特集2 AI時代の学校教育 AIと共に学び、共に働く

生成AIが急速に社会に浸透する中、学校現場でも試行錯誤による実践が進んでいる。文部科学省は教育活動や校務での活用に取り組む「生成AI パイロット校」の指定や「小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業」などを通じて、効果的な教育実践の創出による知見の蓄積を進めている。

学校現場で進む生成AIの利活用
生成AIパイロット校の実践

2022年末、ChatGPTの登場以来、生成AIは教育現場にも急速に浸透しつつある。23年7月、文部科学省は「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を公表した。

24年12月には「初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」が公表され、暫定的なガイドラインを基に、生成AIの概要や「基本的な考え方」(図表1)を示した上で、学校現場で利活用する場面や主体に応じた留意点について、現時点の知見を基に可能な限り具体的に示している。また、参考資料編として、利活用する際のチェック項目もある(図表2)。

図表1 生成AI利活用に関する基本的な考え方

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図表2 生成AIを利活用する際のチェック項目

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ガイドラインが示した方向性の下、文科省が打ち出した施策の一つが「生成AIパイロット校」の指定だ。教育活動・校務の両面で生成AIの活用に先駆的に取り組む学校を全国から指定し、「効果的な教育実践の創出」を通じて知見の蓄積を図っている。

「生成AIパイロット校」である神奈川県の相模原市立中野中学校は、教育・校務の両分野で生成AI 活用に取り組んでいる。2025 年10月に出版された『AIと仲間と学び合う』(明治図書)では、同校の試行錯誤を経た、具体的な実践を紹介している。編著者の一人で、学習科学の研究者として、同校の実践初期から関わってきた青山学院大学教授の益川弘如氏に、生成AI 活用に必要な視点などを聞いた(➡こちらの記事)。

こうした教育現場への生成AIの利活用が進む一方で、導入が始められない、または活用できない学校も少なくないのが現状だろう。

文部科学省が2025 年7月に発表した「学校現場における生成AIの利活用」によれば、2023 年11月時点では58.9%の小中学校が「全く活用していない」と回答している。 2014 年から教育支援事業を行うエデュテクノロジ―が現在、最も注力する領域は、教育現場への生成AIの導入だ。同社を創業した阪上吉宏氏に同社が展開する「AI 教育導入サポート」など話を聞いた(➡こちらの記事)。

英語4技能における
生成AI活用の可能性

生成AI活用に関して、文科省でのもう一つの取り組みが、「小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業」(AIの活用による英語教育強化事業/AI英語モデル校事業・AI英語活用リーダー事業)だ。生徒の英語力は向上傾向にあるものの、社会が求める水準との乖離は依然大きい。特に「話すこと」「書くこと」については、英語を使う機会の少なさと学習の動機付けの弱さが長年の課題として指摘されてきたた。同事業ではAIを英語の授業等で活用するモデル校の指定や「AI英語活用リーダー勉強会」の開催など、実践と知見の蓄積・普及を推進している。

こうした中で、関西大学教授の水本篤氏は、2026年3月に著書『AIのある外国語教育』を上梓した。水本氏には、学校現場の実践から見えてきた成果と課題も踏まえ、ライティングやスピーキング、リーディングやリスニング等において、生成AIはどんな点で有効なのか、導入にあたっての留意点や外国語教師の役割などについて寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

学校現場での活用の留意点
海外で蓄積する利活用の知見

ガイドラインの基本的な考え方などが指摘するように、生成AIの利活用には留意すべきポイントがいくつかある。人工知能学会会長で慶應義塾大学教授の栗原聡氏は「小学校教育へのAI導入」に対して強い懸念を示す。栗原氏には、思考力、引いては「問いを立てる力」はどのように育むとよいのか、教師が意識すべきポイントなど話を伺った(➡こちらの記事)。

OECDが2026年に公表した「OECD Digital Education Outlook 2026」は、生成AIが教育に与える影響について包括的な知見を提供している。約250頁に及ぶ本報告書をもとに、子どもたちと教師の双方の視点から、学校における生成AI活用の利点と留意点を整理している。この様に、日本国内だけでなく、世界中で生成AI活用の知見の蓄積が進んでいる。

本特集では、有識者や企業への取材を通じて、AIと共に、いかに学びを深め、教師の働き方を変えていけるのか。AI時代の学校教育を展望した。教育現場の実践の一助となれば幸いだ。