特集2 少子化時代の大学改革 学部再編・AI活用・学生支援
2026年7月、政府が閣議決定した「骨太の方針2026」では、理工・デジタル人材育成を含む大学・大学院等の機能強化など大学改革の方向性を打ち出している。本特集では、加速する18歳人口の減少を背景に、大学にはどういった改革が必要なのか。取材・寄稿を通じて今後を展望した。
人口減少背景に2040年には
私立大学の約3割が経営危機に
日本の大学の主な収入は学生生徒納付金だが、急速な少子化を背景に大学の財務基盤も危ぶまれている。日本私立学校振興・共済事業団の2026年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」によると、4年制私立大学595校のうち定員割れは275校、全体の46.2%に上った。前年度(316校:53.2%)から改善したとはいえ、約半数の大学が定員を満たせていない状況にある。
文部科学省の資料によると18歳人口は2034年度までは100万人を維持するが、その後、2040年度までの6年間で74万人まで急減する。2026年度の約111万と比較して約3割の減少が見込まれている。また、現在、約65万人の大学進学者数は、2040年度に約46万人まで減少すると推計されている。
18歳人口と大学進学者数の減少によって、資金ショートリスクが特に高い私立大学は2024年度に22校だったが、2040年度には183校、私立大学全体の約3割に達することが予測されている(図表)。
こうした状況を背景に文科省では、2026年度から30年度の5年間を第Ⅰ期、2031年度から35年度を第Ⅱ期とする「大学の量的規模適正化総合施策」を講じるとし、第1期では「首都圏・大都市圏の大規模私学の理工・デジタル分野への展開、人社系学部のダウンサイジングによる質の向上・数理併修により、文理分断からの脱却を強力に推進」などを盛り込んでいる。
18歳人口減少が避けられない中、「選ばれ続ける大学」であるためには、一人ひとりの学生に対する支援の充実が一層重要となる。1998年に芸術大学では日本で初めて4年制の通信教育課程を設置した京都芸術大学は2026年4月、「学習支援・教育開発センター」を新設し、アカデミック・アドバイジングや学習支援プログラムなどを通じて学生の学びと成長をサポートし、スチューデント・サクセスの実現をめざしている。センター新設の背景や役割を松下佳代センター長に聞いた(➡こちらの記事)。
また、日本経済新聞社と日経HRが調査した「就職力ランキング2026-2027」で全国総合3位の西南学院大学(福岡県)。学生が主体となりキャリア形成や就活イベントを行う学生団体「Branch」の活動内容などについて、同大学就職課の松永健汰氏に聞いた(➡こちらの記事)。
理工・デジタル分野など
成長分野への学部再編等を支援
人口減少が進む一方、将来の社会構造に備えて、文科省では機能強化を行う大学への重点的な支援を行ってきた。例えば、2022年度第2次補正予算で造成された基金による「大学・高専機能強化支援事業」では、学部再編等による特定成長分野への転換等を支援。同事業の初回公募に選定された愛媛県にある松山大学は、2025年4月、6番目の学部となる情報学部情報学科を開設した。初年度から志願倍率が11倍を超えた新学部は、どのような狙いで設計したのか。情報学部長・教授の檀裕也氏に、設置の経緯やカリキュラムの特長、今後の展望などを聞いた(➡こちらの記事)。
さらに、2025年度補正予算で200億円を積み増しし、既存分と合わせて1000億円規模となった「成長分野転換基金」では、二つの支援を展開している。
支援1:学部再編等による特定成長分野への転換等(対象:公私立大学)
①成長分野転換枠
②大規模文理横断転換枠
支援2:高度情報専門人材の確保に向けた機能強化(対象:国公私立の大学院・高専)
2026年3月には、支援1「①成長分野転換枠(先行審査)」において熊本県立大学の半導体学部半導体学科(仮称)が選定された。また7月には、同じく支援1「①成長分野転換枠(通常審査)」で北海学園大学の情報科学部(改組後の学部名)を含めた10件(公立大学:2件、私立大学:8件)が選定された。
「18歳中心主義からの脱却」
期待されるリスキリングの受け皿
2026年7月、政府が閣議決定した「骨太の方針2026」では「高校から大学・大学院等までの人材育成システムを一体的に改革し、産業構造の変化に対応した人材基盤を強化する」ことを掲げ、大学改革の方向性を打ち出している。注目されるのが「18歳中心主義からの脱却を図る」という表現だ。
これまで日本の大学教育の中心だった18歳人口だけに頼るのではなく、政府が掲げる17の戦略分野の高度人材育成など実需に応じた社会人のリスキリングの受け皿としての機能を大学に求める姿勢が明確に示された形だ。18歳という単一の入口を主とした日本の大学の経営モデルを問い直すものといえる。
18歳人口の減少に伴い、大学の財務基盤強化と財源多様化が求められる中、2026年7月、文科省と経済産業省は「大学の資産運用の促進・高度化に向けたガイドブック」を共同で策定した。
大学の資産運用の現状・課題を明らかにした上で、資産運用の開始や高度化に当たり整理すべき基本的事項や留意点などを体系的かつ具体的に示している※。
そして、今後の大学経営では、業務効率化や経営戦略の最適化などを進める上で生成AIの活用も必要となってくる。大学におけるAI活用について重要となるポイントなどについて、gmoriki代表の森木銀河氏に寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
18歳人口減少という逆風の中で、本特集では、「いま必要な大学改革は何か」を検証した。本誌で紹介した取り組みや知見などが大学改革の一助となれば幸いだ。
※「18歳中心主義からの脱却」や「大学の資産運用」の観点では、学校法人瓜生山学園財務担当理事 髙久正史氏(➡こちらの記事)の記事も参照されたい。
