教員・院生による座談会や両研究科の体験授業を開催 社会構想大学院大学

社会構想大学院大学は11月13日、オープンキャンパスを開催した。オープンキャンパスでは、「コミュニケーションデザイン研究科」と「実務教育研究科」、両研究科の体験授業や教員・院生による座談会が開催された。今回は、その模様をレポートする。

社会構想大学院大学は11月13日、高田馬場とオンラインのハイブリッド形式でオープンキャンパスを開催した。同社会人大学院には、広報・コミュニケーション分野のプロフェッショナルを育成する「コミュニケーションデザイン研究科」と、実務家教員や人材育成のプロフェッショナル、新規教育事業開発を目指す人材が学ぶ「実務教育研究科」という2つの研究科がある。オープンキャンパスでは、両研究科の体験授業や教員・院生による座談会などが行われた。

広報以外に所属する院生も多く
認知的多様性を高める場に

「コミュニケーションデザイン研究科」では、「『広報・コミュニケーションの専門家養成』の5 年間」と題して、同研究科の柴山慎一教授、谷口優准教授、橋本純次専任講師による座談会が行われた。授業の進め方や授業内で実施するディスカッションについて、マーケティング戦略を専門とする谷口氏は「広報・マーケティングなどの領域に関して、私から仮説を院生に提示します。なるべく多く院生同士で議論してもらいたいので、私はファシリテーター的な立ち位置です」と話した。また、社会人の学びをサポートする際に留意していることについて、経営学や広報学を専門とする柴山氏は「院生が本当にやりたいこと、関心があることは何なのか。それをどう引き出し、言語化してあげられるかが、非常に大事だと思います。その中から社会人としての座標軸が見えてくるはずです」と述べた。

図 部署ごとの構成(1期生~6期生)

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橋本氏は、院生の入学動機や所属先に関するデータを紹介。1 期から6期生までの院生が所属する部署を分類すると、現職でコミュニケーション実務を担う院生は5割程度であり、それ以外にも地方公務員やNPO・NGO職員、医師、映像制作者など、現在抱える課題をコミュニケーションの観点から解決したいと考える院生も一定数を占めている実態を紹介した(図)。橋本氏は「コミュニケーションに関心を持つ多様な人と出会える場所であること。学びのなかで自分の中の認知的多様性を高めていくことも期待できる」と話した。

座談会の後は、同研究科の基礎科目「情報・文化・コミュニケーション」より「コミュニケーションの理論から考える『対話』の条件」と題して、同科目を担当し、地域メディア研究・メディア制度論が専門の橋本氏による体験授業が行われた。

同授業の目的は、履修者が「情報」・「文化」・「コミュニケーション」という3種類のキーワードと、それに紐づく学術的知見から現代社会を分析するための知見を身につけること。体験授業では「対話」の捉えられ方について、①何らかの合意/意思決定をめざす対話、②合意/意思決定以外に目的がある対話、③対話・会話・議論・討論・雑談の混同の3種類に分類。その上で、②に関しては、無知の自覚を促す「ソクラテス的対話」、「オープン・ダイアローグ」のように対話自体が目的となる場合、同授業で行われるようなネガティブ・ケイパビリティの涵養を目的とする「継続的な対話」があると解説した。

また、コミュニケーションにも多義的な概念があることを紹介した上で、対話の本質とは、複数の主体間における「前提そのもの」のすり合わせと、それを通じた他者理解/自己理解の深化だと指摘。さらに、情報社会では「混乱、不信、分断、無責任、無関心」という5つの巨悪が対話を妨げているとした上で、対話を実践していくためには「ネガティブ・ケイパビリティ」(不確実な状況に耐える能力)を育む必要があると強調し、そのための方法やコツなどを紹介した。

院生同士の座談会から見える
日々の学びの姿とは?

座談会に参加する院生(左上から時計周りで、川山 竜二研究科長、小泉 雄氏、佐渡 加奈子氏、佐藤 里美氏)

「実務教育研究科」の座談会では、「実務教育研究科院生が語る実務教育研究科での学び」と題して、同研究科長の川山竜二氏と3人の院生(小泉雄氏、佐藤里美氏、佐渡加奈子氏)が登壇した。

「仕事と学業の両立は大変か」に対して、教育系NPO 法人に所属する佐渡氏は「素直に大変」としつつも「授業に出られない時も、オンデマンド(講義動画)での受講が可能ですし、ミニットペーパーで学んだ内容をアウトプットする機会もあるため、どれぐらい自分自身が理解できているのか確認できる授業システムになっている」と述べた。

また、コンサルティング企業の代表を務める小泉氏は「研究科で学んだことを職場にどう還元するか。そうしたことを実践しながら学べることは、常に自分がアップデートされている感覚がすごくある。仕事との両立は大変だが、そうした点で相殺されている」と話した。

「院生同士や教員とのコミュニケーション」に関して、学習障害のある子ども達のICT活用を研究している佐藤氏からは「院生のバックボーンはバラバラで、考える視点や立場が違うので非常に面白い」、「先生との距離感がすごく近い」といった声があがったほか、院生同士の読書会をはじめとする、授業外での院生間のやり取りが紹介された。

また「お気に入りの授業」のテーマでは、教育機関等でゲスト講師や企業研修で講師を務めることもある佐藤氏や小泉氏からは、シラバスや授業案の作成を行う「教育実践プロジェクト演習」や、その前段階として効果的な授業づくりの理論を学ぶ科目「インストラクショナル・デザイン」が挙げられた。

座談会終了後は、同研究科の授業「組織論」を担当し、社会志向性組織等の経営組織論とコミュニケーション戦略を専門とする坂本文武教授が「非営利と営利組織との比較から近未来のガバナンスを考える~企業における『共感』と『支援』のガバナンス構造の実現に向けて~」をテーマに体験授業を行った。

研究者は組織目的を最大化するための監視と支援のメカニズムを「ガバナンス」と定義しているが、21 世紀に入ってから急激に変化し続けているガバナンスは、「監視」の仕組みを強化してきた傾向にある。一方、地球全体が直面している持続性の危機をうけ、社会経済システムの変革をけん引する役割を企業に求めるうねりが大きくなっている。そのために企業は、共感と協働の新たなエコシステムを構築しようとしている。坂本氏は、そうした時代において「支援」のメカニズムをどのように強化できるのか、という大きなテーマについて、社会課題解決を主導する非営利組織のガバナンスにも言及しつつ解説した。

オープンキャンパスは、高田馬場キャンパスへの来場者と、オンライン参加者、双方が集い、盛況の内に幕を閉じた。