教育業界の受講者から歓迎された。教育情報化の第一線で活躍し、各授業を担当する教員(教育長経験者や文部科学省関係者、現職の教育CIOなど)への高い評価も多く見受けられ、本学としては本課程について一定の質が担保されたものと解釈している。
本課程にとって望外の喜びだったのは、教育CIOの果たすべき役割が受講者から的確に理解され、そのことへの共感が得られたことにある。たとえばある修了生は、教育CIOがICT活用を推進するのみならず、教育をより豊かにするためにICTが果たす役割を探り、実現していく専門職であることを自身の言葉で説明している。
別の修了生も「教育情報化の伴走者」として活躍する教育CIOには幅広い知見が横断的に求められることを内面化し、実践に移している。こうした思想と技術を修得した修了生を数多く輩出し、全国の子どもたちの学びに貢献する可能性を広げることは、本学が本課程を開発した最大の理由であることから、第2期以降も引き続きこうした教育活動に取り組んでいきたい。
次号からは、教育CIO養成課程の修了生へのインタビューを通じて、本課程の提供する学びが教育情報化をめぐる現場の課題にどのように応答しうるか解説していく。