美しさの基準を自分で持っていた人たち

次期学習指導要領の審議で、中学校数学の目標例に「数学の美しさ、楽しさなどを感じる感性、想像力、直観力」が盛り込まれた。90歳世代の証言を集めてきた東京都市大学環境学部教授の古川柳蔵氏は、まさに彼らの証言を「知恵」としてではなく、「感じて」ほしいという。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 武州千住」
大判錦絵、天保2年(1831)頃

堰の枠が四角く切り取った先に、雪の残る富士がある。手前の草は青く、農夫は腕をまくっている。桜も紅葉もない。北斎が三十六景の一つに選んだのは、名所ではないこの場所だった。何を美しいと見るかは、それぞれが決めていた。
提供:アフロ

中央教育審議会の特別部会が2026年8月に示した検討資料は、生成AIの出力をそのまま使うことで「身体性に根差した人間ならではの価値の創造や意味理解を放棄してしまう」という懸念を挙げ、「デジタルのみならず一層身体性を重視」するとしている。経産省「未来の教室」のSTEAMライブラリーなど、感性を育てる側の道具は供給として整った。

戦前の暮らしを高齢者へ聞き取ってきた東京都市大学環境学部教授の古川柳蔵氏に、感性はどう育つのかを尋ねた。すると、返ってきたのは感性の育て方の話ではなく、尋ねた相手に何を美しいと言われたかという話だった。

(※全文:2245文字 画像:あり)

全文を読むには有料プランへのご登録が必要です。