特集2 不登校と多様な学びの場ー学びの多様化学校、フリースクールなど

文科省が公表した調査結果によると、小・中学校における不登校児童生徒数は299,048人、過去最多となった。すべての子ども達、一人ひとりの学びを保障するために、多様な学びの場、居場所の確保に向けて多様な方策が実践されている。本特集では、その実際を追った。(編集部)

過去最多の不登校児童生徒数
令和5年度補正予算で51億円計上

基本理念に「不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の状況に応じた必要な支援」等を盛り込んだ教育機会確保法が2017年に施行されてから7年が経過した。一方で、文部科学省が10月4日に公開した、「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果によると、小・中学校における不登校児童生徒数は299,048人であり、前年度から54,108人増加し、過去最多となった(図表)。

図表 不登校児童生徒数の推移

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文科省は23年10月、「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を策定。同緊急対策パッケージでは、「『COCOLOプラン』の対策を前倒し。あわせて、不登校施策に関する情報が、児童生徒や保護者に届くよう、情報発信を強化」を掲げた。

こうした状況のなか、政府が11月10日に閣議決定した令和5年度補正予算案において、文部科学省の予算案を見ると、「不登校・いじめの対策」に51億円が計上された。

そのうち、「不登校児童生徒等の学び継続事業」(37億円)では、「校内教育支援センター」(スペシャルサポートルーム)の設置促進に29億円、「教育支援センター」のICT環境整備に2億円、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置充実に7億円を計上したほか、「不登校児童生徒等の早期発見・早期支援事業」では、14億円を計上。①教育支援センターの総合的拠点機能形成に3億円、②1人1台端末等を活用した「心の健康観察」の導入推進に10億円、③不登校・いじめ対策等の効果的な活用の推進に1億円を計上している(➡こちらの記事)。

学校らしくない学校
「学びの多様化学校」とは?

不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施する必要があると認められる場合、文部科学大臣が、「学校教育法施行規則」第56条等に基づき学校を指定し、特定の学校において教育課程の基準によらずに特別の教育課程を編成して教育を実施することができる。

当該学校は、「不登校特例校」と呼ばれていたが、現在は「学びの多様化学校」と呼ばれている。学びの多様化学校は、04年4月の開校以来、現在は全国24校(うち、公立学校14校、私立学校10校)まで広がっている。23年4月、宮城県白石市に開校した小中一貫の白石市立白石南小学校・白石南中学校(通称:白石きぼう学園)は、小中一貫校として東北初、全国では3校目となる「学びの多様化学校」だ(➡こちらの記事)。白石きぼう学園がコンセプトに掲げるのは「学校らしくない学校」。学びの特徴は大きく3つある。

1つ目は、子どもたちが自分のペースを最大限尊重できること。2つ目は、個別最適な学びで基礎学力を保障していること。不登校だった時期の学び直しや苦手教科の補強のため、『白石タイム』と称して、小学校2年生以上に週に4時間(小2は週3時間)個別に学ぶ時間を設けている。

3つ目は、学校内外での豊かな体験活動の機会を確保している点だ。活動を通して児童生徒の自己効力感や自信を高めることを目的に、各教科の授業時数は一般の学校よりも14%ほど減らし、「総合的な学習の時間」に多く配分している。

また、文科省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(19年10月)を見ると、小中学生を対象に、学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合や、自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合に、指導要録上出席扱いとすることができるとしている(出席扱い制度)。

小学1年生から高校生を対象に自宅学習用のICT 教材、対話型アニメーション教材「すらら」を提供するすららネット。同社子どもの発達支援室では19年から、出席扱い制度の積極的な活用を推進している(➡こちらの記事)。例えば、同社では学校側へ制度の適用を申請するためのテンプレートの書式「出席扱い依頼書」を作成。こうした活動の成果もあり、出席扱い制度の活用は右肩上がりで増えており、ICT教材「すらら」を使った家庭学習で出席扱いの認定を受けた児童生徒は、累計1,200人以上にのぼっている。

画像はイメージ。

Photo by New Africa/Adobe Stock

フリースクールやオンライン教室を
通じた子ども達の学びの場

「COCOLOプラン」では、多様な学びの場、居場所を確保する方策として、学校・教育委員会等とNPOやフリースクールとの連携強化を挙げている。

算国理社といった「教科学習」ではない学びを志向するフリースクールも少なくないが、あえて教科学習にも力を入れているのが「レイパス」(大阪府松原市)だ。子どもがやりたいことを見つけたときに、進学や資格取得できるベースの学力があることが選択肢を広げるとの考えから、学校の勉強とリベラルアーツの二本立てのカリキュラムを準備している(➡こちらの記事)。

また、島根県松江市で12年間運営を続けてきた「松江未来学園」。定員30人前後の少人数のフリースクールで、さくら国際高等学校の高校卒業資格が取得できる高等部と、学校に通いづらくなった中・高校生が学習や学校生活を楽しむフリースクールコースとがある(➡こちらの記事)。

松江未来学園が開校時から変わらないコンセプトは、ずっと相談できる場所の中で、狭く・深く関わること。そして、学校の機能に加え家庭の機能を補助すること。〈対話〉〈遊び〉〈学習〉〈活動〉を循環させながら、人間形成と学習の習得、将来の進路を模索する役割を担っている。

学びの場としてはオンラインの活用もある。ワオフルが運営する不登校専門のオンライン家庭教師「夢中教室WOW!」では、「オンライン」「1対1」「一人ひとりの好きなことを伴走先生と一緒に探究していく」の3つの特徴を持たせた(➡こちらの記事)。家から出られなくても、世界が広がるきっかけを得られるようにと「オンライン」に。そして、「1対1で伴走すること」で、その子が本当に心がわくわくするものを見つけるのを手伝い、自分の軸づくりに寄り添っている。本特集では、「不登校と多様な学びの場」をテーマに、教育関係者や企業等を取材した。子ども達の学びの場づくり、確保に向けた取組みの一助となれば幸いだ。

※義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律