英語でつまずく子どもたちを テクノロジーでどう支えるか?

本本連載は、公立高校の英語教員から米国の大学院に留学、帰国後に教育事業を起業した筆者が、各分野の識者との対談を通じて「世界に通用する英語」の学び方、「グローバル教育」の在り方などを探る。第3回は、先進的な英語教育改革を主導した前さいたま市教育長の細田眞由美氏に話を聞いた。

前さいたま市教育長から見る
英語教育における学校現場の課題

細田 眞由美

細田 眞由美

前さいたま市 教育長/兵庫教育大学 客員教授/東京大学公共政策大学院 非常勤講師
埼玉県立高等学校英語教諭、教育委員会勤務、高等学校校長を経て、2017年より2期6年間さいたま市教育長を務める。文部科学省や経済産業省の審議会委員、日本ユネスコ国内委員などを歴任。主な著書に『世界基準の英語力: 全国トップクラスのさいたま市の教育は何が違うのか』(時事通信社)がある。

 

田原 佑介

田原 佑介

株式会社LOOPAL 代表取締役
公立高校で8年間、英語教諭として勤務。学校で5000人以上の高校生と関わるほか、NPOとして6年間活動。コロンビア大学教育大学院(Teachers College)で、スクールリーダーシップの修士号を取得。日本の若者が、国際的に通用するスキルを身につけ、理想のキャリアを実現するサポートをするために、LOOPALを起業。

英語教育の早期化が進んだ現代において、子どもたちの“つまずき”はより早く、複雑になっています。中学進学で直面する文法・語彙の壁、評価方法の変化、地域や家庭による学習環境の格差。英語に苦手意識を持つ子どもが増える中で、いま問われているのは「どう学び続けられるか」です。今回は、教育行政や自治体支援の専門家である細田眞由美氏と、AIによる英語学習支援を行うLOOPAL田原との対談を通して、必要な英語教材のあり方と、自学を支える環境づくりについて考えます。

田原 自己紹介をお願いします。

細田 1983年より高校の英語教員として教壇に立ち、さいたま市教育長を2期6年務めました。現在は全国の自治体で英語教育改革に携わり、アドバイザー・プロデューサーとして教育現場の支援を行っています。

田原 全国の教育委員会を支援される中で、英語教育の現場にどのような課題を感じていますか。

細田 現在、公教育における英語教育には複数の課題があります。中でも小学校段階における自治体間の格差は顕著で、英語の教科化が進む中、英語指導に不慣れな教員が多く、一定の指導水準を確保できていない自治体も少なくありません。

こうした格差は、小中・中高の学習段階の“ブリッジ”の不備とも相まって、子どもたちのつまずきや苦手意識を生む要因になっています。

たとえば、小学校で楽しく学んでいた英語が、中学校で急に文法中心の「書かせる英語」に変わることで、戸惑いやストレスが生まれるのです。

また、家庭の教育支援格差も影響します。英語に過剰な期待を抱く家庭と、関心が薄い家庭との間で、学習環境に大きな差が生じています。だからこそ、「楽しく・自発的に学ぶ」英語環境の整備が、制度的な改革と並行して強く求められています。

田原 さいたま市では先進的な英語教育改革を進めてこられました。どのような困難があり、どう乗り越えたのでしょうか。また、全国の自治体が共通して抱える課題と、その乗り越え方も教えてください。

(※全文:2686文字 画像:あり)

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