特集2 高校教育改革の最前線 地域魅力化・国際交流・探究の高度化

2040年には少子高齢化、生産年齢人口の減少、地域の過疎化の深刻化が指摘され、産業構造や社会システムの変化を踏まえた労働力需給ギャップ、理系人材不足も危惧されている。子どもたちが幸せに生きていくために、いま必要な高校教育改革は何か。いくつかのテーマに焦点をあて検証した。

グラインドデザイン(骨子)
が示した3つの視点

政府の高校教育改革に向けた動きが加速している。文部科学省は2025年11月、「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)(仮称)」の骨子を公表した。

基本方針(骨子)では、①不確実な時代を自立して生きていく主権者として、AIに代替されない能力や個性の伸長、②我が国の経済・社会の発展を支える人材育成、③一人一人の多様な学習ニーズに対応した教育機会・アクセスの確保と3つの視点の下で高校改革に取り組むとともに、高校から大学・大学院に至るまでの一貫した教育改革により、強い経済や地域社会の基盤となる人材育成を実現するとしている。

改革の方向性として、視点①では「AI に代替されない能力(言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力、他者と協働する力等)の育成、探究的な学びや実践的な学びへの学習観の転換、主体的に学び人生を切り拓く『生徒を主語にした』教育を推進」と明記しているように、探究学習は今後の高校教育改革において一層、重要となってくるだろう。

また、近年は、「高度化」した探究に取り組む高校も少なくない。芝浦工業大学柏中学高等学校SSH統括室教諭(国語科)の高澤良輔氏は、探究の高度化を支える三つの要点として、①高校生自身の「在り方生き方」をふまえた探究を目指すこと、②教科との往還を大事にすること、③高校が外部に「丸投げ」しないこと、を指摘する。

高澤氏には、「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校の実践から考える高度な探究活動の進め方」をテーマに、中等教育における探究学習の高度化を成立させる条件について整理いただいた(➡こちらの記事)。

探究の質を高める
コーディネーターの活用を

基本方針(骨子)では、「専門高校の機能強化・高度化、普通科改革を通じた特色化・魅力化、地理的アクセス・多様な学びの確保を通じた高校教育の転換により、高校が、未来の労働市場、地方経済、イノベーションを興す力を底上げする起点としての役割を果たし、高齢化や人口減少といった課題に直面している我が国が社会全体で課題を解決する構造へと変化を遂げ、持続的に発展する日本社会を実現」と明記している。

この中にある「魅力化」を地域の高校が推進していく上でキーパーソンとなるのがコーディネーター(以下、CN)だ。文部科学省では2025年3月に「高校コーディネーター スタートガイドブック」を作成。高校CNになりたい人、また、着任予定、着任直後の者を対象に、高校CNとはどのような職務で、どのような力が必要とされているか、その力の身につけ方などを案内している。加えて、高校CNと働く高校教職員や管理職、採用・配置を行う教育委員会等の担当者が、高校CNを理解し、活躍してもらえる環境づくりに役立つ内容を収めており、CNの活用を推進している。島根大学大学教育センター准教授の中村怜詞氏は「地域に繋がりを持つCNが学校にいてくれることは、教員が地域と繋がるハードルを大きく下げ、探究学習の質を高めることにもつながる」と述べる。一方で「CNを配置すれば学校経営や教育の質が高まるという単純なものではない」と指摘する。中村氏には、コーディネーターの役割や現状の課題などについて寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

グローバル人材育成に向けた
国際交流の重要性

基本方針(骨子)と並行して、2025年12月に成立した2025年度補正予算では「高等学校教育改革の推進」に3,009億円を計上。「①高等学校教育改革促進基金の創設~N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」〔2,955億円〕、「②高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」〔52億円〕、「③国際交流・留学プログラム構築推進事業」〔2億円〕と3つの取組を盛り込んだ(図表1)。

図表1 ⾼等学校教育改⾰の推進

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この内、③の国際交流を各高校が実践する場合、相手校探しや日程調整などの負担感を考えると、外部との連携が重要になってくる。

「すべての生徒が異文化交流を経験できる世界」を創出すべく、AirPangaeaは中高生に向けた国際協働学習プラットフォームを展開。オンラインによる異文化交流やSDGsをテーマにしたプログラムで「世界が身近にある」という実感と自律的な学びを引き出している。代表取締役の明石剛氏にプログラムの特長などを聞いた(➡こちらの記事)。

政府が学校改革を推進する一方、現場の学校改革で注目される横浜創英中学・高等学校。同校への転職を機に、「学校」とはどのような場所なのかという問いに改めて向き合った教諭の前川智美氏に、学校がより幸せとなるためのヒントを3つの視点から寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

本特集は「高校教育改革の最前線」と題し、いくつかのテーマに焦点を当て、いま必要な改革は何かを検証した。各高校での今後の実践において、参考となれば幸いだ。