教育情報化の伴走者に求められる能力:「教育CIO養成課程」の設計思想
社会構想大学院大学は、2025年2月に新たな短期プログラム「教育CIO養成課程」を開講した。NEXT GIGAを迎える国内の情報教育はどこに向かい、そしてその旗振り役となる人材に求められる能力はいかなるものなのか。今回はカリキュラムの具体的な内容と、そこで修得できる能力について解説する。
現代の教育現場は、急速なデジタル技術の進展とそれに伴う教育環境の変化への対応が求められている。GIGAスクール構想の目的、すなわち「情報技術を用いて子どもたちの学びをより深く・より豊かにすること」を達成するためには、教育現場における情報技術の適切な活用を支え、推進できる専門人材、すなわち「教育CIO」が不可欠であり、社会構想大学院大学ではこうした人材を養成するため、オンラインで全国から受講可能な「教育CIO養成課程」を2025年2月に開講した。同課程には全国の教育委員会や学校教諭、さらには民間企業など、多様な立場から教育情報化に取り組む受講者が参加している(第2期は2025年5月開講予定で受講説明会を実施中)。
全24コマの授業において受講者が修得する能力は、①教育ICT環境の調査能力、②教育ビジョンの浸透と組織運営の実践力、③学校訪問や授業視察を通じた評価・助言の方法をはじめとする実践的スキルという相互に関連する三種類に整理できる。
第一の能力を身につけるためには、教育ICTをめぐる制度や理論の展開を理解したうえで、学校組織やそこで働く人材、ICT環境の現状を把握し、分析するための基本的な考え方を内面化する必要がある。そのため本課程では、「GIGAスクール構想概論」、「情報リテラシー」、「教育情報化の最新事例」、「教育行政概論」、「教育ICTのフレームワーク」といった単元を設置している。こうした授業を通じて、受講者は教育CIOとして活躍するための基盤を整備していく。
第二に学ぶのは、教育ビジョンや教育計画を現場に浸透させるための、あるいは多様な主体のコミュニケーションを促進するなかでそうした理念を新たに創り出すための思想と技術である。教育長経験者が担当する「教育ビジョンの理解」、「教育計画の理解」のほか、「教育ビジョンの浸透策」、「指導主事・教員研修概論」といった授業を通じて、受講者は教育CIOに求められる役割の本質が「多様なステークホルダーとのコミュニケーション」であることを理解し、またそれが具体的に社会実装された姿のイメージを掴むことになる。
第三に、こうした学びを前提として、同分野において豊富な実績を有する教員が担当する「学校訪問・授業視察の技法」や「授業改善指導法」の単元を受講することで、受講者は教育CIOの目線での評価・助言の方法を身につけるとともに、公開授業や研究発表を推進する技法を修得する。こうしたスキルは「持続可能な教育改革を継続的に行うための専門能力」と位置づけられる。
こうした思想と技術を体系的かつ具体的に修得した本課程の修了者には、教育ICTの専門性を備えたリーダーとして全国の教育現場で活躍することが期待される。教育CIO養成課程は、情報社会において子どもたちがより良い未来を築くための礎を作り上げることを目的とした教育プログラムである。