民衆のための「問いを育てる学校」、フォルケホイスコーレの教育哲学
19世紀よりデンマークの教育の中核を担ってきたフォルケホイスコーレ。その根底には「正解を教えるのではなく、問いを育てる」という思想が流れている。日本とデンマークにルーツを持ち、フォルケホイスコーレでも学んだLaereの坂本舞氏に同国の教育哲学を聞いた。
焚き火(Krogerup Højskole)。
画像提供:株式会社Laere
国家財政の破綻から生まれた
世界初の無料の義務教育
坂本 舞
360°リーダーシップ・ディレクター
日本で約16年間を過ごした後、主にデンマークを拠点に活動。2024年末に日本へ拠点を移し、株式会社Laereに参画。若い頃に抱いた日本の社会・教育への問いを起点に、誰もが自らの潜在的創造力を発揮できる社会への転換を目指し、個人や組織に内在する変革の可能性に着目した実践を行っている。デンマーク王立芸術アカデミーにてデザイン修士号を取得、デザインを学びの体験を設計する手段と捉えて活動している。近年は、コペンハーゲンを拠点とする民主的組織「Tomorrow Collective」の立ち上げに参画し、元デンマーク文化大臣でありKAOSPILOT創設者のUffe Elbækのもとで、リーダーシップ開発と共創プロセスの設計・ファシリテーションを実践してきた。
試験も学位もない教育機関でありながら、180年以上にわたってデンマーク社会で重要な位置を占め、「人生の学校」とも称されているフォルケホイスコーレ。1840年代に思想家であり教育者、牧師でもあったN・F・S・グルントヴィによって構想されたこの学校の誕生の背景には、当時の社会の大きな揺らぎがあった。
「1813年にデンマークは一度、国家財政が破綻しています。当時の王政がそのとき、全国の全ての子ども(1年生から7年生まで)に無料で教育を提供するという大胆な決断をしました。世界初の無料の義務教育です。それが起点となり、市民の意識や教養が一気に高まっていきました」と株式会社Laereの坂本舞氏は語る。当時の国民の大多数は農民で、デンマークは貧しい国だった。民主政治が導入されようとするなか、グルントヴィは「教育を受けていない教養のない人たちが、国の統治に影響力を持ったらどうなるのか」という懸念を抱いたという。
(※全文:2625文字 画像:あり)
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