Xスペース配信 公開インタビュー 佐藤大輔氏、有山徹氏、神村優介氏

# 進化する構想 活躍する経営者に創業時の構想と、現在の構想へ至る過程を伺います。新規事業の発想、それを展開していく過程からビジネスのヒントを抽出します。

欧州での人気ぶり
当初から予測済み

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佐藤 大輔 氏

佐藤 大輔 氏

ALFELIS代表
Gonbei Europe代表
1973年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業、慶應義塾大学大学院修士課程修了。2001年、渡仏。リヨン第二大学大学院博士予備課程(DEA)修了。日本航空パリ発機内食改良などを手がける。2017年より現職。

パリで花開いた
おむすび認知戦略

先日、進化する構想をテーマに公開取材をした、おむすび権米衛の現地法人GonbeiEurope代表の佐藤大輔氏は、日本食といえば寿司やラーメンが定番のフランス市場で「おむすびは日常に根付いてきた」と語りました。フランスではパンやケバブが主流のランチ文化のなか、おむすびの手軽さとヘルシーさを武器に、多国籍スタッフとともにテイクアウト中心の販売戦略を採用しました。さらに、フランス式の個別接客を取り入れ、手で食べることに抵抗のある消費者にも丁寧に説明を行うことで常連客を増やしてきました。コロナ禍ではSNSで話題となり、柔軟な対応力が評価されました。おむすびが欧州のメインストリームに根付いています。

#進化する構想 #おむすび #欧州展開

イベントと日常
集客にギャップ

パリに本格進出する前にジャパンエキスポで試験的に出店したところ、極めて大きな反応がありました。これで手ごたえを感じ、フランスでの成功を確信しました。しかし、店舗を構えて販売開始した直後は想像以上に苦戦しました。イベントのような特別な場では受け入れられても、日常食として浸透させるには認知拡大と商品の丁寧な説明が必要です。その後、近隣のファッション業界関係者などが来店し、おむすびのヘルシーさ、具材の豊富さに注目したことで、口コミが広がり、利用層が徐々に拡大していきました。

#進化する構想 #日常化 #パリ事情

パリの店舗にできる長蛇の列。

コロナ禍も追い風
テイクアウト需要

パリでは度重なるロックダウンにより、多くの飲食店が休業を余儀なくされました。しかし、おむすび店はテイクアウト中心の形態だったので営業を続けることができました。この光景がSNSで拡散され、「手軽でヘルシーな日本食」として注目を集めました。オフィスワーカーや観光客も続々と来店。新規顧客拡大につながりました。

#進化する構想 #テイクアウト #飲食戦略

ブランド拡大には
無形資産の活用を

フランスでは店員と顧客が目と目を見かわしながら一対一の関係で接客をするスタイルが好まれるとのこと。そのため、客と目を合わせた個別対応を徹底しました。丁寧に商品を説明することで初めておむすびを食べる人にも安心感を与えました。このような細やかな工夫が「毎日のランチに取り入れたい」という気持ちを生み、ファッション関係者をはじめとする利用者層の拡大につながったそうです。佐藤さんは「店の見せ方やブランド、接客の仕方など数値化できない無形の資産は非常に大事と実感しています。おむすびが認知されたのも無形の資産を大事にしたからです」と話します。

#進化する構想 #接客術 #欧州展開

「海外には日本人の商機が
あふれている」
──── 佐藤 大輔

 

# 構想に活かすアカデミズム 第一線で活躍されている研究者の方から専門分野でビジネス課題解決に役立つアイディアを伺います。

組織と個人の理想
両立する理論はある

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有山 徹 氏

有山 徹 氏

一社)プロティアン・キャリア協会代表理事/4designs株式会社代表取締役
一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事、4designs株式会社代表取締役。2000年大学卒業し主に事業会社4社で経営企画業務に従事、2019年4designs㈱を起業、2020年協会設立、2024年日本の人事部HRアワード優秀賞を受賞、約5年間で35万人以上にプロティアンキャリアを伝える。

学問と現場をつなぐ
プロティアン・キャリア

有山氏は「プロティアン・キャリア理論」を組織に活用する具体的メリットについて語りました。「プロティアン」とは、ギリシャ神話の「変幻自在な神プロテウス」に由来します。変化する環境に個人が柔軟に適応し、自らのキャリアを主体的に構築していくのがプロティアン・キャリア理論です。ダグラス・ホール教授が提唱したこの理論の中心的要素は「自己認識」と変化に柔軟に対応する「適応力」。他に「主体性」や主観的な成功感である「心理的成功」です。個人のキャリア満足度向上と組織全体の生産性向上を両立するための理論です。

#構想に活かすアカデミズム #組織変革
#プロティアン・キャリア

自己認識力と適応力
二つの柱高める方法

自己認識力を高めるには、日々の小さな内省が効果的と有山氏は説明しました。1行の日記や感情のメモを取り、自分の強みや価値観を理解することが鍵です。また、適応力向上のためにはGoogleアラートを活用して自分の職務専門領域のニュースをいち早く読むのと同時に専門外の情報にも目を向け、常に小さな変化を自ら起こしていく意識と行動が重要だといいます。また、コツとしては気になった疑問をなるべく間を置かずに検索することと話します。すぐに調べるなど小さな行動を積み重ねていき、自己の中でも小さな感情の変化に向き合い続けることで、その結果として変化への柔軟な対応力が高まると話します。

