特集2 不登校と学びの保障 全ての子どもが学べる場の確保へ

不登校児童生徒数が過去最高の約30万人に達する中、文部科学省は学びの多様化学校の設置促進をはじめ、誰一人取り残されない学びの保障に向けた取り組みを推進している。本特集は「不登校と学びの保障」をテーマに、どんな学びの場があるのか。その最前線を追った。(編集部)

約30万の不登校児童生徒
学びの多様化学校の設置推進

文部科学省の調査によれば、小・中学校における不登校児童生徒数は299,048人(前年度244,940人)と約30万近くに達した。前年度から54,108人(22.1%)増加し、過去最多となっている(図表1)。

図表1 不登校児童生徒数の推移

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年々、不登校児童生徒数が増加する中、文部科学省は2023年3月、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を取りまとめた。

「COCOLOプラン」では、以下の3つの考え方から、誰一人取り残されない学びの保障を社会全体で実現することを目指している。

1.不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える
2.心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する
3.学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする

具体的な取り組みの一つに「学びの多様化学校の設置促進」がある。学びの多様化学校とは、通常の教育課程の基準に縛られず、不登校の子どもたちの実態に合わせて柔軟なカリキュラムを編成できる学校のこと。現在、全国16都道府県に35校が設置されており、文科省は2027年度までに、全都道府県と全政令市での開校を目指しており、将来的には全国300校まで拡大することを視野に入れている。

今年8月に公表された文科省の概算要求では、設置前の準備支援及び設置後の体制整備に係る経費などを計上している(図表2)。

図表2 令和7年度概算要求における不登校対策

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こうした状況の中、2024年4月、人口約1万4千人の大分県玖珠町(くすまち)に「玖珠町立学びの多様化学校」が開校した(➡こちらの記事)。公立義務教育学校(小中一貫校)としては九州初で、現在22人が在籍し、登校率は80%を超える。同校では、学校教育目標を「みんなが主役の学校」とし、一人ひとりが自分の好きや夢を「みつける」、多様性を認め合って「つながる」、そして、楽しみながら挑戦することで可能性を最大限に「ひろげる」という3つのコンセプトを掲げている。

「COCOLOプラン」では、この他、校内教育支援センターの設置促進や教育支援センターの機能強化などを掲げている。概算要求では、設置に係る経費を盛り込むとともに、新たに、校内教育支援センターを拠点として、不登校から学校復帰する段階にある児童生徒や不登校の兆候がみられる児童生徒の学習・相談支援に当たる「校内教育支援センター支援員」の配置に係る経費などを計上している(図表3)。

図表3 校内教育支援センターの設置促進・機能強化事業

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※ 「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(文部科学省)2023年10月4日

学校外に広がる
多様な学びの場

「COCOLOプラン」が掲げる「不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える」ためには、いわゆるフリースクールやオルタナティブスクールは欠かせない存在となっている。

2020年4月、神奈川県葉山町に開校した探究型のオルタナティブスクール「ヒミツキチ森学園」は、「自分のどまんなかで生きる」ことをビジョンに掲げ、それを実現するために、「生きる力を育む」、「学び方を学ぶ」、「人とつながる」、「自分を知る」という4つの柱を掲げている。その上で、「対話」、「共創」、「リフレクション」の三つを日々の重要な行動として位置づけている(➡こちらの記事)。

また、家から出られない子どもにとってはオンラインでの学びが重要となる。2023年9月に開校した小中一貫のオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」は「テクノロジー×教師力で義務教育の概念を変える学校」をコンセプトに、学校に行かなくても学力と社会性が豊かに育つ新しい学びの場だ(➡こちらの記事)。

こうした、公教育以外の多様な学びの選択肢が広がりつつある中、「学校に行きたくない」子どもたちに、いま、何が必要なのか。自身も不登校を経験し、現在は不登校ジャーナリストとして活動する石井しこう氏に話を聞いた(➡こちらの記事)。

本特集は「不登校と学びの保障」をテーマに、一人ひとりの子どもにとって、どんな学びの環境、学びの場があるのか。その最前線を追った。子どもたちの学びの場づくりに向けた取組みの一助となれば幸いだ。