海外に挑戦する日本人を増やす 国内外のIB生を伴走支援

国際的な教育プログラムである国際バカロレア(IB: International Baccalaureate)。文部科学省が推進し、日本でもIB認定校が増えている。2024年7月、IB特化塾を運営する「Linksenpai」を立ち上げた吉田志織氏。起業の背景や、IBの魅力などについて聞いた。

IB生としての原体験から
大学在学中に事業を起こす

吉田 志織

吉田 志織

株式会社Linksenpai 代表取締役
東京都立国際高等学校で国際バカロレア(IB)を履修し、トロント大学(カナダ)、北海道大学工学部、早稲田大学に合格。2022年の大学在学中に、IB特化塾「IBアカデミー」を立ち上げ、2024年に株式会社Linksenpaiを起業、代表を務める。国内外のIB生の学習支援・進路支援に取り組んでいる。

── IB(国際バカロレア)特化塾「IBアカデミー」を展開するLinksenpaiを起業した背景をお聞かせください。

IB生だった頃の原体験が一つのきっかけです。私自身、東京都の公立校で唯一のIB認定校(以下「IB校」)である東京都立国際高校に通っていました。IB特有の学習や課題について相談できる先輩がいなかったため、すべて自分で調べながら乗り越えるしかなく大変苦労しました。

もう一つは、私が小・中学生の頃、米国に住んでいた際、中国人や韓国人など他のアジア諸国と比べ日本人の存在感が想像以上に小さいことを実感し、「より多くの日本人が世界へ挑戦する機会を増やしたい」と思うようになったことです。

こうした経験から、海外教育やグローバル人材の育成に特化した教育事業を通じて、世界で活躍する日本人を一人でも多く輩出したいと考えるようになりました。

── 高校時代、実際に学んでみて感じたIBの魅力は何でしょうか。

個人的には、授業が全て英語である部分と少人数制のクラス、探究学習に特に魅力を感じました。プログラム自体はハードで、1つの人生の山場を経験した感はありましたが、IBを選んで良かったと思っています。

IB校では、プレゼン、ディスカッション、論文執筆など、英語を使って何かをする授業が全科目に散りばめられています。さらに授業自体が英語であれば、〈聞く:リスニング〉〈話す:スピーキング〉〈読む:リーディング〉〈書く:ライティング〉の4技能全ての力を日々鍛えていくことになるので、グローバル人材としての英語力は、間違いなく自然と身につくかと思います。私自身、IBコースに入ってから特別にTOEFLの対策をしたことはないですが、TOEFLで高得点を取ることができました。

海外大学への窓口となるIB資格
国内大学入試でも強さを発揮

── 文部科学省ではグローバル人材育成の観点からもIBの普及・拡大を推進しています。

米国に住んでいた当時、感じたのは、自身の考えや意見を言語化し発言することの大切さです。その点IBでは、自分の意見を言語化し瞬時に意見を述べる、大勢の前で発言するといった訓練を頻繁に行います。こうした習慣を身につけることは、グローバルで通用する人材となるための重要なポイントかと考えています。

IBのプログラムには、PYP(3~12歳)、MYP(11~16歳)、DP/IBCP(16~19歳)とありますが、DPまで修了してIB資格(大学入学資格)を取得すれば、基本的には海外のどの大学でも受験することが可能となります。海外大学への窓口、現地就職への1つの道として、IBは重要な役割を果たしていると思います。

── 最近は、国内大学でもIBを活用した大学入試が増えています

IBでハイスコアを取る方が、国立大学などへ一般受験で挑むよりはハードルが低いかと思います。

実際、私自身、北海道大学の工学部に合格しましたが、通常の入学試験だったら、合格は難しかったかもしれません。また、医学部の受験でも、IBスコアと面接・小論文のみの場合もあるので、勉強量も含めて楽になる場合もあるかと思います。

また、IB生は「C:クリエイティビティ(創造性)」、「A:アクティビティ(活動)」、「S:サービス(奉仕)」の3領域での課外活動が必須となります。ですので、大学の総合型選抜の場合、様々な課外活動を多く経験していることも強みとなります。

200名超のIB卒業生講師
個別伴走型の支援が強み

── IB特化塾「IBアカデミー」の特長をお聞かせください。

代表の私をはじめ、講師・学習サポート、教材作成、無料相談まで、全てにIB卒業生が関わっていることが1番の特長です。IB生のニーズや困りごとも熟知した上で教材やサポートを提供できていると思います。

「IBアカデミー」ではPYP生からIBDP生までの3コースに加え、IB認定校受験コース、都立国際IB受験コースを提供しています。例えば、IBDP生向けコースではIBDPを履修する高校生を対象に、主要科目の学習からIA(内部評価となる課題研究やレポート)、EE(卒業論文)、TOK(DPのコア科目「知の理論」)までトータルでサポートします。

約200名のIB卒業生講師のもと、これまでに800名以上のIB生やIB受験生をサポートしてきました。

オンラインなので、世界各国に住む日本人も受講していますが、海外在住の講師も豊富で、時差を気にせず、その国に在住する講師をつけることができるのも強みです。

毎週行うメンタリングも特長の一つです。IBDPになると、全科目での課題に加え、卒業論文など半年以上かかる長期課題にも取り組んでいかなければなりません。課題超過でパニックになる生徒も少なくなく、メンタリングでは、相談に乗ると同時に学習計画の作成などもサポートしています。また、入会から2か月、5か月のタイミングで保護者面談を必ず行い、IBプログラムに挑戦する生徒だけでなく、それを支える保護者へ向けても、きめ細かな伴走型の支援体制を整えています。

日本人のプレゼンスを高めるべく
海外大学進学のサポートに注力

── 今後の展望を。

IB分野の第一人者として認識される会社に成長していきたいですね。現在、沖縄、北海道、愛知、青森など、全国各地のIB校での講演を積極的に引き受けています。オンラインだけでなくオフラインでIB校に実際に行って話をしています。来年には自著も出版予定ですが、IB生のサポートだけでなく、IB教育そのものを広めていけるような発信をしていきたいと思います。

将来的には、日本人のグローバルプレゼンスを上げていきたいと考えています。海外大学へ行く道は、IBの他にもたくさんあります。例えば、アメリカの大学出願で広く利用されている標準テスト「SAT」や「A-Level」(英国等の大学入学資格)の対策指導も行っており、IB以外の道で海外大学を目指すサポートにも力を入れていきます。海外に挑戦する日本人を増やし、海外で就職、起業する日本人の母数を伸ばしていくことで、日本の影響力を高めていくのが長期的目標です。

── 最後にメッセージを。

IBは非常に素晴らしいプログラムである一方、指導できる教員などリソースが限られているのが実情です。IB校になったものの様々な面で悩みを抱える学校も多く、生徒のサポートだけでなく、学校現場のサポートも必要かと思います。IBでは、生徒1人ひとりが自分の興味・関心を深掘りできるような、教科の枠を越えたサポート体制が大事だと思っています。その部分で、我々にできることがあれば学校現場のお手伝いもしていきたいと考えています。

文部科学省の資料によると、IBを活用した国内大学入試は、全学部で実施している大学は39大学、一部学部で実施している大学は43大学ある(2024年度調査、国公立・私立大学含む)。