#構想に活かすアカデミズム
#自己認識力 #適応力

上司と部下の関係値
組織のキャリア課題

有山氏自身の転職経験(5回中4回が短期間で転職)から、上司と部下の関係性がキャリア形成に重要であると痛感した経験が語られました。管理職は部下にキャリアを教える立場ではなく、むしろ部下と共に学ぶ「共同学習者」となる必要があると話します。このような関係性の見直しが社員の心理的安全性を高め主体的なキャリア形成への行動が促され、生産性向上に繋がっていくとのべました。

#構想に活かすアカデミズム #管理職
#共同学習者

キャリア可視化
変わりゆく組織

今後、有山氏が注力するのはキャリアの可視化です。新たな診断ツールの開発、導入により、社員のキャリア状態を定量的に把握することを目指しています。日本企業は基本的に自らの手で主体的に組織を変えていく力が弱いとされていますが、自らをとらえ直し、あるべき理想像やゴールを明確化することで主体的に周りとの関係性の質を自ら変えることにも繋がり、強い組織を創り出すことにも繋がります。「この取り組みが実現すれば、組織全体が主体的に動ける状態へと変革される」と話しました。

#構想に活かすアカデミズム
#キャリア可視化 #自己アイデンティティ

「個人のキャリア成長と
企業成長の両立は実現可能」
──── 有山 徹

 

#進化する構想

カナダ拠点にして
マーケ会社を経営

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神村 優介 氏

神村 優介 氏

シェイプウィン株式会社 代表取締役
徳山高専卒業。セガトイズにて玩具の企画開発マーケティングを担当。2011年にシェイプウィンを設立後、世界14ヵ国250社以上の企業へ日米市場向けPRマーケティングを支援。カナダ・バンクーバー在住。

ロボコン出場で痛感
伝える力の重要性

「進化する構想」の公開取材でカナダに現地法人を設立し、主に北米市場のマーケティングを行うシェイプウィン株式会社の神村優介代表取締役に登壇いただきました。なぜカナダでマーケティング会社を現地法人設立して営む構想を考えたのか伺ったところ、高専時代にさかのぼりました。NHKロボコンへ出場した際、作ったロボットの性能がただ優れているだけでは勝てないと痛感。アイデアや番組で映った際の絵面をどう面白く見せて印象付けるかが、結果を左右すると気づきました。これを契機に見せ方や魅力の伝え方を意識する姿勢が芽生え、起業の原点につながりました。技術だけではなく、観る側のワクワクを生み出す演出こそ、事業発想の要だと強く感じたそうです。この気づきが、のちのPRマーケティング支援事業やカナダ進出にも連なる大きな布石になっています。

#進化する構想 #ロボコン #伝える力

週100個企画が生む
ヒット商品の方程式

その後社会人になってのセガトイズ勤務時代、毎週ひたすら企画書を量産する現場を経験しました。その際、1発勝負の渾身のアイデアよりも日々の些細な思いつきや雑談が積み重なり、ヒット商品を生むと痛感しました。この経験により「アイデアは素振りが大切。笑われても続けるうちに核が育つ」ことに気付きました。アイデア出しを続けていく中では思わぬ発見があります。自分ひとりで抱えず周囲に話すことで反応が得られ、企画がより良くなります。こうしたPDCAの高速回転が、新規事業や商品開発を加速させる鍵になります。特に周囲を巻き込む姿勢は、現場の士気も上げ、アイデアをより実用的な形に仕上げるポイントになります。

#進化する構想 #アイデア #商品企画

カナダで現地法人を立ち上げた神村社長。「カナダは多くの民族が共生する国なので、北米市場の拠点として最適です」と話す

カナダを拠点に
世界目指す構想

コロナ禍に英語HPを立ち上げたことで海外から日本向けPRの相談が急増。そこからカナダへの進出を決断しました。カナダは多くの民族が暮らす多文化社会であることからここを拠点に北米マーケット全体へアプローチする決断をしました。北米市場は競合が多く参入障壁も高い反面、日本企業の技術力や丁寧なサービスは確かな人気があり、拠点をカナダに構えることで現地の人脈や多様な消費者ニーズにも早く対応できます。今後は日本企業が持つ潜在力を世界へ広げるべく、現地メディアとの連携や人材育成を強化し、カナダ発のグローバル展開をさらに推し進める構想です。

#進化する構想 #海外展開
#北米マーケティング

日本の価値を世界へ
企業の海外展開支援

神村氏は今後、カナダを拠点に日本企業の海外展開を全面支援し、成功事例を積み重ねたいと語ります。包丁からアニメ文化まで、日本の多彩な魅力はグローバルに受け入れられる余地が大きいです。「まず一歩を踏み出せば新しい可能性が開ける」──その言葉は、構想段階のビジネスパーソンにも響くメッセージです。

#進化する構想 #海外ビジネス
#日本企業

「日本人だからこそ北米市場で戦える」
──── 神村 優介