6週間で2年間の学力差を超える――ナイジェリアでのAI教育プログラム

AI導入で学力向上率1200%

ナイジェリア南部に位置するエド州で2024年6月から7月にかけて実施された放課後教育プログラムが、AIを活用した学習効果の飛躍的向上を示した。約800人の高校1年生を対象に6週間行われたこのプログラムでは、Microsoftの生成AIツールであるCopilotを用いて、英語・デジタルスキル・AI知識を学習させた結果、通常2年かかる学習内容を短期間で習得できたと報告されている。その学力向上率は1200%にのぼるという。

プログラムでは、AIが各生徒の学習進度や理解度を診断し、個々人に合わせた課題やフィードバックを提供する個別化学習が実践された。教師は従来の講義中心の指導から、学習者のサポートやモチベーション管理へと役割をシフトしている。これは教員不足や教材不足に悩む地域にとっても有効なアプローチであり、ジェンダー格差の解消にも寄与した点が高く評価されている。

世界的課題 教育格差の是正へ 

さらに、AIの活用がもたらす効果はプログラム外にも広がっている。受講生の多くが自主学習意欲を高め、英語だけでなく数学や理科などほかの科目でも成績向上が見られた。教育格差の是正は世界的課題であり、こうした事例は先端的なICT技術を活用する重要性を改めて示唆している。無料のAIツールを活用することで導入コストを抑えながら高い学習効果が得られるため、発展途上国のみならず先進国でも参考にすべきアプローチといえよう。

今後は、プログラムの持続可能性や他地域への展開方法、教師の研修制度など、課題の検証を重ねながらさらなる発展が期待される。エド州の事例は、AI技術が教育における根本的な変革をもたらす可能性を示す好例である。

参考・出典:世界銀行ホームページ