特集2 学校教育の新局面 高校教育改革・AI・自由進度学習・英語学習

生成AIの急速な浸透や少子高齢化・地域の過疎化など、子ども達を取り巻く産業構造や社会システムなどの変化を見据えて、これから、どういった学びや教育環境が必要なのか。本特集では補正予算なども参考にいくつかのテーマに焦点をあて2026年の学校教育を展望する。

高校教育改革
に向けた3つの取組

地域の経済社会を担う人材不足が懸念されている中、2025年12月16日に成立した2025年度補正予算は「高等学校教育改革の推進」に3,009億円を計上。「⑴高等学校教育改革促進基金の創設~N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」〔2,955億円〕、「⑵高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」〔52億円〕、「⑶国際交流・留学プログラム構築推進事業」〔2億円〕と3つの取組を掲げている。

⑴では各都道府県に基金を設置し、類型に応じた高校教育改革を先導する拠点のパイロットケースを創出する。取組・成果を域内の高校に普及させる狙いだ。同事業の取組では、アドバンスト・エッセンシャルワーカー等育成支援、理数系人材育成支援、多様な学習ニーズに対応した教育機会の確保の3点を挙げている(図表1)。

図表1 ⾼等学校教育改⾰促進基⾦の創設〜N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想〜

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一方、補正予算が成立する約1月半前、教育界の有志などで構成する「高校教育改革を実現する会」は10月30日、「高校教育改革への抜本的な支援強化に関する提言・要望」を公表した。同提言では高校教育改革における3つの柱として、①専門高校の機能強化・高度化、②地域唯一の高校の魅力化、③普通科高校の改革・理数強化を掲げている。提言の内容など地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事の岩本悠氏に話を聞いた(➡こちらの記事)。

また、3年目を迎える⑵では、情報、数学等の教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、専門的な外部人材の活用や大学等との連携などを通じてICTを活用した探究的・文理横断的・実践的な学びを強化する学校などに対して、必要な環境整備の経費を支援する。新規採択校は補助上限額1000万円、2年目の継続校は500万円(重点類型の場合700万円)、3年目の継続校は300万円(重点類型の場合500万円)を盛り込んだ。

 ⑶では、各高校等において、育成を目指す人材像を踏まえた実施計画を策定し、①海外の高校等との協定等による国際交流・留学を含む教育プログラムの開発、②留学支援体制構築に一体的に取り組む高校等を重点的に支援する(図表2)。

図表2 国際交流・留学プログラム構築推進事業

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AI時代の学校に必要な
AI倫理教育と英語学習での活用

生成AIの急速な発展により、ビジネスに留まらず学校現場でも活用が進んでいる。AI倫理とデジタル・シティズンシップの視点から、AIと共生する社会の「善き市民」の育成についてメディア教育研究室代表理事の今度珠美氏に寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

AIの活用は英語教育でも期待されている。補正予算では「AIを活用したグローバル人材育成のための英語教育強化事業」に4億円を計上した(図表3)。Duolingoはモバイル学習プラットフォーム「Duolingo」と英語力認定試験「Duolingo English Test(DET)」をグローバルに提供。自宅のパソコンから低料金で受験可能なDETでは今後、国内でも普及拡大を図っている(➡こちらの記事)。

図表3 AIを活⽤したグローバル⼈材育成のための英語教育強化事業

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次期学習指導要領に向けた議論が続く中、「柔軟な教育課程の編成」は重要な論点だ。これと関連して重要なキーワードが自由進度学習だ。自由進度学習を単なる「方法」ではなく、教室に根づく「文化」として捉え直してみる。子どもたちと教師が共に問い、試行錯誤しながら育む、学級づくりからはじめる実践の道筋について、生駒市教育委員会事務局 教育部 教育指導課 教育政策室 主幹の若松俊介氏に寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

本特集は「学校教育の新局面」と題し、高校教育改革、AI倫理教育、英語学習、自由進度学習と、いくつかのテーマに焦点を当て、2026年を展望した。子ども達の学びや学習環境を充実させる上での参考となれば幸いだ。

 N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクールとは、New Education, New Excellence, New Transformation of High Schools の略。