「教育CIO養成課程」の提供する知見:①教育ICT環境の調査能力

社会構想大学院大学は、2025年2月に新たな短期プログラム「教育CIO養成課程」を開講した。「教育情報化の伴走者」としての教育CIOを養成する同課程では、どのような能力を修得することができるのか。今回は「ICT教育環境の調査能力」を養うための教育内容について紹介する。

現代の教育現場は、急速なデジタル技術の進展とそれに伴う教育環境の変化への対応が求められている。GIGAスクール構想の目的、すなわち「情報技術を用いて子どもたちの学びをより深く・より豊かにすること」を達成するためには、教育現場における情報技術の適切な活用を支え、推進できる専門人材、すなわち「教育CIO」が不可欠であり、社会構想大学院大学ではこうした人材を養成するため、オンラインで全国から受講可能な「教育CIO養成課程」を開講した。

同課程には全国の教育委員会や学校教諭、さらには民間企業など、多様な立場から教育情報化に取り組む受講者が参加している(第3期は2025年8月開講予定で受講説明会を実施中)。

本課程において受講者は、①教育ICT環境の調査能力、②教育ビジョンの浸透と組織運営の実践力、③学校訪問や授業視察を通じた評価・助言の方法をはじめとする実践的スキルという相互に関連する三種類の能力を修得する。今回はそのうち第一の能力、言い換えれば「教育ICTをめぐる制度や理論の展開を理解したうえで、学校組織やそこで働く人材、ICT環境の現状を把握し、分析するための思想と技術」を修得するための具体的な単元について解説する。

まず、全12回の授業のうち初回に設置される『GIGAスクール構想概論』では、教育情報化をめぐる政策のこれまでの展開と今後の展望を整理し、受講者間における知識のベースラインを整える。次に『情報リテラシー』の授業では、メディア・リテラシーや情報モラル、デジタル・シティズンシップといった隣接概念にも言及しつつ、情報社会の保全・改善に貢献する人材がいかなる能力を備えるべきか検討していく。

また、それに続く『教育情報化の最新事例』では、これまでに多様な教育機関において実装されてきた先進事例を俯瞰し、「単線型教育から複線型教育への転換」をはじめとした「教育情報化の実現された理想的な授業の姿」を履修者間で共有する。さらに『教育行政概論』は、教育行政の現状と課題はもとより「そうした政策がどのような思考のもと、どのようなプロセスで作られるか」といった観点が政策担当者から示される。

これら各単元の学修内容を踏まえて『教育ICTのフレームワーク』の授業では、教育情報化の価値を最大化するためのネットワークやセキュリティのあり方、さらには校務システムや教育データ利活用の考え方を含むICT環境の全体像について、実情を見定めるための知見が提供される。

こうした授業は各受講者にとって、教育情報化をめぐる現場の課題を可視化し、理想像とのギャップを埋めるための方策を検討するための基盤となる。本課程は「教育ICT環境の調査能力」を、「教育CIOが子供たちの学びのあり方を構想するために求められる最も基礎的な思想と技術」と位置づける。